ちょっと! なにしてますの! ーー櫻井美羽視点
校舎を歩く瑞稀を見つけるのは簡単でしたわ。 だって、瑞稀のことは理解していますものーー
瑞稀、車椅子を置いてきてしまったこと、きっと後悔することになりますわよ。
ほら、もうヘトヘトではないですか。 私がこうして追いかけてきたのですから、もう逃げ道なんてありませんわ!
そう思っていた私は、瑞稀に声をかけようとした。 でも、瑞稀はその前に部屋の中に入っていった。
ーー保健室ですの? 瑞稀、逃げ込んだ先がそこだなんて、少し意外ですわ。
今川先生に何を話すつもりなのですか? 私のこと、何か言おうとしているのですか?
今川先生相手では分が悪いですわね。 外で聞き耳を立てて待っていますから。 どうか、貴女の心の中にある本当の気持ちを、私にも教えてくださいまし。
そう思っていた私に聞こえたのは、ことねの声でしたの。
えっ、ことね! なぜ彼女が白衣を羽織って保健室に? 今川先生の代わりにことねがいるなんて、一体どういう状況ですの! 私、外で心配して見ておりましたが、ことねが何か企んでいるのかしら。
ーー今川先生が、もういない? そうですの。 先生は、理想を叶えたんですわね。 羨ましいですわね。
でも、ぷぷ。 今川先生がここにいた理由は、ことねに説教をするためだったなんて! 意外ですわね!
そんなことを考えていましたら、瑞稀がことねに向かって訴えていますわ!
瑞稀、落ち着いてください! そんなに詰め寄ったら、ことねだって困ってしまいますわ!
それに対して、ことねが瑞稀を押し倒しましたわ!
ことね! ナニヲシテイマスノ。
私は扉を開けて、訴えましたの!
「ちょっと、ことね! 瑞稀に何をしようとしているのですか!」
瑞稀は私が守らなければならない大切な人ですわ!
たとえ相手がことねでも、瑞稀をそんなふうに扱うなんて! 私許しませんわよ!
「瑞稀から離れてくださいませ!」
「おや? これはこれは。 瑞稀の保護者の美羽じゃないの」
「⋯⋯」
ことね、貴女が何を考えていようと、わたくしは瑞稀を守るためにここにいますわ。 その不敵な笑み、一体何が目的ですの!
瑞稀、私が必ず守り抜いてみせますから、どうか目を開けていてくださいね!
「美羽。 貴方、私の家に帰ってきなさいよ。 貴方は私のペットなんだから⋯⋯あと、湊も貴方を待っているし⋯⋯」
「そういえば、湊もこの世界にいましたわね。 どうしてですの?」
「湊はね。 賑やかな家庭が好きなんですって。 きっとあんたが帰ってきたら、満足して消えるわよ。 ⋯⋯まったく。 湊には私だけでいいのに」
ーーそうでしたの、湊の願いがそれだったなんて意外ですわね。
私とことねが話している間、瑞稀は少しずつ移動して、ついには部屋を出ようとしましたわ。
「瑞稀! どこへ行くのです!」
「⋯⋯二人とも、この世界について知っているんだね。 ことねが私のことを忘れていたのも、嘘だったんだ」
「⋯⋯あら? 貴方はどちらが都合がいいのかしら?」
「え?」
あ! そのことは、私も気になっていましたの! ことねは、瑞稀のことは本当に忘れてしまったのかしら?
「ふふ。 残念ながら、貴方の記憶がないのは本当よ。 理由まではわからないけど。 私の貴方への記憶が、この世界には不要だったみたいね?」
ことねが、瑞稀の目をニタニタしながら見ていますわ! ちょっと! どういうことですの!
すると、瑞稀が突然、薄ら笑いを浮かべましたの。
え! 瑞稀のこんな表情は見たことありませんわよーー
「⋯⋯はは。 それは、都合いいね。 ⋯⋯いいこと聞いたよ。 じゃあ、私は用事があるから⋯⋯」
瑞稀が去っていく姿を、私は見つめることしかできませんでしたのーー
「ふむ。 どうやら私は、瑞稀にとって不利な情報を持っていたみたいね⋯⋯」
ことねが? 私に内緒で瑞稀と秘密を共有していたなんて!
納得がいきませんわよ! 私は拳を握りしめましてよ。
決めましてよ、私が瑞稀の秘密を見つけて見せますわ!




