打ち上げ中
大会終了後、私たちは大会の会場で、打ち上げパーティをしていた。
「ミウミウ、優勝おめでとう!」
「ありがとうですわ!」
ミウミウが優勝トロフィーを持ちながら、喜んでいる。 そしてまた、ペイントジュースで乾杯している。 当然汚れてもいい服でだ。
私はあの歓迎会の後、慌てて染み抜きをして、なんとか汚れは取れたものの、その後から、本番に至るまで、パーカーにズボン姿。 つまり、ラフな私服姿で過ごすことになった。 ああ、秘書制服持ってくればよかったな。
ーーそれにしても、あの参加者たちは何者だったんだろ? と言うかそもそも、この店のオーナーさんはどこにいるのかな? 大会なのに、姿を見せないなんて、おかしい。
不審に思った私は、香織さんに聴いてみることにした。
「香織さん。 お疲れ様です」
「お疲れ様、瑞稀ちゃん。 負けちゃったわ~ 今年も、私が優勝だと思っていたのに⋯⋯カツカレーを奇数個、用意した運営が悪いのよ、きっと!」
「ハハハ。 その運営の代表者は、どこにいるんですか?」
「ああ。 ミス・ファナイのこと? ⋯⋯彼女は今頃、他の参加者と会話中よ」
「⋯⋯他の参加者って⋯⋯どこに行ったんですか?」
「ふふ。 ひょっとして、異世界かもね?」
香織さんが、私を見ながら怪しげに微笑む。 エタナに会ってから、大概なことには慣れたつもりでいたけど、この世界は想像以上に謎めいているらしいーー
ボーっとしていると、ゆいゆいが近づいて来た。
「アンタ。 なに考え込んでいるのよ?」
「だったら、この世界って、やっぱり⋯⋯」
「煮え切らない態度ね。 それって重要? ⋯⋯少なくとも、今日考えることじゃないわよ」
「⋯⋯たしかに、そうかも」
「それよりも、アンタ! なんでそんな格好なの?」
「制服がクリーニング中なんですよ。 ⋯⋯ずっと、制服姿で過ごそうとしてたから、この服しかなくて⋯⋯」
「ええ? 瑞稀、でしたら、あの大量の荷物はなんだったんですの?」
ミウミウが驚いた様子で、私に話し掛けてくる。
「あれは、中継用の機材だよ。 置いて帰っていいんだって⋯⋯後はお土産だね」
「そうでしたの、納得ですわ」
「うぅ。 ⋯⋯なんだか、恥ずかしくなって来たよ。 私の姿ってダサくなかった?」
「終わってから緊張しても、遅いですわ。 馴染んでいてよかったですわね」
「みんなおしゃれしてるじゃん! 私だけ私服だし⋯⋯」
「まあ! 瑞稀は間接的に私を、馬鹿にしてますわね!」
そう言うと、ミウミウは前回と今回でいい感じに染まった、服を見回した。 そこへ、明里がやって来た。
「美羽ちゃんそんなことないわよ。 瑞稀がデリカシーがないだけだから」
「な! これはミウミウのことを言った訳じゃないから! だってミウミウは何を着ても綺麗だし⋯⋯」
「ムウ。 ぷくぷく」
私が慌てて、弁解するとミウミウが口を膨らませる。
「アンタも一緒に、ペイントされて来たら?」
「もう、ペイントジュースはこりごりだよ! それにこの服が汚れたら、着る服がないの!」
「まあ! でしたら、私が服を⋯⋯あら? 瑞稀はどちらへ?」
「瑞稀なら逃げたわよ」
「まあ、しょうがないですわね⋯⋯」
私は逃げるように、会場を出た。
外はもう、夜だった。 私はまた、あの場所に来ていた。 夜空を見上げて、私は考えた。
「これでミウミウは安心だよね⋯⋯」
過程や内容はどうあれ、ミウミウは自信がついた。 後はアイツらに会うだけだね。 ーーもう、彼女は大丈夫。
そう、私がいなくても。 いや違う。 むしろ私がいたらーー
「⋯⋯ああ、なんだろこの気持ち。 寂しいのかな? まさか、ミウミウに嫉妬している? そんな訳ないよね? だって、私にとってミウミウは⋯⋯」
「おやおや、今日は先客がいたようじゃな」
私は驚きながら、声がした方を見ると、黒いローブを羽織った人物がいた。
「オホホ。 驚きすぎじゃ。 ⋯⋯儂の名前はミス・ファナイ。 なるほど、お主の名前は倉石瑞稀じゃな」
「⋯⋯⋯なんで、私の名前を?」
「さて、なんでじゃろな? ⋯⋯ふむ。 これはこれは、驚きじゃの? 台本が書き換えられておる。 ⋯⋯起点は、その本か⋯⋯この世界に異常をもたらすとは⋯⋯面白い変数じゃの。 実に興味深い」
えっと。 香織さんから私のことを聴いたのかな? それにしてもさっきから、ぶつぶつ呟いていて怖い。 私は怖くて、震えていた。 さっきから、本能が彼女の話を聞いてはいけないと、伝えてくる。
ーー逃げたい。 逃げなきゃ!
「えっと⋯⋯私、失礼しますね」
「おっと! オホホ。 これはこれは、怖がらせてしまったかの? もっと語らいたい気持ちがあるのじゃが、仕方ないのう。 では、一言だけ言わせてもらうぞ」
彼女は去り際に、まるで明日の天気のように言った。
ーー君は間もなく消えるよ。




