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倉石瑞稀と100の高校生活でやりたいこと  作者: Masa(文章力あげたい)
VSことね編

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ことねと湊のひと時の別れ

 湊が、ことねを引き寄せて会話している。


 私と櫻井さんとひとみは、その様子をなぜか傍観している。

 

 「みんな、いい子だ。 ことねには、こんなに素敵な友達がいるんだって……俺は、本当に安心している」

 「……」

 「もう、ことねには俺だけじゃないんだって」

 「……うん」

 「もう、これでいい…… 俺は」

 「……」


 ーーきた。 やっぱり、ことねは湊をこの世界から、消そうとしているんだ。


 「……さっき、ことねのカレーライスを食べて思ったんだ。 俺のアドバイスはもう必要ないってな……」

 

 ーーああ。 湊は、ことねの胸の中で、わかってしまったんだね。

 

 湊のこの世界での役目が終わった。 湊は「ことねが料理を作る」ことだけを願って、存在していたんだ。 


 その願いは私たちに託された。 だからもう、いる必要がないんだーー


 ことねは、湊の胸から、顔を上げた。


 「湊。 ……美羽はね、変わってるんだけどね、すごく面白い子よ。 一緒にいると、毎日がお祭りみたいで」

 「……知ってるけど?」

 

 ことねの説得に、湊が疑問をもった。 


 「ひとみはね。 変わっているけど、面白い子よ。 一緒にいると楽しいわよ」

 「それも、知っているな……」

 「えっと……瑞稀って子もいるわよ?」

 「……? 最近きた転校生だよな? ……もう、仲良くなったのか」


 ーー忘れてた。 この世界では、私は転校生だったよ!


 「湊が、心配しなくても、私、ちゃんと笑って生きていけるから……」

 「ことね……」

 

 湊の目から、涙がひとつ、こぼれた。 

 

 「俺は今、感動しているぞ……」

 

 ーー来た。 なぜか胸の奥が、ぎゅうと、痛くなった。 


 昨日、お母さんと別れた時のことを思い出すーー

 

 「行っても、いいのか?」

 「うん」

 「ことねのこと、置いてっても、いいのか?」

 「うん……」

 

 ことねの声が震えた。 湊は、もう満足してるんだから。 不安は絶対に顔に出さない! という表情をしている。


 そんな私の気持ちが表情に出ていたのか、櫻井さんが小声で話しかけてきた。


 「瑞稀? ……辛いですわよね?」

 「……」

 「正直に言うのですわ!」

 「ミウミウ……」

 「……! 瑞稀……」


 優しく問いかける彼女に、つい寄りかかってしまった。

 

 「ことね……」

 「なにかしら?」

 「ありがとう。 俺のために……」

 「……また会おうね、湊」

 

 湊が、ふわりと笑った。 私の知らない高坂湊だ。 きっと、いつも二人でいる時はこんな雰囲気なんだろうな。


 「ク、クゥ。 いい話だぜ……」


 ひとみが、目の前の茶番劇に涙を流していた。

 

 「ううん。 俺のほうがありがとうだぜ!」

 「……」

 「俺は、ことねのこと、ずっと大好きだから」

 「……うん」

 「ひとりで、抱え込んじゃ、だめだぞ」

 「……うん」

 

 湊が、ことねをぎゅっと、抱きしめた。 


 ことねの体が、湊の腕の中で、すっぽり収まった。


 「……瑞稀」

 「……もういいよ。 ……櫻井さん」


 湊の声が、ことねの耳元で、優しく響いた。


 「いってきます」


 ーーいってらっしゃい、湊。 ことねの声がか細く聞こえた。


 代わりに、ことねは、湊の背中に、回した手にぎゅっと力を込めた。


 湊も、ぎゅっと抱き返してくれた。 しばらくそうしていた。


 数秒だったかもしれないし、数分だったかもしれない。


 ーーやがて。 湊がこの世界から消えた。


 ことねは、目を開けなかった。


 きっと開けたら、湊が、もういないことを確かめてしまうからだろう。


 「……」


 そっと、目を、開けた。 ことねは一人でうずくまっていた。


 高坂湊が最初から、いなかったみたいに。 この世界から消えたのだった。


 「みござまぁ! あだいかんどうでず!」

 「……」


 ひとみが、感極まったのかことねに抱きつく。 その手は、ことねの体を弄んでいるような気がするが、気にしたら負けだろう。


 「は、はう。 は、はう」

 「ひとみ……」

 「はい! 神子様!」

 「私はことねよ? 再教育決定ね……」

 「……あれ?」


 ことねがそういうと、ひとみはドナドナと運ばれていったーー


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