みんなの思いで、凛の違和感
リビングに沈黙が降りた。 私は理解してしまった。
ミウミウは、私のために、深い絶望と引き換えに、あの力を授かったのだね。
ーーそっか、絶望が必要なんだ。 胸が締め付けられて、何も言えないよ。
そんな中、ひとみが、首を傾げながら口を開いた。
「……あれ? うぅん。 おかしなこと言うな? ……それじゃまるで、アタイたちと瑞稀は以前から知り合いだったみたいじゃないか?」
ひとみの素朴な疑問に、ミウミウは小さく頷いた。
「ええ。 その通りですわよ」
「は?」
「貴方達と瑞稀は、以前は友達でしたの。 ……忘れて、しまっただけで」
「⋯⋯」
ひとみが、目を見開いた。 ことねも、眉をひそめている。
「⋯⋯思い出? アタイらと、瑞稀の?」
「ええ。 話しても、よろしいですわよね? 瑞稀」
「⋯⋯うん。 お願い、ミウミウ」
ミウミウは、ゆっくりと語り始めたのだった。
◇◇◇ 黒田凛視点
休日の午後。 私は自分の部屋で今日も、考えごとをしていた。
ーーずっと心がモヤモヤしている。 なんでだろう?
そんな私が思い出すのは、瑞稀と舞香だった。 彼女たちは、空虚だった私の気持ちを埋める何かを持っていた。
その衝撃で私は、思わず痙攣してしまったわ。 変なことも言った気がするんだけど、覚えてないわね。
まあ、最後は、仲良くもなれたし、変なこと言ってないよね?
誰かの存在を忘れたような、記憶にぽっかりと穴が開いた気分。 ーーそんな感覚は、以前よりは薄れた。 その代わりに浮かんできたのは、違和感だった。
胸の奥が、なぜかちくりと痛む。 ぼんやりと天井を見上げてしまう。
何だろう、この感覚。 懐かしいような。 切ないような。 うまく、言葉にならないなーー
家の中は、静まり返っている。 時計の秒針の音だけが、やけに大きく響く。
ーー静かすぎる。 ふと、そう思った。
私は、家族と暮らしている。 お母さん、お父さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん。 賑やかな、五人家族のはずだ。
なのに、今、家には自分しかいない。
「⋯⋯あれ?」
私は、身を起こした。 部屋の扉を、そっと開ける。 リビングからも、台所からも、物音一つしない。
「⋯⋯お母さん? お父さん?」
返事は、なかった。
ーー今日だけじゃない。 いつから、私は一人だった?
私の中で、何かが、ざわりと揺れた。 昨日も、一昨日も⋯⋯その前も。 家には、自分しかいなかった気がする。
思い出そうとすると、頭の奥がぼんやりと霞んだ。 お母さんの顔。 お父さんの声。 お兄ちゃんの笑い方。 お姉ちゃんの背中。
ーー思い出せるのに、なんでいないの?
「⋯⋯おかしい」
私は、自分の頬を、強く抓った。 痛い。 夢じゃない。
でも、それなら、なぜ? 家族のことを今まで疑問に思わなかったの?
ーー寂しい。 一人は嫌だよ。
私は、湧き出る感情のまま、家を飛び出した。




