美羽の気持ち ーー櫻井美羽視点
退院した瑞稀と家に帰る。 瑞稀はずっと上の空。 私はそんな瑞稀を気遣いながら彼女の家、いいえ。 今日からここは私の家になるのですわ。
瑞稀を部屋まで運んで、瑞稀のお母様とご飯の支度をするのよ。
私はあの日から、ずっと学校を欠席していたわ。 理由は少しでも瑞稀のそばにいたいからーー
ご飯の準備もできて、瑞稀を呼びに行く。
「⋯⋯瑞稀? どうしたのですわ? 明日から学校ですよ⋯⋯」
「美羽。 帰らなかったの?」
「⋯⋯帰る? 私には帰る家はありませんわ。 ⋯⋯あの日、瑞稀が私を拾ってくれた日から、ここが私の家ですわよ? 部屋もありますもの⋯⋯」
「え? なにを⋯⋯」
瑞稀、どうしてそんなに怯えた顔をするのですか? 私はただ、貴女の隣でずっと一緒にいたいと願っているだけですわ。
この世界では、多少の嘘も真実になりますもの。 そうでしょう? 瑞稀。
記憶が混濁しているのですか? それとも、何か恐ろしいことが起きてしまっているのでしょうか。 お願いですわ、そんな悲しい目で見ないでくださいまし。
私はどこにも行きませんし、冗談なんて言っているわけがないでしょう? 貴女が私の全てなのですから、ずっとこうして一緒にいましょう?
食卓に行くと、たくさんのご馳走がありましてよ! 思わず、ニコニコしますわね!
そんな私に釣られて、瑞稀も笑顔を私に見せてくれましたわ!
「瑞稀がやっと笑顔になりました。 安心しました」
「え? ⋯⋯あ、うん。 そうだね」
ふふ、瑞稀が笑っている姿を見るのが、私にとって一番の幸せですわ。
たとえ世界がどう歪んでいても、こうして一緒に美味しいご飯を囲んでいられるなら、それだけで救われますわよね!
さあ、遠慮せずにたくさん食べてくださいまし。 今日は瑞稀のために、私とお母様が腕によりをかけて作った特別メニューばかりですわよ!
でも、瑞稀はすぐに表情を曇らせましたわ。
あ、なるほど! わかりましたわ! 私は咄嗟に嘘をつきましたのーー
「む⋯⋯瑞稀。 もしかして、私の服装に不満があるのですね」
「服装? ⋯⋯あれ?」
そう言われて、初めて私の服装を確認する瑞稀。
ムゥ。 病院では毎日、おしゃれをしてましたのに! 瑞稀はまったく、見てなかったのですわね!
まあ、今日は瑞稀の退院前に学校に寄ったので、学生服だったのですわ。
ーーえ? 風呂に入ったのにって? なんでそんなことがわかりますの! エッチですわね! それは、瑞稀にツッコんでもらうためですわよ!
ほら! 瑞稀が私の格好に、疑問を持ちましてよ!
ここはさらなるアピールのために、この格好に着替えますわ!
「ジャーンですわ!」
「え? 普通に私服じゃん?」
私が着ていたのは一枚の薄いワンピース! まだまだ、寒いですけど、瑞稀のためなら我慢しますわ!
でも、瑞稀は全然嬉しそうじゃありませんですの。
ーーもう、瑞稀のいじわる! せっかく私がドキドキしながら準備したのに、そんな反応はありえませんわ!
いじけた私を、瑞稀が苦笑いでよいしょしてきますの。 ふん! もっと私を褒めてくださいませ!
でも、こうして一日が終わるまで、ずっと貴女と過ごせたことは何よりも幸せでしたわ。
明日もまた、美味しいものを食べて、瑞稀と二人で笑い合えたら嬉しいですわね。
ーーそう。 私たち二人だけで、ですわよ? ジャマハユルサナイ。




