異国の地で逃げ場のない瑞稀
たくさんあったご飯がミウミウと香織さんの中に消えた後、二人が仲良く、一息ついていた。
「パア。 ご馳走さまでしたわ、ママ!」
「うふふ。 美羽は相変わらず、たくさん食べるわね」
「ママもたくさん食べてましてよ!」
「あらら、てっきり瑞稀ちゃんが大食い仲間だと思って、作り過ぎたからね」
えっと。 なんかすみません。 仲間と言えば、ミウミウのここでの友達ってどんな人たちだろう?
そう思っていると、ミウミウが立ち上がる。
「さて、そろそろみんなに会いに行きますわ」
「ええ。 あの子たちも、美羽を待っているわよ~」
「まあ! だったら、会いに行きますわよ!」
「気をつけてね〜」
私たちは、荷物を部屋に置いて出掛ける。 おみあげを香織さんと義明さんに渡して、一安心した私は、ミウミウと街へ繰り出した。
ちなみに、ミウミウは私の服装に不満らしい。
「瑞稀⋯⋯ まだ制服ままですの?」
「うん。 それがどうしたの?」
「⋯⋯むう。 私も瑞稀の気持ちはわかりますわ。 知らない環境だと、自分を偽りたくなりますわね。 でも、私がいるんですもの! その心配は無用ですわ!」
「ありがとう。 心強いよ⋯⋯」
ミウミウに、頭を下げる。 私の気持ちをとても理解してくれているね。
そうしみじみ思っていると、目的地の場所に着いたのだが、その場所は廃墟の家だった。 中に入ると、ボロボロに朽ちた部屋の中に、テーブルとイスが並んでいる。 そこに、イカツイ風貌の集団がたむろしていたーー
「ここが、集合場所ですわ。 みんな久しぶりですわ!」
『美羽!』
ミウミウが声をかけると、みんなが一斉に近付いてきた。 そして、ミウミウに話し掛けている。 しかし、私には言葉の意味がわからないーー
私はその様子に疎外感を覚えたのであった。
「プクスクスブ」
ミウミウの笑い声だけしか聞き取れない中ーー突然、みんなが一斉に私を見る。 そして全員が首を傾げた。
怖い。 これがミウミウが経験した気持ちなのかな?
「⋯⋯⋯⋯」
「瑞稀。 悲しい顔をして⋯⋯どうしましたの? みんなが心配していますわよ」
「⋯⋯はは。 私は邪魔みたいだから帰るね⋯⋯」
「え? 瑞稀!」
私は逃げるように、場所を後にした。
「⋯⋯ああ。 私ってなんて、情け無いんだろう⋯⋯」
気がつくと、見晴らしのよい場所に来ていた。 うなだれて、空を見上げると夕方になっていた。
ああ。 また、やってしまった。 この前、頑張ろうって思ったばかりなのに。 立ち上がっては、困難に直面して、すぐ逃げる。 私の悪い癖だ。 違うのはここには逃げ場がないこと。 ここで私は一人ボッチだ。
寂しいよ、怖い! 助けてお母さん、お父さんーー
そう思っていると、電話が鳴った。 お母さんからだった。 私は逸る気持ちを抑えて、通話ボタンをタップした。
「もしもし瑞稀? 無事に着いた?」
「うん。 心配してくれてありがとう⋯⋯お母さん」
「⋯⋯どうしたの、なにかあった?」
「えっ。 そんなことないよ⋯⋯」
「そう。 辛かったらいつでも言ってね、遠くにいても話しぐらいなら聞けるわ」
「ありがとう、お母さん」
しばらく、話した後、電話を切る。 本当は、もっと話したかったが、別の誰かからも、電話がかかっていたので仕方がない。 履歴を確認すると田中書記だった。
「瑞稀。 そちらの様子はどうですか?」
「空が綺麗だよ。 でも、私の心は置いてけぼりかな⋯⋯」
「見知らぬ土地、違う言語、心の壁。 逃げる場所すらない哀れな小鳥よ」
「⋯⋯私を馬鹿にしているなら切るね」
「あれ? やっぱりそうなの? 今までの瑞稀だったら、そうなっていると思ったけど ⋯⋯ブラックストーン・ウオーターウッドは新拓地で倒れる。 哀れな者よ。 ⋯⋯しかしそれも青春。 一歩進んでは半歩戻る。 しかし、半歩進んだだけでも、たいしたものだ⋯⋯人間いきなりは変わらない⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
「常に精進するのだぞ、瑞稀⋯⋯どう? 私、詩人ぽくない! これからは詩人としてやっていこうかな?」
「⋯⋯サッチーは説法を説くのが上手いね。 そうやって、みんなと仲良くなったんだね」
「瑞稀よ、いい案を思い着いたぞ。 アイデアをノートに書かねば! じゃあ」
突然乱雑に言うお別れと、会話終了の合図。 まったく勝手な先輩だよね。
私は、なんとも言えない気持ちで苦笑いするのだったーー




