表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
倉石瑞稀と100の高校生活でやりたいこと  作者: Masa(文章力あげたい)
VSことね編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

204/236

桐原家の食卓

 ダイニングに足を踏み入れると、舞香がぱっと振り返った。


 「りんちゃん、こっちこっち! りんちゃんの席、ここね!」

 「⋯⋯うん」


 五人がけのテーブルには、お皿が五つ。 ご飯茶碗も、お味噌汁のお椀も、五つずつ。 箸も五膳だ。


 誰もいないはずの席に、湯気の立つご飯が置かれている。 


 「お母さんね、今日はりんちゃんが来てくれたから、張り切っちゃって!」

 「⋯⋯へえ」

 「ハンバーグ、美味しそうでしょ? お母さんのハンバーグ、世界一なんだから!」


 舞香は、誰もいない正面の席に向かって、得意げに笑った。 その視線の先には、空いた椅子があるだけ。


 でも、舞香の中では、お母さんは確かにそこにいて、照れたように笑っているのかもしれない。


 「⋯⋯すごいね」


 私は、そう絞り出した。 声が少しだけ震える。


 彩乃が、隣の椅子をすっと引いてくれた。


 「凛ちゃん、座って」

 「⋯⋯ありがとう、ございます」


 椅子に腰を下ろす。 目の前のハンバーグは、本当に美味しそうだった。 じゅうじゅうと音を立てそうな、艶のあるデミグラスソース。 ふんわり盛られた白いご飯。 本当に美味しそうね! 彩乃が、作ったのよね? 


 「いただきます!」


 舞香が、両手を合わせた。 その向かいの席に向かって、にこにこと頷きながら。


 「うんうん。 いただきまーす!」


 舞香の耳には、「いただきます」の声が、四人分聞こえているのよね。


 「⋯⋯い、いただきます」


 私も、手を合わせる。 彩乃も、いただきますと呟いた。


 ハンバーグを、一口。 ーー美味しすぎるわよ!


 「ね、お父さん。 りんちゃんね、私の大切な親友なの。 体育大会の時、私のためにすっごく頑張ってくれたんだよ! ……そうなの!」


 舞香が、空いた席に向かって話しかける。 うんうん、と頷いて。 くすくす、と笑って。


 「えへへ。 お父さん、りんちゃんのこと褒めてくれてる」

 「⋯⋯そう、なんだ」

 「お母さんもだよ!」

 「⋯⋯うん。 ありがとう」


 私は、誰もいない椅子に向かって、ぺこりと頭を下げた。


 彩乃を、ちらりと見る。 彩乃は、黙々と箸を動かしていた。 


 いや、ドヤ顔だった。 自画自賛かしら?


 「あ、そうだ! お母さん、お父さん! お願いがあるの!」


 舞香が、ハンバーグを頬張ったまま、手を合わせる。


 「今日ね、りんちゃん、うちにお泊りしてもいい?」

 「⋯⋯!」


 私は、思わず顔を上げた。 私がお願いしたかったことを先に言われた。


 「……りんちゃん、なんだか元気ないの。 お家でね、いろいろあったみたいで…… だから、今日は私が一緒にいてあげたいの! ね、いいでしょ? ……うん。 本当に! ありがとう!」


 舞香は、誰もいない両親に向かって、必死に頼み込んでいた。 うん、うん、と頷きながら。


 「⋯⋯えへへ。 いいって!」

 「⋯⋯舞香」

 「お姉ちゃんは? いい?」


 舞香が、彩乃を見る。 彩乃は、ふっと微笑んだ。 その微笑みは、今までで一番、自然に見えた。


 「⋯⋯もちろん。 いいわよ?」

 「⋯⋯ありがとうございます。 彩乃さん」


 私は、深く、頭を下げた。


 ーーこの家にいる間だけは、一人じゃない。

 

 舞香が空席に話しかけている中、彩乃が私に話しかけてきた。


 「黒田さん」

 「はい」

 「……深夜、外で……」


 彩乃が、私に向けてそう告げるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ