友達を作るのも計画の内? ーーことね視点
「さて、倉石さん。 最後に、倉石さんのお部屋ですね」
「⋯⋯え?」
その時、瑞稀の表情が、ピシリと固まった。
「⋯⋯私の部屋は、いいよ⋯⋯?」
「えぇ? でも⋯⋯倉石さんの服とか、あるでしょ? 着替えとか整理しないと……」
「別にいいから⋯⋯」
瑞稀は、急に表情を曇らせたわ。 ひとみは、訝しんだでしょうね。
「倉石さん? はわわ、遠慮しないでください? ここまで来たら、徹底的にお掃除しないと、ですよ?」
「⋯⋯でも⋯⋯」
「だって、せっかくお部屋がリビングだけ綺麗になっても、寝室が汚れたままじゃ、意味がないですよ?」
「⋯⋯」
瑞稀は、唇を噛んで、俯いたわ。 ひとみは、瑞稀の返事を待たずに、階段を上がり始める。
「ちょっ、吉澤さん、待って⋯⋯!」
瑞稀が、慌てて後を追ってくるけれど、ひとみの方が速かった。 階段を駆け上がり、奥の部屋の扉を開けたわ。
ベッド、学習机、本棚がある。 しかし、衣服の入ったタンスに、ゲーム機の入ったクローゼット。 それらは全部、ガムテープで封じられていた。
瑞稀がいつも好んで着ている、パーカーやジーンズも封印するなんて、相当参っていたと思わない?
ーーその代わりに部屋の中で、ひとみに主張してくるモノがあったのよ。 藁人形と、釘。 それだけじゃない、もっと色々なモノがーー
「見ちゃった〜 見ちゃた? 駄目って言ったのに」
「……テメー」
不気味に笑う瑞稀。 コイツ、狂ってやがるぜ。 ひとみは、戦慄したでしょうね。
「なんなんだよ、これは……」
「……これで、アイツらを呪ってやるんだ……」
ふふ。 ようやく見えてきたわね。 空っぽに見えた瑞稀の奥底に、こんなにも昏い炎が燻っていたなんて。
ーーひとみ。 貴方が手に入れようとしていた『駒』は、貴方が思うより、ずっと危ういものだったのよ。
◇◇◇
その後、ひとみは作戦を考えた。 その名も『難敵には難敵をぶつけろ作戦』。
ひとみは瑞稀の相手に、美羽を選んだ。 最悪、美羽の方を生贄にするために。
次の休日。 ひとみは美羽を引き連れて、約束の場所へやって来たわ。
「アワアワ。 おはようございます。 倉石さん」
「……おはよう。 ……瑞稀でいいよ、吉澤さん……」
待っていた瑞稀は、休日なのに制服姿。 ブレザーに身を包んだ姿。 その顔には表情がない。
対する美羽も制服姿だったわ。 一方ひとみは、猫被りワンピース姿ね。
「……そんな! 恐れ多いです〜」
「……そうなんだ。 ……おはようございます。 櫻井さん」
「おはようございます、倉石さん」
「……瑞稀でいいよ、櫻井さん……」
「いいえ。 それには及びません」
それだけで、会話が終わったわ。 沈黙が続く中、ひとみは考える。
ーー挨拶だけで空気が氷点下になるレベル。 小手先のフォローじゃどうにもならない、根本治療が必要だ、と。
そこでひとみは提案する。 心を閉ざした二人を仲良くさせるには、まずはその武装である。 制服を解除することから始めようとーー
「はわわ。 まずは、服屋行きましょう!」
「え……この格好でいいよ」
「そうです…。 必要ありません…」
「アウ〜 そんなこと言わずに〜 go go」
ーー名付けて『強制お着替え大作戦』だぜ!




