人の哀れさに乾杯!
「⋯⋯ってゆうかさ、これって犯罪じゃね」
「そうだし。 いくらあの女でも、これはまずいでしょ」
「きっと、新聞の一面に載るね。 神子様、逮捕って」
『ウケる~』
彼女たちの様子が見える、モニター室で当事者が揃う中、ことねが言う。
「⋯⋯ねえ、こんなのと話す価値あるのかしら?」
「ことね様。 それは、櫻井美羽が決めることだ⋯⋯」
「はいはい。 秀五郎さんには逆らわないわよ」
この場で、まともに話せる大人は、秀五郎さんだけのようだ。 秀五郎さんは先程、用事が終わりここへ来たらしい。
一方、和馬さんは自室で自主軟禁をしていた。 「私は美羽に会わせる顔がないと」言っているそうだ。 ミウミウを家出に追い込んだことを、相当悔やんでいるようだーー
ミウミウはと言うと、マイクの前に立っていた。
「⋯⋯えっと、こんにちはです⋯⋯ 体調は大丈夫ですか?」
ミウミウが話しかけると、三人が顔を見合わせる。
「こちらのマイクに声をかけてください。 ⋯⋯マイクの近くにいる時だけ、声が聞こえますから⋯⋯」
ーー嘘である。 会話内容は全部、三人の両親にまで丸聞こえだった。 すると、三人はニタニタ表情を歪める。 ーーどうしたのかな?
「櫻井さん! 私たちは反省しています!」『ハハハハハ』
「貴方にしたことを後悔しています」『してませ~ん』
「申し訳ございませんでした!」『ウケる~』
マイクに向かって、誠心誠意謝っている三人。 ーー反省している。 この声だけを聞けば、私はそう思っただろう。 しかし、一人が謝罪の言葉を発する最中、他の二人は嘲笑っている。 その態度に苛立ちが募る。
それは私だけではないようで、三人の両親は相当に落ち込んでいるし、秀五郎さんも、頭を抱える始末。
しかし、ミウミウだけは真剣な表情で画面を見ていた。
「私たちは、後悔しています!」 『出せよ』
「とっても反省しています!」 『してないけどね』
「だから出してください!」 『そして、ぶん殴ってやる』
「わかりました。 出します。 ⋯⋯でも、その前に仲直りの乾杯しましょう。 今、ジュースをそちらへ送ります⋯⋯」
ミウミウがカバンから、ジュースを取り出して、部屋に送る。 三人は嬉々としてそれを受け取るがーー あのジュースは!
「⋯⋯これが、私の答えですわ」
「⋯⋯? これはなに? ジュースかしら?」
興味を持ったことねが、美羽の手に持っているジュースを調べる。 そして、ミウミウから一本奪った。
「⋯⋯中身が気になるわね。 一本貰おうかしら?」
「ことね! 開けたら駄目だよ! フリじゃないからね」
「⋯⋯へえ。 すごく気になるじゃない。 どんな飲み物なのかしら?」
「ことね、絶対に開けたら駄目だから! ⋯⋯本当に絶対⋯⋯」
そう言いながらも、私は後退りする。 秀五郎さんも、ジュースの正体に気づいたのか、ことねの周りから離れる。
ミウミウはニコニコしながら、ジュースの蓋に手をかける。
「お、気が利くじゃん櫻井!」
「私たち誤解してたわ~」
「じゃあ遠慮なく~」
向こうも嬉しそうだ。
『せ〜の 乾杯!』
向こう側のモニターでは、カラフルなジュース塗れの三人が固まっている。
「わ、わわ! なによこれ! ずぶ濡れじゃない⋯⋯」
「あれ? ことね、なんでペイントジュースを飲んでいるのかしら?」
「ペイント⋯⋯なるほどね⋯⋯」
哀れ、せっかくの趣味の制服姿を、汚してしまった! 一方ミウミウは、普通のジュースを美味しそうに飲んでいた。
年明けデビュー! おめでとう、ことね!




