かわいい黒猫ちゃん ーー吉澤ひとみ視点
「はあ、 やっぱりコタツは気持ちいいね。 でも、なんだか落ち着かないわね。 制服を着てないからかしら?」
神子様が、コタツに入って来た! アタイの背中に神子様の足が!
「⋯⋯うむ。 一人か。 本当に一人なのは初めてだね⋯⋯」
すまない、神子様! いるんだ、コタツの中にヨォ! しかし、神子様はアタイの存在に気づいてないのか、足をクッションのように乗せてきた! ーー絶対にバレているよなぁ? アタイ、動けないんだけど。
「⋯⋯座りの悪いクッションね。 踏みつけたら良くなるかしらね?」
キャー ピンチ! 神子様のお尻が私の背中にーー その時、ピンポンとチャイムが。 助かった!
「まったく。 命乞いしたわね⋯⋯」
「こんにちは。 ことね、寒いね」
「瑞稀⋯⋯だからってズウズウしいわよ」
「ふーん。 あれ? ことね、もしかして嫉妬してない?」
「え。 ⋯⋯なんでそう思ったの?」
「顔が、ムクムクしてるぞ! えい! とてもかわいいな!」
おい、瑞稀! 重たいだろうが! アタイを本当にクッションだと勘違いしてやがる。
「⋯⋯はあ。 本題に入りましょうか。 ⋯⋯貴方、私に聴きたいことがあるんじゃない?」
「⋯⋯うん。 もしかして、なんだけど⋯⋯」
「そうよ。 あの三人組は処分したわ」
瑞稀がグダグダと言ってやがる! ここはアタイの出番だな!
「ケッ。 甘え思考だな~ 瑞稀。世の中な、そんなアマかねえんだよ」
フン。 決まったぜ! 見ろよ、瑞稀がキョトンとしてやがる。
「駄目じゃない。 クッションは⋯⋯大人しくしてないと」
神子様? 足を退けていただけますか? 瑞稀! ドン引きしてないで、アタイを助けてくれ!
「どれどれ? 黒いな。 珍獣かなぁ?」
「瑞稀! テメー」
瑞稀が、コタツの中で、アタイの黒装束を脱がせてくる。 神子様のアシストのせいで、アタイはされるままだーー
おかげで私はただの『吉澤ひとみ』になってしまった。
「はわわ! 吉澤ひとみさんです~」
「これは驚きだわ! いつからいたのかしら?」
アタイは、コタツへ逃げた。 そうこうしている内に、美羽が来た。
「ただいまですわ! ⋯⋯あれ? ことねだけですわ⋯⋯変ですわね? 瑞稀とひとみんの靴があるのに⋯⋯」
「おかえり、美羽。 瑞稀はここにいるよ」
「どうも! コタツムリです!」
「はぁ! 瑞稀! ひとの家で何をしていらっしゃるの! 理解出来ませんわ!」
「えー。 いいじゃん。 ミウミウも一緒にやろうよ、コタツムリ!」
二人が揉めている内に、アタイはコタツから脱出。
「⋯⋯ずいぶんと乱暴な女だな。 ことねの意向に意見を述べるなんて⋯⋯」
美羽と瑞稀をとっちめてヤロウと思ったその時ーー
「ひとみ、汗だくね、不潔だわ⋯⋯こっちにきなさい」
「えっ! ことね。 アタイをどこへ連れていくつもりですか⋯⋯」
神子様! そこは風呂場ですよね?
「ほら、慌てないの。 汗で服が張り付いているから⋯⋯手をあげて」
「はい! かしこまりました」
アタイは、されるがままである。
そして、お風呂の中へドボン! さらに神子様は服を着たまま一緒に入って来た。どうやら、体を洗ってくれるらしいーー
「ことねは服を着たままですか?」
「あら? ひとみは私と一緒がいいの?⋯⋯」
「いえ、違います! 本当ですってば~」
慌ててしまい、お湯があたりに飛び散る。
「きゃあ!⋯⋯もう、お湯をかけないでよ、濡れちゃったじゃない」
神子様のパーカーやジーンズが少し濡れてしまった。
「はわわわ⋯⋯」
「こんなサービス、湊にもしてないのに、困った子ね⋯⋯ああ、猫みたいでかわいい。 はっ、そうよ! 貴方にピッタリな服があるの。 風呂上がりにはそれを着てね? これは神子様の命令だから⋯⋯」
「承知いたしました」
神子様は、そう言うと慌てて出て行った。 しばらくのんびり入浴した後、アタイが出ると家には、誰もいなかったが、書き置きと黒猫のフードまで付いた寝巻きが置かれていた。 それとことね様のセーターとジーンズ、そして下着までーー
『服を乾かしておいてね。 帰ったら着るわ』
さっきまで、神子様が着ていた服! ⋯⋯いや駄目だ吉澤ひとみ。 冷静になるんだ! 大人しく神子様の指示通りに行動するんだ!
アタイは興奮する手を抑えて、自分の服と神子様の服を干すのであったーー
その時、チャイムが鳴った。 渋々出るアタイ。
「田中幸子ですが、瑞稀はそこにいますか?」
「いませんよ~」
「⋯⋯? そうですか。 ⋯⋯エタナ。 どうしますか? ⋯⋯それにしてもひとみ黒猫の着ぐるみって。 ぷぷ」
途中で途切れたが、なんだったんだろうか? ふぁ、少し寝よう。 ずっと、スタンバイしてて、眠いしーー
しばらく微睡んでいると、神子様の声が! アタイ、そんなに寝てたのか。
神子様は、さっきアタイが干した服を着ていた。
ーーということは下着も? アタイは神子様を伺います。
「よいしょっと。 やっと一段落ね」
「ことね、ヒヤヒヤしましたわ」
「ことね? 趣味の制服がしばらく着れないね? 残念だね?」
「なによ瑞稀、ニヤニヤして。 アンタも私と同じ目にあったんでしょ?」
おお、神子様の下着が見えた! 干した奴だ間違いない!
ゴホン。 アタイは平静を装って、コタツから出る。
「⋯⋯寝過ぎたぜ。 みんな帰って来たのか? おい、瑞稀! 田中先輩に会ったか? 探してたぞ」
「え? 会ってないけど? ぷぷ黒猫!」
「まあ! 大きな黒猫ですこと」
「湊の許可取れるかしら? ⋯⋯エッチはほどほどにね? かわいいネコちゃん?」
「⋯⋯ニャー」
三人がアタイを見てくすくす笑ってる。 なんだよ、ニャー。




