ことねの本当の理想は?
ことねは私をこの世界から離脱させたいみたいだ。 そして、この孤独な世界で生徒会長として、過ごしていくつもりなんだ。
「ことねは、どうするの? 誰もいないよ、こんなのがことねの理想なの?」
「ふん。 貴方には関係ないでしょ。 ……私の理想はここにあるの。 この世界は私の物だわ」
「そんな……」
ーーこの世界は私の物。 そう言い放つことねの声は、どこまでも堂々としていた。 なのに、どうしてだろう。 私にはその姿が、痩せ我慢に見えた。
ことねの思い通りになる、ことねだけの理想学園。 ――でもそこには、ことね以外、誰もいない。
「……ことね。 覚えてる? ゲームセンターでばったり会った時のこと」
「……だから、記憶にないって言っているでしょ」
ことねの眉が、ぴくりと動いた。 それでも構わず、私は続ける。
「あの日の私、偶然会ったことねにビックリして、ぎこちなかったよね?」
「ぎこちなかった? この私が?」
「あ! ……そう言えば。 あの時のことねって、憑依していた方だよね?」
「……ちょっと。 揺さぶりをかけているわね?」
「ふふ……」
思わず、笑ってしまった。 なんだか面白いね。
「それからね、生徒会選挙の時。 私が立候補の推薦をお願いしたら、喜んで受け入れてくれたよね?」
「……あり得ないわ。 私に限って、そんなこと……」
「私は覚えてる。 全部、覚えてるよ」
ことねは私から目を逸らした。 その横顔に向かって、私は言葉を重ねていく。
「ことねが二重人格だって、私が知った時のことを覚えてる?」
「……きっと貴方のことだから、びびってたんでしょ?」
「不正解。 私は、物語のヒロインみたいで羨ましいって、思ったんだ!」
「そうなの。 というか、さっきから貴方は……何が言いたいのよ」
ことねの声が、ほんの少しだけ揺れた。
「誰もいない世界を独りぼっち生きるより。 一緒にまた遊ぼう。 ……それが、ことねの理想だと思うから……」
「私の理想は、生徒会長であり続けることよ」
「違うよ、ことねの理想はみんなと仲良く過ごすことなんだ!」
私は一歩、ことねに近付いて、手を伸ばした。
「……なによ。 近づいてこないで。 私の理想はそんなことじゃないわ」
「ことね。 薄々気づいているはずだよ。 湊だけじゃない。 ひとみや、彩乃たちと過ごした日々を思い出してみて! ……楽しかったよね?」
「知らない、知らないわ。 私は孤独な生徒会長なの……」
「ことねの嘘つき!」
「……っ」
私は、ことねを睨んだ。 すると、ことねは珍しく狼狽えてしまった。
「本当は、一人が寂しいくせに! 構って欲しくて、意地悪するほどなのに! どうしてそんな見栄を張るの?」
「ちょっと。 見栄ってなに? 貴方は、私のなに様のつもりよ?」
「……またそれ? ずっと言っているよね? 私たちは……」
ーー親友だって。




