美羽の葛藤 ーー櫻井美羽視点
次の日の教室。 私の隣には、瑞稀が座っていた。
瑞稀が隣だなんて、運命を感じますわ!
瑞稀が車椅子はもう必要がない程、回復していることは知っていますの。 でも、そんなことはどうでもよかったの。 瑞稀! 私が一生かけて、貴女の歩く足になって差し上げますわ!
この学校での生活、私が誰よりも楽しくして見せますから、安心して頼ってくださいませ!
ーーあら、皆さん少し熱心すぎますわよ。 瑞稀は私の大切な友人なのですから、あまりベタベタと邪魔をしないでいただきたいですわ!
ほら! 瑞稀がさっきから少し困った顔をしていますわよ! 誰が貴女を困らせるようなことをしましたか? 私がすぐに追い払って差し上げますわよ!
そして、彩乃という邪魔が来ましたが、私は屈しませんわ!
ーー彩乃!いくらなんでも馴れ馴れしすぎますわ! 瑞稀は今、少し疲れているのですから、そんなに大きな声で迫るのはおやめなさい。
瑞稀、そんなに無理をして言葉を探さなくて大丈夫ですよ。 貴女が何も言えなくても、私が貴女の気持ちをすべて汲み取って差し上げますわ!
まあ彩乃。 なんて厚かましいことを! 瑞稀を一体なんだと思っているのですか! 瑞稀の柔らかな髪を撫でたり、日常の些細な幸せを共有できるのは、私だけの特権ですわ!
彩乃。 これ以上瑞稀に近づくのならコロコローーいえ、わたくしの愛の力で全力で阻止させていただきますわよ!
さあ、瑞稀! 私の方を見てくださいまし、他の誰の言葉にも耳を貸す必要はありませんわ!
◇◇◇
体育大会の昼休み。 私は瑞稀と一緒にご飯を食べるために、放送席へ向かいますの。
彩乃が、一緒に来ようとしましたが、私がマイマイの名前を出すと、諦めて去って行きましたわ。
放送席には、瑞稀がちょこんと座っていましたわ。
ーーふふ。 瑞稀ってば。 そんなにあたふたして!
「瑞稀! ご飯を食べましょう! もう私、お腹と背中がくっつきましてよ!」
バッグからお弁当を取り出して食べる。 美味しいですわね! 瑞稀と一緒なら、ご飯はあっという間に、空っぽですわね。
ーーでも瑞稀の食は、全然進んでませんわ! 私は瑞稀に笑顔で話しかけましてよ!
「瑞稀! ご飯を食べないと、大声が出ませんわよ!」
「⋯⋯」
「み、ず、き」
「⋯⋯」
カチーンときましたわ!
「ちょっと、瑞稀! 私の話を聞いてますの?」
「⋯⋯うん? どうしたのかな櫻井?」
「櫻井? え? 瑞稀、どうして、ですの⋯⋯こんなの、私は望んでないですわよ!」
櫻井? 私をそんな他人行儀な名前で呼ぶなんて、瑞稀、一体どうしてしまったのですか!
あんなに仲良くしていたのに、まるで別人のような。 そんなの私、耐えられませんわ!
気づけば私は、駆け出してしまったわ。 瑞稀、どうして私のことを「櫻井」なんて呼んだのですか? お願いですから、もう一度いつものように「ミウミウ」って呼んでくださいまし!
騎馬戦でことねをおんぶする私。 ことねは、相変わらず強引ですわね!
でも私は、そんな破天荒なことねたちを見ている場合ではありませんわ!
瑞稀! 見ていてくださいませ! 私が今から瑞稀のために勝利を掴み取りますわ!
「これに勝って、瑞稀にミウミウ偉いって言ってもらうのだわ⋯⋯」
ことねの活躍で、私たちの勝利! 私はワクワクしながら、瑞稀の元へ向かったわ。 すべては、瑞稀のインタビューを受けるためですわ!
「⋯⋯素晴らしい活躍でしたね。 櫻井さん」
「櫻井さん? ⋯⋯櫻井さん、櫻井さん」
そんな…どうして、そんなに冷たい目で見つめるのですか? 「櫻井さん」なんて呼ばれて、心臓が引き裂かれるかと思いましたわ。
瑞稀、そんなのは私が望んでいることではありませんの!
貴女は猫被りで、図々しくて。 悪巧みが好きな、イタズラっ子!
お願いですわ! その仮面のような態度を捨てて、本当の瑞稀に戻ってくださいまし!




