見えない心の壁
次の日の朝。 私は櫻井さんの実家にやってきた。 彼女の家は豪邸で、ザ・お金持ちという印象を受ける。
別にここへきたのは、初めてじゃないけど、強い場違い感を覚える。 早く用件を伝えて、ここを去ろう!
それにしても、制服姿でよかったと思う。 あの後もずっと篭って、着替えてないだけなんだけどね。 私は深夜にこっそりと抜け出してきたのだ。 車椅子だから、ここまでくるのが大変だったよ。
和馬さんは、そんな私を見て驚いていたが、私を出迎えてくれた。
そして、客室に通された。 和馬さんはさっきから、不思議そうな表情をしていた。
「⋯⋯美羽はどうした?」
「一人で来ました⋯⋯」
「⋯⋯訳ありか。 どうしたんだい?」
「えっとですね⋯⋯」
私は櫻井さんを、引き取って欲しいと告げた。 すると、和馬さんは渋い顔をする。
「美羽が粗相をしたのか?」
「いいえ。 ⋯⋯ただ、彼女がいづらそうだからです⋯⋯」
「そんなことは⋯⋯まあ、いいか。 君がそう思っているんだな。 わかった、美羽と話し合うよ⋯⋯」
「よろしくお願いします⋯⋯」
私は和馬さんに頭を下げて、豪邸を後にする。
しかし、出口付近に櫻井美羽がいた。 ワンピースの衣装が、屋敷の雰囲気にマッチしていて眩しくて表情が見れなかった。
でも、清々しい表情をしているんだろうなーー
「⋯⋯瑞稀? どうしてこちらへ?」
「和馬さんに用事があって⋯⋯貴方に話したいことがあるって言ってたよ」
「ええと? なにかしら⋯⋯ 行ってきますわね?」
彼女の後ろ姿が、見えなくなるまで見つめる。
ーーさようなら、櫻井さん。
そして、彼女は私の家に帰ってくることはなかった。
突然いなくなった櫻井さんに、お母さんはショックを受けているようだった。
「⋯⋯せっかく、食卓が賑やかになったのに。 お父さんは仕事で帰ってこないし、寂しくなったわね、瑞稀? それにしても私たち、二人だけね⋯⋯」
「お母さん酷いよ! 僕もいるよ?」
お母さんの発言に弟が反論した。 私も、弟に同調しようーー
「そうだよお母さん! ⋯⋯そもそも、櫻井さんがいること自体がおかしかったんだ! これで元通り⋯⋯ そうでしょう?」
「そうだそうだ!」
「瑞稀⋯⋯その通りね」
私と弟が説得すると、お母さんは悲しい表情で頷いた。 まったく。 弟をいない者扱いするなんて、酷い話だよ!
そして、登校日。 私は教室の入り口から一人、中を覗いていた。
ことねと彩乃とひとみ、そして櫻井さんが嬉しそうに、優勝カップを持っていた。
「ふふ。 私は最強ね⋯⋯生徒会長になるわ!」
「ちょっと、ことね! みんなで掴んだ勝利でしょう!」
「ことねいい笑顔。 美羽も笑って! アタイの写真スキルを見せてやるぜ!」
そんな四人を筆頭に、盛り上がっているクラスメイトたち。
私とクラスメイトとの間に見えない壁を感じる。 教室の入り口が、見えない壁で塞がれていて、私はそこから拒絶されているようだーー
胸が痛い。 私は蹲りたい気持ちを抑えて、車椅子を漕いでいく。
私はまた逃げ出したのだったーー
「⋯⋯⋯⋯瑞稀」
「どうしたの、美羽?」
「ワタクシハ、ヨウジガデキマシテヨ⋯⋯」




