物語のキャスト紹介 ーーことね視点
さて、状況を理解するために、次は登場人物の紹介ね。 私が遺した歪な理想学園で、これから踊ることになる哀れな駒たちを順番に見ていきましょう。
まずは貴方――倉石瑞稀生徒会長。
この世界での貴方の家庭は、すっかり混沌としてしまったわ。
貴方が引き籠ってから、家族の関係はみるみる悪化した。 父親は、逃げるように単身赴任へ。 母親は、度重なる貴方の引き籠りなどが祟って、ついに心を病んでしまったの。 精神病院送りになったわ。
そうして、広い家にはただ貴方だけが残された。
復帰した最初の頃は、それなりに努力したようね。 生徒会長として、何かを変えようと足掻いた時期もあったのでしょう。 けれど、やがて貴方は現実を知る。
崩れた家庭は戻らないし、失われた学校の活気も戻らない。 自分がどれだけもがいても、何も変わらないからーー
そうして潰れて、虚無になってしまったわ。 ただ空気のように、無難に生徒会長としての日々をやり過ごしているだけ。 私に歯向かった気概なんて、もうどこにも残っていないのよ。
次に――櫻井美羽副生徒会長。
彼女は、前の学校でイジメられた上に父親と喧嘩して逃げ出した。 ここまでは、どの世界でも同じ。
それから、瑞稀に拾われて同居することに。 そして理想学園に入学。
ーーあら、何? 瑞稀じゃなくて私が拾ったって? ややこしいわね。その話はパスよ。
とにかく、それは私たちの世界の話。 この話の彼女は、今川先生に拾われたの。そこから紆余曲折あって、桐原舞香の専属メイドに収まったというわけ。
この世界の美羽は、能面のように虚無。 表情も、感情も、すっかり凍りついている。 自分というものに、とことん自信をなくしてしまった子よ。
次は――桐原舞香庶務。
彩乃の妹ね。 心を病んでしまった姉に代わって、この学校を立て直すのだという志を胸に秘めている。 傷ついた姉を間近で見てきたからこそ、彼女は前を向こうとしているの。 健気でしょう? その健気さが、これからどう転ぶのかしらね。
次は――黒田凛会計。
黒田家の三兄妹の末っ子よ。 父は黒田幕斗、成金社長ね。
彼女は瑞稀に対して、ずっとくすぶった不満を抱えている。 空気のように生徒会長の椅子に座っているだけの瑞稀が、どうにも我慢ならないのでしょうね。
この黒田凛こそが、今回の物語のトリガーを引く役。 彼女の不満が、止まっていた歯車を再び回し始めるのよ。
そして最後に――吉澤ひとみ書記。 彼女が、今回の物語の狂言回し。
とある願望のために、裏で暗躍する子よ。 猫被りの裏で糸を引いて、貴方たちの情緒を、ゆっくり、確実にかき乱していく。
ふふ。 役者は揃ったわ。
――さあ、幕を開けましょうか。 瑞稀たちの物語を。




