神子様と初対面 ーー黒田凛視点
私は瑞稀の後ろについて行く。 そして、リビングに通された。
広々としたリビングには、ソファに腰掛けた先輩たちがいた。
一人は、瑞稀の親友、櫻井美羽。 金色の髪に、上品な佇まい。 なのに、ミスマッチなカジュアルスタイル。
そして、膝の上にはたくさんのお菓子の包みが乗っていた。
去年の文化祭で見た覚えのある、笑顔を浮かべていた。
そして、吉澤ひとみ。 私が、勝手に建てた神社を違法建築だと言ったら、凄い剣幕で怒られたことを覚えている。
なぜかメイド服姿で、手足には猫の毛がついた被り物をしているわ。
そして、この土地の神子様ーー川端ことね。 学校に行く前だったのか、制服姿で背筋がぴんと伸びていて、その目は私を警戒していた。
「凛、紹介するね。 こっちが美羽で、こっちがひとみ。 それで……」
「大丈夫よ、瑞稀。」
瑞稀の言葉を、私は途中で遮った。
「⋯⋯ごめん。 自己紹介は、あとでもいいかしら?」
リビングが、しんと静まった。 瑞稀の笑顔が、少しずつ、強張っていく。
「⋯⋯凛。 何か、あったの?」
瑞稀が、尋ねた。 私は、ソファに座らせてもらって、ゆっくりと、話し始めた。
昨日、私の家の違和感に気づいたこと。 慌てて彩乃の家を訪ねたこと。
舞香が、いるはずのない「お父さんとお母さん」と、楽しそうに話していたこと。
彩乃さんの、隈のできた目元を思い出しながら。 彼女が夜中に、私に打ち明けてくれた、あの話を。
「⋯⋯彩乃さんは、言ってた。 舞香が見ているのは、幻だって。 もう、いないはずの、二人の幻影なんだって。 ……それを見せて、舞香を陶酔させて、完全に溺れた所を、悪霊が……」
「……」
美羽が、無表情でお菓子の包みを、そっと膝の上に置いた。
「それで⋯⋯彩乃さんは、考えてた。 これが、二人の仇の悪霊の仕業じゃないかって……」
私が話し終えると、沈黙がリビングを覆った。
まず最初に声を出したのは、ひとみだった。
「ふん。 悪霊な……そんなモンあるのか……」
「……貴方は、あんなものを建てている癖に、信じてないの?」
「あん? あんなものだと! 口の利き方、気をつけろよガキ!」
「……ひとみ」
「はい。 すみませんでした……」
あの、厄介者を一撃で黙らせたわ。 この人、只者じゃないわね。
「⋯⋯黒田凛」
「はい!」
ーー緊張する。 制服姿じゃないことを後悔する私。
「まあ、そんなに怯えなくていいわよ。 瑞稀やひとみに対してと、同じように接してくれて構わないわよ?」
「恐れ多いです……」
私は、改めて居住まいを正した。
「……」
「……」
ーーだから、気づかなかった。 瑞稀と美羽が黙り込んでいたのを。




