パパ! ママ! 引きこもりをおやめくださいまし! ーー櫻井美羽視点
彩乃のメイド騒動が終わった後、私は実家に戻って来ましたの。
ーーだって、せっかくママが近くにいるんですもの! 少しでも長くふれあいたいですわよ。
そう思って本宅に入ると、我が家の執事やメイドたちが困った表情をしていましたの。
一体どうしたのかしら?
「ああ! 美羽お嬢様⋯⋯ お帰りなさいませ」
「ごきげんようですわ。 ふふ。 みなさん困り顔ですわね? パパはママにこってり怒られましたの?」
「それが⋯⋯」
「二人とも地下に閉じこもってしまったんです⋯⋯」
「⋯⋯なんですって?」
みなさんの話を聞いた私は、すぐに地下室へ向かいましてよ! ママってば! パパを説得するんじゃなかったのかしら? これでは、ミイラ取りがミイラですわよ。
私は地下室のドアを思いっきり叩きましたの。 すると、弱々しいパパの声が聞こえてきましたわ。
「⋯⋯またか。 ⋯⋯もう、ほっといてくれ。 娘不孝の父親なんて、生きている価値ないんだ⋯⋯」
「同じく母もです。 シクシク」
唖然とする私を尻目に、パパは懺悔を続けますの。
「あの時の俺はどうかしてた。 いつも美羽のことを思っていたはずなのに⋯⋯気付けば自分の保身のために行動していた。 ⋯⋯もし、過去に戻れるなら⋯⋯あの日の俺をぶん殴りたい」
「⋯⋯私もよ。 義明さんをいつもなじっていたけど⋯⋯本当になじられるのは、私の方だったのよ⋯⋯ぴえん」
ーーパパはともかく、ママはさっきからわざとらしいですわ! 絶対にカマトトぶってますわね!
私はもう苛立ちましたの! 大声で二人にアピールするのよ!
「Open up!」
「⋯⋯なんだ? 荒っぽい女だな⋯⋯娘とえらい違いだ⋯⋯」
「あらあら。 品性に欠けるわね⋯⋯教育が必要かしら?」
私が声を上げてアピールしても、メイドと誤解されましたの。 どういう聴力をしていますの?
こうなれば、直接対面ですわ! 私は同行していた執事に、鍵を要求しますの。
ーーしかし、執事は頭を横に振りましたの。
「⋯⋯お嬢様。 この部屋の鍵は奥様がもっておられます⋯⋯」
「なんですって? 密室ですの!」
ママ、どういう思考回路ですの! もしなにかあったら、どうするつもりなのかしら? 私には、ママの意図がつかめませんわ。
私は、ドアの構造を調べます。 頑丈な鉄扉ーー でも、私の力なら蹴破ることは容易ですわね。
「I’m gonna kick this door in! 知りませんわよ!」
「ハハハ。 君馬鹿なのか! 鉄扉だぞ? 破れる訳ないだろう?」
「本当にはしたないこと⋯⋯ 情操教育が必要ね」
カチーンと来ましたわ! 私は右足に力を込めて、思いっきりドアを叩きましたの! 叩いた振動が地下を揺らしましたわ。
ドアはペシャンコですわね、脆い鉄扉だことーー
その中から、さっきよりもクリアな声の悲鳴が、聴こえてきましたの。
「⋯⋯なんだ? 地震か! 香織! 俺に捕まってろ!」
「はい! 和馬さん! ⋯⋯ああ、暖かいですわ。 和馬さんの鼓動が私にも伝わります⋯⋯」
「⋯⋯二人とも。 なにイチャイチャしてますの」
私が苛立っていると、二人が幽霊を見たかのような表情で私を見ていますの。
「⋯⋯ああ。 ついに私も耄碌したな。 美羽が見えるぞ」
「ええ。 私にも、はっきり見えますわ⋯⋯まるで本人みたい」
「みたいじゃなくて、本人ですわよ! 引きこもりたち!」
『出た!』
地下室から漏れた絶叫は、上階のメイドたちにも響いたそうですわーー




