諦めない美羽 ーー櫻井美羽視点
体育大会が終わった後、瑞稀は部屋にこもってしまったわ。 お母様が、瑞稀を心配していますわよ?
私が瑞稀の心配をして、ドアを見張っていると、夜明け前に部屋のドアが開いて、瑞稀が出てきましたの。
私は瑞稀の後ろについて、後を追いましたの。 瑞稀は歩けるにも関わらず、車椅子で動いているので、私はバレずに後ろから追うことができましてよ!
そんな瑞稀が、大変な思いをして辿り着いたのは、私の実家でしたの。
瑞稀。 どうしてそんな無理をしてここへ来たのですか! お体は大丈夫なのですか? 何かあったらどうしようと、私は胸が締め付けられる思いですわ。
私の実家なんて、瑞稀がいればどこよりも輝く場所になりますわよ。 さあ、そんなに立っていないで、まずは中に入って温かいものでも召し上がってくださいまし!
パパ! 頼みますわよ! しばらくすると、瑞稀が出てきましたの。
私は瑞稀に話しかけるために近づきましたわ。
ーーねえ? 瑞稀! ナゼワタシノカオヲミテクレナイノ。
「⋯⋯瑞稀? どうしてこちらへ?」
「和馬さんに用事があって。 彼が貴方に話したいことがあるって言ってたよ」
「ええと? なにかしら⋯⋯ 行ってきますわ!」
私はパパに話を聞きましたの。 それを聞いた私は涙が溢れましたの。 瑞稀、どうしてそんな悲しい嘘をつくのですか! パパから全て聞きましたわ。瑞稀が私のことを想って、身を引こうとしたことなんて、私には全部お見通しです。
「さようなら」なんて言葉、私は絶対に認めませんわよ。 たとえ瑞稀がどれだけ拒絶しようとも、私が一生かけて貴女の心を守り抜いてみせますから、覚悟してくださいまし!
それがたとえ、自分の心を壊すことになってもーー
◇◇◇
私は校舎裏のベンチに腰掛けている瑞稀に声をかけますの。 瑞稀はメガネすらも外して、ボーッとしていましたの。
どうしてそんなに自分を隠そうとなさるのですか…。
車椅子も、そのメガネも、瑞稀が自分を守るための鎧だということは分かっていますわ。
でも、私に気づくと慌ててメガネをかけましたわ。 瑞稀。 私の前ではそんなもの外して、ありのままの瑞稀でいてほしいのですわーー
私が一生かけて、貴女のその不安も偽りも、すべて受け止めて守り抜いてみせますからーー
さあ瑞稀。 まずは美味しいものを食べながら、ゆっくりお話ししませんこと?
「⋯⋯櫻井さん」
「⋯⋯ミウミウってもう呼んでくださいませんの?」
「へ?」
「瑞稀は私に、色々なことをしてくれましたわよね?」
「⋯⋯」
「私は貴方に、恩をいただきました。 ⋯⋯そう、たくさんのね」
瑞稀、どうしてそんなに怯えた目で私を見るのですか? 私はただ、貴女と一緒に美味しいものを食べて、心を通わせたいだけなんですわ!
貴女がそうして距離を取るたびに、私の胸が締め付けられるように痛みます!
どうか、そんなに拒絶しないで! 私が瑞稀を傷つけるようなことなんて、絶対にしませんわ!
「⋯⋯貴方は、私のことどう思っていますの?」
「⋯⋯え?」
「貴方にとって、私ってなんですの?」
瑞稀、心が痛いですわ。 私にとって瑞稀は、何よりも代えがたい、ずっとずっと守り抜きたい大切な人ですわ!
過去のトラウマから私を救ってくれたあの時の温もり、私は今でも忘れておりません。 お願いですから、その真っ暗な瞳で私を突き放さないで! 貴女が一番好きなのは、私ではないのですか?
「⋯⋯ちょっと、怖いよ。 こんなのらしくないよ!」
「⋯⋯らしくない? 私のこの行動がらしくない⋯⋯」
「貴方はいつも明るくて、能天気な食いしん坊! いつもニコニコで、私がボケたら、ツッコんでくれる⋯⋯」
ーーくれる。 瑞稀? その続きはなんですの?
私は期待した。 ーーでも、瑞稀からその続きの言葉は出なかったわ。
「くれる。 くれる? くれる!」
瑞稀、どうしてそこで言葉を止めてしまうのですか! 貴女が親友という言葉を口にするのを、私はずっと待っていたのです。
そんなに苛立たせてしまったのなら謝りますわ、でもお願いですから、私から目を逸らさないでくださいまし。 貴女が私をどう思っているのか、その本音を聞かせていただけるまで、私はここから一歩も動きませんわよ!
「瑞稀⋯⋯」
「⋯⋯櫻井さん、ごめんなさい⋯⋯」
「え? ちょっと⋯⋯瑞稀! 私は諦めませんわよ! ⋯⋯だって私にとって貴方はトテモタイセツナソンザイダカラ!」
瑞稀、待ってください! どうして行っちゃうんですの! 私にとって貴女は、何よりも代えがたい、世界で一番大切な人なのに!
置いていかれた車椅子を見つめながら、私の心は今、張り裂けそうなほど痛んでおりますわ。 それでも、私は絶対に諦めませんから。 貴女の心に届くまで、私は何度だって追いかけますわよ!
私は瑞稀の後を追いかけたのですわーー




