仲を深めるのも計画の内? ーーことね視点
ひとみは街の服屋に瑞稀と美羽を引きずり込んだ。
でも、店に入っても、お互いに一言も喋らない二人。 目を伏せて店内のタイルを観察しているだけのマネキンよ。
ひとみの目標は、この二人を仲良くさせること。 私服選びを一緒にやらせて、自然に会話を生む作戦だったようね。
「はわ! 倉石さん。 これ絶対似合うと思います〜」
「……そうかな?」
ひとみは瑞稀に、淡いブルーのロングスカートを押し付けたわ。
「倉石さんって、ミステリアスじゃないですかぁ? この服にあってますよぉ?」
「……ミステリアスね……」
ーーひとみは、瑞稀のことを本当は、サイコパスだって思っているようね。
「アワアワ。 美羽はサラサラだから、白ブラウスでコントラスト出すと映えると思うですぅ。 スタイルもいいんだから、ウエストマークするスカートが似合うって思うなぁ?」
「……わかりました」
ーー美羽のことは、根暗の金髪頭だって思っているわね。
試着室から出てきた二人を見て、ひとみは内心ガッツポーズだった。
瑞稀はブルースカートにふわっとニットで完璧な清楚系。 美羽は白ブラウスにフレアスカートだ。 その後も色々試着させていたわ。 楽しんでいるわね?
「……吉澤さん。 凄いんだね……」
「吉澤さん、ありがとうございます…」
なんとなく、二人の表情がやわらかくなったように感じた、ひとみ。
ーーところが。 ここで予想外の事態に。
「……吉澤さんも、何か買いません…?」
「……そうだよ。 吉澤さんも何か買おうよ?」
「いや、アタイは別に……」
ここには、貴方の好むラフな服はないからね?
ひとみがごねていると、美羽が少しトーンを上げてこう言ったわ。
「吉澤さんも、何か買うべきですの」
「……の?」
ーーの? 美羽から、自然にその語尾が出てきた。 続いて瑞稀もひとみへこう言ったわ。
「はわわさんも、買おうよ!」
「……はわわ?」
ーーはわわさん? 瑞稀がひとみにつけたあだ名ね。
結局、ひとみも服を買わされて、三人で着替えて店を出る羽目になったらしいわ。
「吉澤さん。 似合ってますわ」
「はわわさんらしい、格好だね!」
この時、ひとみは瑞稀に猫被りがバレている可能性に、ようやく気づいたのよ。
服屋を出て、ひとみたちは近くのカフェに入った。 丸いテーブルの席に三人。 瑞稀と美羽の間に座るひとみ。
「はわわ。 何にしましょうか?」
「別になんでもかまいません…」
「……私は苦いのが苦手だなぁ」
それぞれの注文を終えて、沈黙。 ひとみは焦った。 ここで会話を生まないと、せっかくの大作戦が台無しだもんね?
「えっと、二人とも! 服似合っていると思いますよぅ」
「そうかな? はわわさんも似合っているよ、でもこの前のラフな格好もよかったね! ……あれが普段着かな?」
「……え? そんな〜 いつも、スカートですよ〜」
あらあら? 瑞稀は、ひとみの心にズケズケと入っていくわね。
「……」
一方、美羽はまた元通り。 ガード硬すぎるわね?
そこでひとみは、二人に話をふることにーー
「じゃあ。 二人こそ、普段どんな服着てるですかぁ?」
「……それは」
「……普段はあんまり。 制服か、メイド服です。 私は雇われているので、当たり前です……」
「あうぅ。 じゃ、前はどんな服を着てたんですか? ……あ、倉石さんは部屋にあったの見たですぅ」
「……そうだよ。 ラフな服装が好きだったよ……」
「私もラフな服装が好きですわ! ……あ!」
実は、美羽も瑞稀たちの弱みを握るために、様子を伺っていたのよ。 そして、瑞稀が弱みを見せた時、つい勢い余って自分も素を出してしまったのね。
ーー瑞稀とひとみは、その隙を逃さなかった。
「あわわ。 お嬢様です〜 お似合いです〜」
「櫻井さんってお嬢様なんだね! 美羽って呼んでいい?」
「いいですわよ。 私も瑞稀と呼んでいいかしら?」
ひとみは上手くいったって思っているでしょうね。
ーーでも、私からみれば貴方も二人と仲良くなったわね?




