瑞稀の危機 ーー田中幸子視点
『サッチー起きてください⋯⋯』
「なに? エタナ? 今日は珍しく親がいるから、惰眠したいんだけど⋯⋯」
エタナは最近、いつも私のそばにいる。 なぜなのか理由を聞くと、はぐらかしてなにも言わなかったのだが。
『⋯⋯再び、瑞稀の身に危機が訪れています』
「ええ、また? ⋯⋯あの三人組の仕業ですか?」
先日、エタナが呼びかけた時は、瑞稀が他校の学生にボコボコにされるって言ってた。 一緒に聞いていた、吉澤と川端が慌てて、二人のもとに行ったから、無事だったんだよね? でもおかげで、二人の帰宅歓迎会も、流れてしまったんだよね。 せっかくのサプライズだったのに残念だったな。
『違います。 今回は、悪霊ですね⋯⋯』
「悪霊? まじですか!」
私は興奮する! いよいよ、この物語もバトルフェーズに突入するんですね。
「相手はどんな悪霊ですか? ああ、胸が高鳴ってきました⋯⋯」
『どうやら、私を復活させたいようですが、方法を誤解しているようですね。 ⋯⋯私は理想の神なのに、絶望で私を召喚したいと⋯⋯そして、ターゲットに瑞稀を選んだようですね。 封印が解け次第、悪霊は瑞稀に取り憑くでしょう。 そして、瑞稀を絶望に染めて⋯⋯』
エタナから聞こえる声は、どこか悲しそうだ。 あれ? 違うの? 私も絶望や混沌だと思っていたんだけど?
「ところでなぜ瑞稀なんです? 他にもたくさんいるじゃないですか?」
『彼女の存在が不安定だからですね。 以前、彼女の存在が消えかかっていましたよね? あの時は彼女の体調の悪化でしたが⋯⋯』
「⋯⋯つまり、瑞稀の体質? ですか?」
『まあ、そう言うことでいいでしょう⋯⋯』
ーーどうやら、本当の理由は少し違うらしい。 『細かいことは気にするな、貴方は関わるな』と言うことでしょうか?
まあ、いいでしょう。 私がすることに、変更はありませんから。
「疼き始めたな⋯⋯いでよスマートホォン! 映えの画像を今ここに!」
これで悪霊を撮影してバズるぞ!
とりあえず私は、瑞稀の家にやって来た。
「すみません。 田中ですが、瑞稀さんご在宅ですか?」
「いいえ。 あの子なら、川端さんの家に行くと言っていたわ」
「そうですか。 失礼しました⋯⋯」
「あ、待ってください! ⋯⋯その。 ⋯⋯いつも、瑞稀と仲良くしてくれてありがとうございます。 あの子は高校に入る前⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
『大丈夫ですか? サッチー?』
「⋯⋯ええ。 それよりも川端家に着きましたよエタナ」
私はチャイムを鳴らす。 すると、黒猫姿の吉澤がいたーー
「田中幸子ですが、瑞稀はそこにいますか?」
「いませんよ~」
「⋯⋯? そうですか。 ⋯⋯エタナ。 どうしますか? ⋯⋯それにしても黒猫の着ぐるみって。 ぷぷ」
あの猫被りヤンキーっ子が黒猫のコスプレとか。 面白いですね。
お留守番猫ですね。 ーーおかげで少し、気が紛れましたよ。
『振り出しに戻りましたね⋯⋯』
「⋯⋯そもそも、エタナは瑞稀の場所がわからないの?」
『はい。 私にそんな能力はありませんね。 ⋯⋯そのかわり。 瑞稀に害を加える存在の場所はわかります。 あの山の山頂です!』
エタナが示したのは、山頂に荒れ果てた祠がある山だった。




