この世界の謎
授業が始まったからなのか、校舎裏には不気味な程、沈黙が流れていた。
櫻井さんが私を見つめている。 彼女は、私に答えを求めている。 ーーまた、友達になってくれますか? それに対する私の答えを。
彼女の表情が真剣なのがわかる。 そして、彼女の目は真っ暗なままだけど、しっかり私を見ていた。 その証拠に彼女の目の中には、私の怯えた表情が映り込んでいた。
「瑞稀⋯⋯」
「⋯⋯櫻井さん、ごめんなさい⋯⋯」
「え? ちょっと⋯⋯瑞稀! 私は諦めませんわよ! ⋯⋯だって私にとって貴方は⋯⋯」
私は逃げるように、校舎裏を後にした。 車椅子を置いてきてしまったが、そんなことが気にならないぐらいに、私は動揺していた。
去り際に櫻井さんが、大声で叫んでいるのが聞こえたが、上手く聞き取れなかった。
◇◇◇
トボトボと校舎を歩く私。 足は治っているので辛くはないけど、ずっと車椅子生活だったためか、体が休憩を求めている。
ーーそれにしても。 私はため息を吐く。 その理由は、頼りにしていた逃げ場が、使えなくなってしまったからである。
教室も、そして校舎裏すらも、私の居場所ではないらしい。
そんな私は、まるで導かれるように、保健室の前に辿り着いていた。
この保健室の中には、今川先生がいる。 もしかしたら彼女なら、私の気持ちもわかってくれるかもしれないーー
ささやかな安らぎと期待を求めて、保健室の中へ入る。
「⋯⋯失礼します。 ⋯⋯あの、今川先生⋯⋯え? なんで⋯⋯」
「どうぞ⋯⋯」
そこにいたのは今川先生ではなく、なぜか白衣を羽織ったことねだった。
混乱する頭を押さえながら、私は彼女に話しかけた。
「こと⋯⋯ 川端さん? なんで白衣を羽織っているんですか? ⋯⋯今川先生はどこへ?」
私が質問すると、ことねは複雑な表情を浮かべる。 そして、少し間が空いた後、彼女は答えた。
今川先生は、この世界にはもういないーー
それが、ことねの口から出た時、私の中である仮説が浮上する。
ことねは、もういないと言った。 つまり、この世界に実在はしていたんだ!
私が考察していると、ことねが拗ねた口調で話しだす。
「⋯⋯まったく。 幸子お姉さんは⋯⋯ この世界でやりたかったことが、私への説教だなんて。 おかげで私は足が痛かったわよ⋯⋯」
ことねが今川先生について話している。
ーーちょっと待って! 今、ことねはなんて言ったの?
「ことね! なにか知っているの? この世界はなんなの! どうしたら、私は元の世界に戻れるのよ!」
「⋯⋯瑞稀。 質問が多いわね。 貴方、疲れているんじゃない?」
ことねは、私を持ち上げてベッドに運んだーー
私の真上には、ことねがいる。 これから、なにが起きるのかなぁ?




