冬のひと時 ーー川端ことね視点
朝の住宅街でいつも通り、朝のジョギングをする私。 まだ、暗い道を走っていた。 ーー完全に習慣化してるわね。 もう、あの子はいないのに。
私は、走るのは好きではない。 今の時期は寒いから余計にそう思っている。
でも、私はどうしても行きたい理由があった。
「ニャー」 「ニャオ」
「かわいいね、猫ちゃん」
私は、道中にゴロゴロしていた猫たちに挨拶をする。 冬の寒い時期なのに、猫たちは今日もここにいる。 まるで、私のことを待っていたかのようにーー
「⋯⋯それにしても冷えるなぁ」
「ニャ、ニャ」
「うん? ⋯⋯暖めてくれるの? ありがとう」
私は、猫を優しく抱きしめた。 私は猫が大好きなのだ、ああこのまま家に連れ帰りたいなーー
「⋯⋯でも、湊が怒るわね⋯⋯。 ごめんね、かわいい猫ちゃん」
「ニャー⋯⋯」
私は渋々、ネコと別れるのでした。
「はあ、 やっぱりコタツは気持ちいいわね」
ジョギングが終わり、シャワーを浴びた後、ことねは、みかんとマグカップを持って、のんびりとコタツに足を入れた。
服装は暖かいラフな格好ーー 本当は制服が落ち着くので着たいのだが、湊や美羽が不審がるのでいつものパーカーにセーターとジーンズ姿だ。 以前、『私』にこのことを言ったら『ああ、小説の川端ことねは理想学園の制服姿しか、描写ないからね。 ⋯⋯と言うことは、私服姿はレアってこと? 萌えてきた!』とか言って、私にパンツルックばかり着させるんだからーー
しかし、今は『私』や美羽も、そして湊もいない。
「⋯⋯うむ。 一人か。 本当に一人なのは初めてだね⋯⋯」
ーーおや? 足元のクッションがビクッとしたわね? 今日、新調したばかりのクッションだから、座りが悪いわね~ 強く踏めばよくなるかしら?
私は、居なくなってしまった『私』のことを思い出す。
『なに? 湊が出掛けているのが嫌? ずっと側にいないと嫌? 別の女の所に行ってるに決まってる? むかつく? ⋯⋯もう、駄目だよ! 束縛系は嫌われるよ! それよりもホラ! 本妻の余裕だよ! 余裕のある態度で湊にアピールしよ!』
「本妻の余裕ね⋯⋯」
『私』がいたら言いそうな言葉を、考えて微笑む。 すると、チャイムの音が。 訪問者は瑞稀だった。
「こんにちは。 ことね、寒いね」
「瑞稀⋯⋯だからってズウズウしいわよ」
来て早々に、瑞稀は吸い込まれるようにコタツに入ります。 黒のクッションがビクッとしているわ。
「あれ? ミウミウはともかく、ことねの旦那様は?」
「⋯⋯うん。 今日は大切なことがあるそうなの⋯⋯ 私は湊を大人しく待つわ」
私は、『私』が言っていたことを思い出しながら言いました。
私には、理解出来ない話だったんだけど、『私』はいつもあの山頂の祠のことを気にしていた。 今日そこで彩乃とそして健太でなにかをするらしいーー
「ふーん。 あれ? ことね、もしかして嫉妬してない?」
「え。 ⋯⋯なんでそう思ったの?」
「顔が、ムクムクしてるぞ! えい! とてもかわいいな!」
瑞稀は、私の頬を触ってきた。 さらに顔をムクムクさせる私に、ニコニコ微笑む瑞稀。 ムカつくわね。
「⋯⋯はあ。 本題に入りましょうか。 ⋯⋯貴方、私に訊きたいことがあるんじゃない?」
「⋯⋯うん。 もしかして、なんだけど⋯⋯」
「そうよ。 あの三人組は処分したわ」
私がそう言うと、さっきまでの笑顔を曇らせる瑞稀。
「あの三人が通っていた、学校の校長先生から連絡があったんだ。 置き手紙だけを残して、行方不明なんだって。 その置き手紙には『櫻井美羽さんへの罪を生涯背負って生きていきます』とだけ書いてあったらしい。 ことねが書かせたの? 気持ちはわかるけど、やりすぎだよ⋯⋯」
「ケッ。 甘え思考だな~ 瑞稀」
すると、突然コタツの中から、声がーー
「世の中な、そんなアマかねえんだよ」
現れたのは、黒装束姿の吉澤ひとみだったわ。
ああ、クッションが動いちゃった。 残念ーー




