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倉石瑞稀と100の高校生活でやりたいこと  作者: Masa(文章力あげたい)
VSことね編

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何故瑞稀は生徒会長になれたのか? ーーことね視点

 さて、初めましょうか。 バッドエンドのお話を。 校舎が崩壊され、私が消えた後の新学期。 貴方は生徒会長になった。


 ーーあら? 話についていけない? まったく、しょうがないわね。 前日話をダイジェストで話すわね。


 悪役令嬢の川端ことねは、理想学園の生徒会に就任した。 数々の独占行為の末、文化祭で桐原彩乃と高坂湊に成敗されて消失したの。 


 ーー詰め込み過ぎ? もういいのよ、そこを語るの長いから。


 それよりも、私が消えた後の理想学園がどうなったのか。 まず、瑞稀がどうやって生徒会長の座を手に入れたのかが重要ね。


 倉石瑞稀。 貴方は、私に歯向かった。 私の餌食になったのよ。 それでどうなったと思う? 家に引き篭もったの。 恐怖で、私に対してブルブル震える日々。


 それが、文化祭が終わるまで延々と続いたわ。 布団の中で膝を抱えて、ドアの音にすら怯えていたなんて滑稽でしょう?


 そんな貴方に転機が訪れたのは、文化祭から数日後のこと。


 貴方の家に、今川先生が訪ねてきたの。 けれど今回の先生の立場は、いつもの教師じゃない。 柳田秀五郎の言伝係。 文化祭で私が消失して、学校が瓦礫に変わった、あの一件の報告をするためにね。


 秀五郎は、此度のことを詫びる意味ではなく、口止めのつもりで瑞稀になんでもいいから一つ、願いを叶えてやるよう指示していたの。


 それを聞いた貴方は今川先生にこう言ったのよ。 「生徒会長になりたい」と。


 これには今川先生も、さすがに目を見開いたそうよ。 あれだけ怯えていた子が、最初に口にした願いがそれだなんて。 けれど、柳田秀五郎の駒の願いとしては、これ以上ないほどありがたい申し出だったの。


 なぜだか分かる? 誰も生徒会になんて就きたがらなかったからよ。


 英雄視されていた湊と彩乃。 あの二人は、私がいなくなったことで、すっかりショック状態に陥っていたわ。


 特に彩乃は、思ったよりずっと深く病んでしまったらしいの。 あれほど真っ直ぐで、芯の強かった子が、教室の窓の外をぼんやり眺めるだけの抜け殻になって。


 湊は湊で、そんな彩乃の側に付きっきりで看護するので精一杯。 二人とも、ささやかな学校生活を送るだけで、もういっぱいいっぱいだったのよ。


 英雄なんて、そんなもの。 光が強ければ強いほど、それを失った後の闇は深い。


 私がいなくなって、二人を縛っていた使命も、戦う理由も、何もかも消えてしまった。 残ったのは、ただの傷ついた二人。


 他の生徒たちも、似たようなものだったわ。 瓦礫になった校舎を前にして、何人もが退学していった。 あの惨状を、あの恐怖を毎日思い出させる場所になんて、いられなかったのでしょうね。


 そうして「理想学園生徒会長」というポストーーかつては誉れだったはずのその名前は、在校生にとって侮名どころか、誰一人として欲しがらない呪われた肩書きになり果てたの。


 だから、瑞稀の願いは渡りに船。 秀五郎としては、断る理由なんてどこにもなかった。 怯えて引き籠っていた小娘が、誰も座りたがらない椅子に、自ら手を挙げてくれたのだもの。


 そうして瓦礫は片付けられ、学校は再建された。


 復帰した瑞稀を待っていたのは、二年の始業式。 よみがえった校舎で、彼女は誰に争われることもなく、すんなりと生徒会長の座に就いたのよ。


 私を倒したわけでもない。 私の呪縛を解いたわけでもない。 ――その空白に、たまたま手を伸ばしただけ。 それだけで、あの子は理想学園の頂点に立ったの。


 英雄の湊と彩乃は、教室の隅で寄り添うだけ。 私に歯向かって震えていた瑞稀は、私の遺した空っぽの玉座に座る。


 私がいなくなった理想学園は、そうやって歪な形のまま、新しい一年を始めたのよ。


 ――さあ、ここからが本当の瑞稀の物語よ。


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