すれ違う瑞稀と美羽
体育大会は続いていく。 特に、舞香と凛が仲良く借り者競走をしていたのが印象的だったね。
同時にゴールした時に、お題を発表してもらうんだけど、それが『これから、友達になりたい人』だったのがよかったな~ お互いに同じお題だったらしくて、お互いに顔を赤らめていたっけ。
うんうん、青春っていいよね。 私がそんなことを考えていると、放送席に美羽がやってきた。 彼女は手に大きなバッグを持っている。
「瑞稀! ご飯を食べましょう! もう私、お腹と背中がくっつきましてよ!」
美羽はそういうと、バッグからお弁当を取り出して並べ始める。
ちなみに、さっきまで横にいたひとみは、ことねに抱えられてどこかへ行ってしまった。 ことねがひとみを抱き寄せながら運ぶ姿は、ペットを抱えて散歩に行くようだったね。 ひとみは赤面してたけど、嬉しそうだったしーー
そんなことを考えていると、視界に美羽が映った。 彼女は私のことを見ていた。
ーーだけど、その瞳には光がなかった。 ロボットみたいに感情がない顔で私を見ている美羽。
私は怖くなった。 もしかして、美羽は私と一緒にいるのが嫌なのかな?
ーーはは、そうだよね。 そもそも、私みたいな根暗と一緒にいるなんておかしな話なんだ。
私が一方的に美羽に構っていただけ。 本当の彼女は、私になんて興味がないんだ。 今だってそう、家出娘を拾ったとかいう『設定』で私如きと一緒にいるんだ。
ーー私は美羽のそばにいる資格がない、今回のことではっきりとわかったよ。
ありがとう、世界。 私に気づかせてくれてーー
「ちょっと、瑞稀! 私の話を聞いてますの?」
「⋯⋯うん? どうしたのかな櫻井?」
「櫻井? え? 瑞稀、どうして、ですの⋯⋯こんなの、私は望んでないですわよ!」
櫻井はそう言うと、どこかへ駆け出していった。 残されたのは、私の分のお弁当と空になった櫻井の弁当だけだった。
そして始まった、昼の部。 私は気合いを入れるために、マイクに向かって声援をかけた。
「みんな頑張れ~! 声出してこ! エイ、エイ、エイ」
「そこは、エイじゃなくて、オーだろうがよ!」
ひとみが机に膝をつきながら、私にツッコミを入れる。
そんな中、開催された競技は騎馬戦だった。 しかし、ウチの代表のクラスの騎馬がおかしいーー
ひとみも訝しげに、その騎馬? を見ていた。
「ことねさ⋯⋯えっと? こりゃ、騎馬じゃなくておんぶだろ!」
「横の二人は、邪魔だから置いてきたの」
ことねの説明に、納得がいかないひとみ。
「いやいや、騎馬戦ってそういう競技だから⋯⋯」
「ひとみ? ⋯⋯なにを言ってるのかしら? 私がルールなんだけど?」
「立派な騎馬だ! 素晴らしい! 文句つけようがない!」
ひとみは簡単に寝返ってしまった。 私はことねの下を見る。
「これに勝って⋯⋯にミウミウ偉いって言ってもらうのだわ⋯⋯」
ことねの下には、なにかをぶつぶつ呟いている櫻井がいた。 彼女はなぜか、気合いが入った様子でことねを担いでいる。
ーーやっぱり、そうなんだ。 櫻井はことねと一緒にいた方が嬉しんだね。
胸の奥がズキズキする。 彼女の笑顔を見るたびに、私は気が狂いそうになる。
ーーもしかして、嫉妬しているのかな?
結果は無双状態。 ことねがとったハチマキを、会場に見せびらかす。
一方、櫻井はこちらへやってきた。 私は司会者として、彼女にインタビューする。
「⋯⋯素晴らしい活躍でしたね。 櫻井さん」
「櫻井さん? ⋯⋯櫻井さん、櫻井さん」
櫻井さんは自分の名前を呟き続けながら、みんなの所に戻っていった。
ーーこれでいいんだ。 私はなにも間違ってない。
それからのことは覚えていない。 気がつくと私は、自分の部屋で涙を流していた。
「⋯⋯あれ? ここは? 体育大会は?」
「お姉ちゃん! 体育大会は終わったよ? そしたら、お姉ちゃんが疲れたって寝転んでたよ! ⋯⋯お姉ちゃん?」
弟を抱きしめる。 胸が痛む思いを隠しながらーー




