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倉石瑞稀と100の高校生活でやりたいこと  作者: Masa(文章力あげたい)
VSことね編

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茶番はおしまい

 凛が消えて二人っきりになった体育館。 ことねは、私を一瞥する。


 「次は、私がいくわ」


 ことねがそう言って、一歩前に出た。 虚像の生徒たちの前に立った。


 「みなさんこんばんは、川端ことねです。 今年一年間はどうだったかしら? ……まあ、聞くまでもないわよね」


 その余裕たっぷりの口ぶりに、思わず感心してしまう。


 この世界は、私が二年生で転校してきた。 ことねが生徒会長をやっている世界だ。 最初にそれを知ったとき、正直、信じられなかった。


 私の知っていることねは、そんな表舞台に立つような子じゃなかったから。


 「私が入学式で言ったこと。 覚えているわよね」


 ということは。 当然、入学式の挨拶もことねだったんだ。 私はその場にいなかったのに、なぜか胸の奥がきゅっと痛む。 私の知らないことねの一年が、ここにはあったんだ。


 「私の頂点はまだ続くわ……って、こんな茶番はいいの」

 「え? どうしたのことね!」

 「凛が消えた今、こんな虚像に意味はないの」


 ことねは、ふっと息を吐いた。 そして、私の方を向いた。


 「瑞稀」

 「……どうしたの?」

 「私は貴方のことを知らないと嘘をついていたわ」


 その言葉に、私は息を呑んだ。 やっぱり、覚えていたんだね!


 「ことね!」


 ずっと、ずっと不安だった。 再会したあの日、ことねは私を見て「あなた、誰?」とでも言いたげな態度をしていた。


 親友だった前の世界みたいに、ことねに抱きつこうとした。


 ーーけれど。 ことねは、ゆっくりと頭を振った。


 その仕草に、伸ばしかけた私の足が止まる。


 「瑞稀、勘違いしないでね」

 「え?」


 彼女の声は、さっきまでの華やかさとは違う、どこか遠くを見るような響きを帯びていた。


 「これは、貴方の言う"知っている"と、私の言う"知っている"とは違うのよ」

 「……何それ?」

 「もう一人の私から聞いた、倉石瑞稀の話だから……」

 「……もう一人の私?」


 その言葉の意味が、すぐには飲み込めなかった。 しかし、以前エタナから聞いた伝言を思い出そうとした。


 ことねは、一体なんて言ってた? 頭が混乱する。 手の行き場が、わからなくなる。


 ことねは、まっすぐに私を見据えていた。 その瞳の奥には、私の知らない運命がある気がした。


 「ねえ瑞稀。 『理想学園2』って、知ってる?」

 「2? 何それ?」


 私が首を横に振る。  ことねは、複雑な表情をした。


 「もう一人の私が、前世で愛読していた小説なの。『理想学園』っていう物語があってね。 その続編が、『2』。 あの子が、何度も何度も読み返したお話よ」

 「この学校の名前の小説……」

 「そしてね、瑞稀」


 ことねは、私に近づいた。


 「その続編の世界に貴方が、いたのよ」

 「私が?」


 私が、その小説の中にいた。 前世のことねが読んでいた物語の、登場人物として。 じゃあ、私って空想上の人物?


 「だから、私が知っているのは、本物の貴方じゃないのかもしれない。 物語の中の倉石瑞稀。 しかも……」


 ことねの声が、わずかに震えた。 


 「バッドエンドのお話よ」

 「……! それって……」


 その私ーーつまり。 本来、私が辿り着く未来ってこと?


 「その話、ぜんぶ聞かせて」

 「いいの? 決していい話ではないわよ……」

 「お願い、ことね!」


 私が頭を下げると、ことねは語り出した。


 


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