今年の体育大会が始まる
数日後、理想学園の体育大会が開催されたのだが、規模がとてもデカくなっていた。 保護者の方だけではなく、一般の住民まで参加しているのだ。
これではまるで、地方祭だ。 私が計画して、開催する予定だった内容よりも、はるかに大規模である。
そんな一大イベントの体育大会の司会に、私が抜擢されたのである。 そんな私の横には解説役として、ひとみが座っていた。
今年彼女は、私と同じクラスになったのだが、私のことを忘れてしまっていた。 彼女はことねの家に住んでいるらしい。 いわば前の世界でのミウミウと同じ立場である。
そんなひとみは、私の隣でテーブルに足を乗せ、ふんぞり返っていた。
「さあ、始まりました。 理想学園伝統行事! 体育大会です。 司会は私、倉石瑞稀がお送りします! 相方は、我がクラスの応援マスコットの吉澤ひとみ」
「はわわ。 なぜ私がここにいるのか、理解できないですぅ」
態度は図々しいのに、声だけはぶりっ子するなんて、吉澤ひとみ、なんて恐ろしい子。 私、こまっちゃう!
「ことねの指示でしょう? ちゃんとしないと、怒られますよ?」
「⋯⋯なんだと。 ゴホン。 えっと、この体育大会の習わしは⋯⋯」
私が言うはずだった内容を、代わりに読んでくれるひとみ。 チョロくて助かるわ!
そんなひとみは、全文を読んだ後マイクの音声を切って、愚痴を言い始めた。
「どう言うことですか? ⋯⋯そもそも私は競技に参加希望だったんです! それがなぜここにいることになって、どの競技にも出場できないんですか!」
「今年の優勝はどのクラスになるのか! 注目です!」
「無視ですか⋯⋯ チッ。 伊達メガネ女め⋯⋯」
「⋯⋯」
伊達メガネ。 それは、私の知られたくない秘密のひとつだ。
私はいつもメガネをかけている。 表向きの理由は、メガネをかけると知的に見えると思ったから。 高校生でイメチェンデビューのために買ったのだ。
でも、本当の理由はーー
そんなことを考えていると、ひとみが私の顔を見て、ケラケラと笑い出した。
そういえば前の世界では、仲良くなったのは文化祭の時だったっけ。 あの時は彩乃のことを心配しすぎて、必死だったよね。 それでいつの間にか、本音で話してくれるようになったんだっけ?
ひとみはなぜ、私なんかに話しかけてくれるようになったのかな?
そしてまた、同じ関係になれるのかな?
私は高校生活でやりたいことリストに、こんなことを書いた。
78、クラス替え後に友達を作る
これは、私がこの学校には、クラス替えはないと知る前に書いたことだ。
担任の先生が最初のホームルームの時に「今日から三年間、同じクラスだからよろしく!」なんて言うから驚いたのを覚えている。
まったく、矛盾しているね。 クラス替えの存在しない学校で、進級してからクラスメイトになる? そんなご都合主義あるのかな?
そこまで考えて、自嘲する。 だったら私は、転校生じゃないかとーー




