私たちの出会い ーー舞香視点
お姉ちゃんの物語は、どうやら、スタートと同時に破綻したらしい。 さすがことね! 私たちの恩人だよ!
ことねは、この地では、ただの女子学生じゃなかったんだ。
この土地で「神子」と呼ばれて、敬われている人なんだって。
その祖先の人は、悪いものを祓ったり、視えないものを視たりする。 不思議な力を持っていたらしい。
ーーじゃあ、ことねも「視える」人かも?
荒れていたお姉ちゃんは、少しずつ、落ち着いていった。
台本を開く回数は変わらない。 私を過保護にすることもやめていない。
ーーでも。 また、笑うようになった。
私は、それがすごく嬉しかった。 心配で、たまらなかったお姉ちゃんが、また笑ってくれる。 それだけで、よかった。
お姉ちゃんが変わっていったのは、たぶん、友達ができたからだ。
まず、櫻井美羽ーーミウミウ。 お姉ちゃんのクラスメイトで、お嬢様みたいな喋り方をする、まっすぐな子。
最初は人見知りの壁のある子だと思っていたけど。 今は、大親友!
それから、倉石瑞稀ーーみずちゃん。 私たちとミウミウを繋げてくれた大親友!
みずちゃんとの出会いはね! ーーあれ? おかしいな。 まあ、いいや。
なんでだろう。 みずちゃんとの出会いを考えようとすると、頭の奥がもやもやして、すぐにどうでもよくなっちゃう。 ーーお姉ちゃんも、そうなんだ?
それから、健ちゃん。 明るくて、お姉ちゃんといると楽しそうにするお兄ちゃん! みんなのおかげで、お姉ちゃんは、元に戻ってきた。
文化祭の頃には、私にも、新しい友達ができていた。
黒田凛ーーりんちゃん。 ちょっと偉そうな子。 でも、不器用なだけで、一生懸命で、まっすぐな子なんだ! 私は、すぐに彼女のことが好きになったよ。
そして、お姉ちゃんは——
「舞香。 お姉ちゃん、健太と、お付き合いすることになったの」
「本当に! やったじゃん!」
頬を赤らめて、もじもじしながら報告してくるお姉ちゃん。 その顔は、もう、あの夜に泣いていた人とは別人みたいだった。
ーーよかった。 お姉ちゃん、しあわせになれたんだ。
あの頃は、本当に、そう信じていた。 だけど、それは誤解だった。
「お姉ちゃん。 今から、ミウミウが家に来るって! お泊まりさせてもいい?」
「⋯⋯へえ。 それはいいですね」
「⋯⋯お姉ちゃん?」
私は耳を澄ませた。 すると、お姉ちゃんはぶつぶつ呟いていた。
「櫻井美羽。 原作で……と思い込んでいた。 エピローグで、……そこには、専属のメイドがいた。 ……そのメイドが櫻井美羽だったの。 その性格は寡黙、常に敬語と言う設定で、あくまで私達の専属メイドというキャラを貫いていた。 ……しかし、現実は違った。 イレギュラーが起きて……その原因は川端ことねであることは間違いない。 ……長文小説ができてしまうので割愛するわね。 ……櫻井美羽の初対面での雰囲気は、まさに原作再現だった。 自己紹介で自分の名前だけしか言わずに……彼女は一体誰だ? 原作には存在しないわよ……」
ーーもう、耐えられなかった。 私は、お姉ちゃんを揺さぶり起こす。
「お姉ちゃん!」
「はう!」
「また、自分の世界に入っていたでしょ? ミウミウが来たよ?」
その後も、お姉ちゃんは、ミウミウに失礼なことをしていた。
食材を持ってきて、料理までご馳走してくれる予定だったミウミウにーー
「ここは私の戦場。 貴方はただ、私の作る美味しい食事を食べていればいいの! 美羽はあそこへハウス!」
言われたミウミウは苦笑いで私と顔を見合わせた。
お姉ちゃんは、その様子を見て、満足そうだった。
ーーでも、私は嫌な予感がしたんだ。




