私の決意 ーー凛視点
ことねさんとの話が終わって、私は一度家に帰った。 道中、私は走りながら、自分の理想について考えていた。
汗だくになりながらも考えた結果、私はある結論に至った。
ーー理想学園に行く。 そこに、私の理想がある。
「ただいま……」
当然、返事はない。 わかっていたけど、つい言ってしまう。 癖って、なかなか抜けないものだ。
玄関で靴を脱いで、リビングに入る。 電気をつけると、綺麗に片付いたテーブルが目に入った。
そう。 本当は、この家はもっと騒がしかった。
キッチンにはいつも、お母さんが立っていた。 優しいお母さん。 私が落ち込んで帰ってくると、何も聞かずに、温かいココアを出してくれた。
お父さんは、かっこいい人。 確かに、みんなには「黒幕」なんて呼ばれていて、嫌われているけど。 私にとっては、優しいんだ。
それから、お兄ちゃんとお姉ちゃん。
ーーあの二人は、ここだけの話。 本当に意地悪だった。
私のプリンを勝手に食べるし、テレビのチャンネル権は絶対に渡してくれないし、私が落ち込んでると二人がかりでくすぐってくるし。
「……ふふ」
思い出して、笑ってしまった。 本当に優しいんだから。
ーーでも今、この家には誰もいない。 なぜなの?
静かなリビングに、私の息の音だけが響く。 寂しくないと言えば、嘘になる。
私は、バスタオルを持って、浴室へ向かう。 パーカーを脱ぎ、汗で引っ付いたTシャツとジーンズを脱ぐ。 思えばこの格好で、ウロチョロしていたなんて恥ずかしい。
ーーいつも外に出る時は、スカート姿だから余計に恥ずかしい。
そう考えると、舞香や瑞稀だけでなく、初対面の川端ことねさんにまで、この格好で歩いたんだよね?
ーー私は、赤くなる顔をシャワーで沈めるのであった。
その後、頬を両手でパチンと叩いて、自分の部屋に向かった。
クローゼットを開ける。 理想学園の制服に手をかけた。
私が憧れた服。 何かを期待していた象徴ーー
袖を通すたびに、まだ心臓がドキドキする。 リボンを結ぶ手が、ちょっと震えた。 鏡の前に立つと、そこには制服姿の私がいた。
「……よし」
私も、自分の「理想」を見つけたい。 この家の思い出に浸ったまま、止まっているんじゃなくて。 ちゃんと前を向いて、理想学園に行くんだって。
でも、一人では行かない。 一緒に来てもらおう。 あの二人なら、きっと笑わずに付き合ってくれる。
私は鏡の中の自分に頷いて、家を飛び出した。
さすがに汗だくには、なりたくないのでゆっくりとだけど。




