ピンチはお約束 ーー田中幸子視点
ノリの悪い黒装束の妨害を超え、ついに山頂に到着しましたね。 それにしても、すごいですね。 空気が重たく感じますね。 なんだか本当に出てきそうな雰囲気ですよーー
「これから悪霊の封印を解くぞ!」
「⋯⋯私たちの戦いが始まるのね⋯⋯」
「ことねには、指一本さえ、触れさせないからな!」
「わぁ、凄い! ⋯⋯なんか、これから戦いが始まりそうな雰囲気がめちゃくちゃする! 燃えてきた!」
健太は祠に張り付いていた、お札を剥がす。 なるほど、その札が悪霊を封印していたんですか。 だとしたら、危なかったですね。 今にも風で札が飛びそうでしたから。
すると、祠の中から黒い霧が出て来て、それらが一箇所に集まって来た。
見ると濃い霧が影をつくっていた。
『⋯⋯よくぞ拙者の封印を解いてくれたな。 お主らには褒美をやろう』
「褒美? 残念だが、俺たちにはいらねぇ。 ⋯⋯そうだな、敢えて言うなら、お前を消滅させることが俺たちの褒美だ!」
『⋯⋯なんだと? 雑魚無勢が、拙者を倒す?』
「そうよ! アンタを倒して、私はこの世界の役割から解放されるのよ!」
『ほう。 ピンク髪のお前、とても良い匂いがするな⋯⋯あの姫と同等ぐらいに』
「ことねには、毛一本触れさせないからな!」
『ハハハ。 良かろう、お前たちのその心を絶望に染め、魂ごと喰らい尽くしてくれる!』
霧が突風のように吹きつけて、私たちに襲いかかってきた。
「邪悪退散。 サイコガン! ここは、お前の場所ではない! 消え去れ!」
『ハハハ、甘いわ! そんな豆鉄砲食らった所で痒いだけよ!』
「くそ! なんだコイツ、怨念が強すぎる。 やはり本気を出すしか方法はないな⋯⋯」
健太が技名を叫びながら、霧に向かって霊気を飛ばす。 スゴ! 健太ってそんなこと出来るのですか!
「すごいよ健太! 映えてるね~」
『サッチー それどころじゃないと思いますよ⋯⋯』
たしかにね。 高坂は、背中に背負っていた刀を取り出した。
「健太さん! 俺に任せてください! 奥義! 十文字斬り!」
鋭い剣捌きで、真空波が出来ているぞ!
「さらに、秘技・乱れ打ち⋯⋯」
「格好いい! やったか?」
『⋯⋯サッチー わざと言ってますね』
『おい、おい。 どこを攻撃しているんだ? ああ、素振りの練習か』
「なんだと! 駄目だ、刀じゃ悪霊に擦りもしないのか⋯⋯やはりことねの霊を借りて、刀に乗せなければならないな。 よし、ことねの声が聞こえてきたぞ⋯⋯」
高坂が空に向かって、なにかを叫んでますね。 霊気が欲しいなら、健太からもらえばいいんじゃないですかね?
「私が、やらなきゃ! 絶対に負けるものか! 私は主人公、桐原彩乃! 行くわよ悪霊、かかってきなさい!」
彩乃! 彼女はなにか、特殊な技があるんですか?
「喰らいなさい! 彩乃パーンチ!」
彩乃の素振りが炸裂する?
『お嬢ちゃんは何やってるんだ? ⋯⋯攻撃? いやいや、子供ごっこでござるか?』
「なんですって! 私の渾身のパンチが、子供の遊び? ⋯⋯やっぱり、覚醒しないと、疼くわ、私の右腕が! ⋯⋯これが私の真の力?」
『あの? なんで、この三人は戦闘中に俯いて、ぶつぶつ呟いているんですか? 危なくないでしょうか?』
「⋯⋯エタナ、ロマンがわかっていませんね。 いいですか? 強敵との勝負で苦戦してピンチ! その時に、自分の隠れた実力が開花・覚醒。 それを使って、敵を撃破する。 これがバトルのお約束なんです。 ⋯⋯現に あれ? 三人の様子⋯⋯なんかおかしくないですか?」
ーー変な霧が、三人をおおっている。 その中で三人はそれぞれ、いつの間にか気絶しているようだった。
これってピンチじゃなくて、敗北?




