外伝 柳田健太VS黒田幕斗 その三 〜黒幕に牙を剥く健太
数日後、健太は調査を進めていた。 藤崎精密が、いつもの銀行から急にお金を貸してもらえなくなった経緯。 それは、あまりにも不自然すぎた。 三十年も付き合ってきた銀行が、なぜ土壇場で手のひらを返したのか?
調べた結果、一つの名前が浮かんだ。
「第一銀行・アジサイ支店、副支店長青木」
その青木が、黒田興産と裏で繋がっていた。 わざと融資を断って、藤崎精密を黒田の金貸し会社に追い込み、その見返りに、こっそり金をもらっていた。
ーー要するに、銀行員のくせに敵に協力していた、裏切り者だった。
健太は、その証拠を掴んだ。 青木と黒田興産の人間が密会している写真、お金が動いた記録のコピー、すべてだ。
放課後、生徒会室。 健太は、結衣の前に証拠を並べた。
「青木の不正、銀行本部に告発する」
結衣の表情が、強張った。
「……あなた、そこまで」
「銀行本部が動けば、青木はクビになる。まともな副支店長が後任に来れば、藤崎精密への融資は再開される。そうしたら……」
健太は続けた。 その表情は、勝ち誇っていた。
「藤崎精密は、銀行から借りた金で、黒田の金貸し会社への借金を一括返済できる。 借金がなくなれば、株を取られる罠も発動しない」
「……」
「青木がもし全部白状したら、黒田興産にも警察の手が伸びる。 それが、狙いだ」
結衣は、ゆっくりと椅子に腰を下ろした。 長い沈黙のあと、結衣は呟いた。
「健太。 アンタ本当に、本気なのね」
「ああ……」
「お父様の、柳田秀五郎の力を、本気で使う気? アンタはそんなの嫌がってた癖に
!」
「使わせてもらう。 俺の安いプライドなんて、秤すらいらない……」
健太は静かに答えた。
「親父は俺がこの件に首を突っ込むことを、止めなかった」
結衣は、しばし黙ったまま、健太を見つめていた。 その瞳の奥に、何かが揺れていた。
「ミウミウ。 これって私たちが聞いていいことなのかな?」
「瑞稀! 言い訳ありませんわ! ことねに言って、解決してもらいますわ!」
「……」
美羽の発言で、生徒会室の空気が変わる。 幸子はため息を吐いた。
「ミウミウ。 貴方はわかってませんね。 それじゃ、ストーリーが盛り上がらないでしょう?」
「え? そういうものですの?」
幸子の主張に、結衣と健太が静かに頷くのだった。
◇◇◇
特訓は続く。 腹筋、発声、ダンス、笑顔の作り方、ファンサービスの極意、ステージングの動線、衣装の早着替え、昼ご飯の弁当の準備、控え室の掃除、片付け。
サッチーは、何度も泣いた。 そして、何度も諦めかけた。
それでも、結衣の鬼指導と、密かに応援してくれる生徒会の仲間たち(健太もこっそり差し入れを持ってきた)に支えられ、少しずつ、輝きを増していった。
そして、四人ライブ当日。
スポットライトを浴びたサッチーは、もう、あの日の中二病な書記ではなかった。
「行きます、ゆいゆい!」
ステージの袖から駆け出すサッチーたち四人。 その目には、ほんの少しだけ、涙が滲んでいた。




