迎え学校へ ーー凛視点
私たちは、しばらく抱き合った。 その後、舞香は口を開いた。
「……ねえ、りんちゃん。 お願いしてもいい?」
「……何を?」
ーー嫌な予感がした。 どうか、間違いであって欲しい。 私は、祈りながら続きを促す。
「みずちゃんに、伝えてほしいの。 過去に囚われないでって。 それから……絶対に戻って来てねって……」
「ま、待って。 なんで私が? そんなの、舞香が自分で言えば……」
言いかけて、ハッとした。
舞香の手の感触が、軽くなった。 包まれていたはずの私の手が、今は何にも触れていない。 見ると、舞香の手の指先から、消え始める。 さっき、彩乃がそうなったのと、同じように。
「……え? なんで……。 舞香の理想は、まだ叶って……」
「ふふ。 ……私の理想はね、もう叶ったの。 お姉ちゃんと、ちゃんと分かり合えたし。 ……そして、りんちゃんがさっき言った言葉で納得しちゃった……」
舞香の体が、透けていく。
「最後に、りんちゃんのその言葉が、聞けてよかった……」
「待って……待ってよ、舞香!」
手を伸ばす。 でも、指の間をすり抜けていく。 掴めない。
「ずるいよ、舞香。 私を置いていかないで!」
声が、震えた。
「私をおいて、先にこの世界から去るなんて……! まだ、何にもわからないことだらけなのに……これからどうすればいいのよ!」
「……それは、凛ちゃんが一番わかっているはずだよ?」
最後に残った舞香の顔が、泣き笑いみたいに、くしゃりと歪んで。
ーー舞香が消えた。
誰もいないリビングに、私は一人立ち尽くしていた。 テーブルの上の家族写真の中で、みんなが笑っていた。
「……私も行かなくちゃ……」
探す人物は瑞稀だ。
ーーでも。 なぜか私は、彼女の向かう先に心当たりがあった。
理想学園。 そこに、瑞稀がいる。
◇◇◇ 瑞稀視点
私は、桐原の家から、逃げ出すように離れた。
「舞香の裏切り者……」
ーー私と同じだったじゃないか! それなのに、自分だけ立ち直るなんて。
これから、どうしよう。 私はどうしたらいいんだろう?
そんな私の前には、なぜか学校があった。 どうして?
理由は簡単だった。 体が勝手に向かったのだろう。
全ての決着をつけるためにーー
「……でも、私服で入るのは、違和感が……」
私の服装は、美羽に着させられた、いつもの私だった。
その時だった。 私の服装が一瞬で制服姿に変わったのだ。
「……」
こんなイタズラみたいなこと、できるのは一人ーーいや、一体だけだ。
私は、まるで仇を見るような目で、理想学園を睨みつける。
「エタナ! 全部貴方の仕業だったんだね!」
私は、心の中の思いを晴らすように、校舎へ向かった。
『……瑞稀。 クライマックスです』




