集合の時
「エタナ! どこにいるの?」
私は校内を駆け巡った。 いつもなら賑やかなはずの校舎が、今は不気味なほど静まり返っている。
一階、二階、三階。 私は息を切らしながら、教室を一つずつ覗いて回った。
けれど、どこにもあの気配はない。 あの、すべてを引っ掻き回した張本人の姿は見当たらなかった。
「どこ? どこにいるの! ……私を元の世界に返してよ! お願いだから」
焦りで呼吸が荒くなる。 汗が頬を伝って、服が濡れる感覚がした。
ーーその時。 突然、体が引き寄せられた。
「瑞稀、貴方も制服にお着替えしたの?」
「……ことね」
私が、引き寄せられた相手をみると、その相手は嗤っていた。
「……あら? そんなに血相をかいて。どうしたのかしら?」
「……」
「まあ、汗でびしょ濡れじゃないの」
ことねは優雅に微笑んでいた。 その表情は穏やかで、得体の知れない冷たさを孕んでいる。
私が必死になればなるほど、彼女の余裕は際立つようだった。 私は今度は冷や汗をかいた。
「ふふ。 瑞稀ったら、まるで迷子の子供みたい」
「……ことね、どうして学校に?」
私が一歩詰め寄ると、ことねは小首をかしげた。
「この学校の生徒会長ですもの。 当然でしょ?」
「とぼけないで! 私が、生徒会長だったの!」
私は叫んだ。 まるで、この世界に対して訴えるようにーー
「私は……私が、生徒会長だった! ……それなのに目が覚めたら、病室で! 足は動かなかった。 やっと退院したら、今度は私が転校生? ふざけないでよ! ……私は入学式から、ずっと通っていたのに!」
「……ふう。 それが、貴方の妄想ね」
「妄想だって?」
ことねは、唇の端を吊り上げて嗤う。
「貴方のは妄想。 私が理想学園の生徒会長よ」
「違う! 私が生徒会長だったんだよ、返してよことね!」
声が震える。 返してよ、元の世界に! エタナーー
ことねは、まるで駄々をこねる子供を見るような目で、私を見つめていた。
「へえ? じゃ、みんなに聞きましょうか?」
「……みんな? それってどういう意味!」
予想外の言葉に、戸惑う私。
「ええ。 ……誰が本当の生徒会長なのか、みんなに決めてもらえばいいわ」
そう言うと、ことねは、くるりと身を翻した。 スカートの裾がふわりと舞う。
そして。 私を振り返り、挑発するように呟いた。
「体育館にいくわよ、瑞稀」
「……ちょっと! 体育館でなにするの?」
「行ったらわかるわよ。 ……それとも、抱き抱えて運んで欲しい?」
「なっ! ……必要ない!」
「あらそう、残念……」
ことねは、迷いのない足取りで歩き出した。
頭の片隅で、警鐘が鳴っている。 けれど、ここで引き返すわけにはいかなかった。
私はことねの後を追った。 体育館の重い扉が、ぼんやりと見えてくる。
扉に手をかけた瞬間、私の鼓動はますます速くなる。
中に入るとそこには、生徒たちがいた。
ーーけど、明らかに様子がおかしい。
「……なにこれ?」
その登壇には、ことね。 そして凛が立っていた。
「凛!」
「……待ってたよ、瑞稀」
「さあ、始めましょ?」




