暴かれるマッシュの悪意!
暴走魔女として暴れまわっていたメスパーは結果的にはマッシュの最後の一撃が決め手となり、ジャスティスキャッスルの地下牢に投獄された。おそらく……いや、確実にマッシュはメスパーへの最後の一撃を叩き込むチャンスのみを生み出す存在として俺を戦わせたんだろう。それによって、ジャスティスシティー国王の信頼も大いに得てジャスティス騎士団はマッシュの完全な支配下に置かれる事になった。
魔王の魔手であるマッシュの人間社会への介入と暗躍が進む中、それをよしとしない女へ俺は問う。
「……状況は全てマッシュに味方してやがるぜ。これからどうするんだ団長?ここてマッシュを始末しとかないと後戻りは出来ないぜ?」
「貴様の言う通りに動くのは癪だが、やるしかないようだな。この国はこのままだと完全にマッシュのモノになってしまう……故に、ここでマッシュを始末する」
「そうか。なら俺も手伝うぜ。ただ、俺達が暴走魔女からこの国を救ったマッシュを倒す大義名分は無い。だが、やるんだな?」
「当然だ。大義名分などは後から証拠を掴めばいいだけの事。今日憎まれようとも、明日信じてもらえる事をしない人間は人の道を反する外道。私は一人でもやるぞ。この国の為、そしてジャスティス騎士団団長としてのプライドの為に」
「いいねぇ。その覚悟ならやれるな。今日は徹底的に暴れてやろうぜ。そして明日のヒーローになればいいさ」
そして、勇者オーマとジャスティス騎士団団長のマッシュ国取り作戦の罪を暴く為のジャスティスキャッスル内での戦闘が始まる――。
※
「このジャスティスシティーは魔王の魔手・マッシュによって心を汚染されている! 他人に自分の正義を預けてどうするんだ!? 正義を大義とするなら、自分の心で動いて見せろ!」
「この勇者オーマの言う通りだ! 魔王の魔手マッシュはこの国を裏で操る悪! このままだとこのジャスティス騎士団は悪の騎士団に変貌するぞ!? 魔王の傀儡になるのがおかしいと思わないのか!?」
ジャスティスキャッル内部の中央広場にて、勇者魔王とジャスティス騎士団団長が叫び声を上げて自分の思いを訴えている。それはこの平和と正義を大義とするジャスティスシティーの悪であり、その騎士団はそれらを駆逐する為に動かなければならない。ズザザザザッ! と甲冑を着た屈強な兵達が、俺と団長の前に立ちふさがる。
「このジャスティスシティーを救ったのは勇者オーマではなく、マッシュ様だ! 団長は自分の立場を剥奪されたから問題行動を起こそうとしてるのか!?」
「そうだ! マッシュ様が来てからこのミストジャマーに閉ざされた陰気な国は明るくなった! 外の空気を入れるべき時代がこのジャスティスシティーにも来たんだよ団長!」
「新しい時代はマッシュ様が導いてくれる。それは国王とて認めてる事だ。団長……貴女は素晴らしい軍人だったけど、これからはマッシュ様の新しい世界を受け入れないと他の大陸にやられてしまうだろう。ここで反乱を起こすなら団長とて悪人だ!」
俺と団長は兵達に疑われる。
ま、当然だ。
ここまでは予想通りのテンプレだな。
問題はこの戦いの最中にアイツが戻ってこれるかどうかだ。暴走魔女の反応を感じてくれてるなら、この場所はわかるはず……。
それでも! と団長は叫ぶ。
「今は理解しなくていい! 私とこの勇者オーマの行動の正しさは私達が証明してみせる!」
『……』
ジャスティス騎士団の兵はその言葉に言葉を失ってやがるな。自分達の団長が何故こんな事をするのか……? と戸惑ってやがるぜ。だが、今はマッシュの言葉で動かなくちゃならない以上、コイツ等は俺達と戦うしかない。
「……ここまでこのジャスティス騎士団が私に意見を言うとはな。全く、やってられんとはこういう事をいうのかもな。ここまでのシナリオはどうなんだ勇者オーマ?」
「一応はシナリオ通りさ。なぁに。マッシュがテンパとの繋がりがあるなら必ず俺の相棒がその計画の裏を暴いてくれてるぜ。俺達は今はドンチャン騒ぎしてればいいんだよ!」
このままこの中央広場で暴れる事になった!
俺はハンドガンとダイナマイトで対抗する
団長は騎士団の中に突っ込み、容赦無く気絶させる一撃を叩き込んでやがるぜ。
俺はなるたけ自分のエリアに近づけず、団長は敵のエリアに侵入し続けるスタイルだ。ガンマンと剣士の違いだな。
「俺の視界に入ったは死ぬぜ?」
タン!タン!タン!と素早くハンドガンでジャスティス騎士団兵の肩や足の外側を撃ち抜き行動不能にする。団長は剣を旋回させながら数人同時に剣圧で倒し続ける。百人以上のいるこの中央広場で一騎当千の俺達は無双し続ける。だが、この兵達をいくら倒してもラチがあかない。目的はジャスティス騎士団や国王にマッシュが国をのっとろとしている危険人物という事を認識させるのが一番の目的だからな。
そしてその目的の対象者が現れた。
「もうこんな所で暴れても無駄。人心はこのマッシュにあるのだから!」
『……』
突如現れるマッシュに俺と団長は動きが止まる。
確かに状況はまるで変わって無い。
ジャスティス騎士団も相変わらずマッシュを信仰してやがるし、状況は悪化してるだけだ。だけど最高を掴むには最低を味わう必要もあるんだぜ?
「どうするんだ勇者オーマ? このままではジリ貧だぞ? やはりマッシュの今の信頼度は凄まじいようだ……」
「慌てんなよ団長。まだこの戦いの終わりの鐘は鳴ってないぜ?」
ふと、謎の女の声が聞こえた。
「あーら? それはどうかしら?」
『!?』
その場の全員は、そこに現れた黒髪ロングの黒いフードマントを着た美少女に見とれた。
アンダレスビーチで木の葉の津波にさらわれた俺の相棒の魔女が帰還した!
やっと来やがったか……魔女め!
「やーやーやー! みんな大好き天使の美少女! 異世界のスーパーヒロインの魔女だよ★」
「散れ。とりあえずテンパから情報を聞き出せたか? 聞き出せてるなら情報開示だ魔女」
「ちょっとー! この私が登場してるのにその態度は無いでしょ!? みんな私の登場を待ってたんだよ?」
「確かに待ってたさ。お前のテンパから得たマッシュの行動計画の情報をな。無いならお前の登場シーンからカットするぞ?」
「ちょい待ち!話すから出番プリーズ!」
ジャスティスシティー近くにある森の海・アンダレスビーチで金血鬼テンパを追いかけてたら木の葉の津波に呑み込まれ行方不明だった魔女はマッシュのこれからの計画について語り出す。今やジャスティスシティーでの権威と象徴の全てを担うかのような魔王の魔手であるマッシュは、このジャスティスシティーを乗っ取る計画の中で密かに行っている事があった。それは国の地下にダンジョンを作り上げる事――。
「……というのがテンパが力を貸していたマッシュが行おうとしている計画。あのテンパも勇者魔王オーマを倒そうと影ながら暗躍してるからいつかまた戦う事になるだろうね」
「そうだな。だが今はマッシュを倒す。そして、このジャスティスシティーの地下にあるダンジョンを叩き潰す!」
その情報を得た事でジャスティス騎士団団長以下兵隊達は唖然としていた。まさか自国の地下にダンジョンを作られてるなんて思わなかったんだろうな。マッシュがこの国に来てから三カ月ちょいでそこまでこのジャスティスキャッスルは魔王の魔手にやられていたのかと絶望してやがるぜ……。
ま、そんなこんなでマッシュの地下ダンジョンの秘密を魔女がテンパから得た。これで、形成逆転だな!
「これでジャスティス騎士団の連中も、国王でさえもお前の計画を知ったぞマッシュ。いい加減観念して俺の左腕に戻れ。もうお前の味方はいないぞ」
「やってくれるわね……マッシュ! マッシュ! でもこんな簡単に私の計画は終わらないわよ。人心を掌握するには強制的だって出来るんだからね! マッシュ! マッシュ!」
「フン、いつまでその言葉が紡げるかなマッシュ? これでお前の国取り計画は終わりだ。そして、俺の左腕の魔手としてゴミ袋のように使い倒してやるぜ」
俺の背後に魔女と団長。そしてジャスティス騎士団の面々が緑のマッシュルームヘアをグイングイン揺らすマッシュを睨み据える。その結束する俺達にマッシュは歯がゆい顔で人間風情が……と呟いていた。
「やってくれるわね……なら、その地下ダンジョンへ案内してあげるわよ。ドクマッシュダンジョンで勇者オーマの全てを終わらせてあげるわ!」
※
マッシュダンジョンへ来るがいいよ……という言葉で、このジャスティスキャッスルの地下にドクマッシュダンジョンがあるという事を知った。
マッシュは地下ダンジョンをアンダレスビーチにしようという計画で、密かに自分のモンスターを使って建築させていたようだぜ。国王を騙してな。そんなこんなで、逃げたマッシュを追う為に地下のダンジョンに行かなきゃならなくなったな。
「マッシュの地上はあくまで表の顔。本当の仮面はこの地下にあるのか。やってくれるぜマッシュの野郎」
すぐに追撃戦に出る為、俺は暴走がおさまり半魔女に戻るメスパーに聞く。
「メスパー。俺の勇魔金玉はどうした?」
「マッシュが持って行きましたわ。倒された時に奪われたようです」
「そうか。尚更地下に行かなきゃならん用が出来たな」
マッシュが持っている俺のチンコを回収する目的も出来たぜ。
「俺の勇魔金玉から得た魔力をあのマッシュに持ってかれたか……この左手を失ったままになっても魔手は倒すしかないな。もう、アイツの存在は大災害をもたらす。意思のある悪はその存在が許されないんだよ」
拳を叩く俺は、魔女に半魔女メスパーを見た。
二人は無言で俺に微笑む。
「マッシュの野郎……このジャスティスキャッスルの地下に自分のダンジョンを構えてるとはやるじゃねーか。面倒だが奴の誘いに乗ってやるか」
俺はこのままドクマッシュダンジョンへ乗り込み、魔王の魔手であるマッシュを倒す事にした。マッシュが自分のダンジョンを構えている以上、ここでチンチンタラタラしてたら奴のダンジョンがパワーアップしても困るしな。喧嘩や戦いは勢いに乗ったままやるのが吉だ。そして上手く時流に乗れば敵は存在しない。その時流に意識的に乗れるのはこの勇者魔王オーマだ……今は魔王の要素は無いがな。
「さて、ドクマッシュダンジョンにこれから乗り込むぞ。魔女に半魔女メスパー。覚悟はいいな?」
『当然』
「なら行くか。団長、このジャスティスキャッスルの地下に繋がる地下空洞へ案内してくれ。そこからドクマッシュダンジョンへ攻め込む」
スタスタと歩き出す俺達に追いすがるジャスティス騎士団団長は焦った顔をしつつ俺の黒マントを掴む。
「……ちょっと待て! 何故私を連れて行かない?私はジャスティス騎士団団長だ!この国を崩壊に導くマッシュには恨みもある。私もドクマッシュダンジョンへ行くぞ?」
「いや、団長はここでもし敵が現れた時の用心をしつつ警戒しててくれ。マッシュは地上にキノコモンスターを残してるかも知れんからな。城の地下の地下空洞までの案内で結構だ」
「それは出来ない相談だ勇者オーマ。この国の問題はこの国で一番強い私が解決しなければならない問題。ドクマッシュダンジョンへ行くには私の力も役に立つはずだ。だから私も行く」
「……残念ながら少数精鋭で行きたい。それにマッシュに関しては俺の問題だ。この国の安全はマッシュを倒せば全て方がつく。だからここに残れ団長」
「無理だ! 私も行くぞ! 私を弱者とするならば私と剣を交えてみろ勇者オーマ!」
ギラリ……と代々のジャスティス騎士団団長に引き継がれている名刀・ジャスティスソードを抜いた。この国の正義を表すかのようなまばゆい白銀に輝くいいソードだな。ったく、このジャスティス騎士団団長にはやれやれだぜ。そして疲れているのか地面に座り込んでいる魔女は言う。
「ならコウハイ君、団長をテストしてあげたら? 地下へ攻め込むメンバーとしてテストしてあげれば団長も諦めもつくでしょ? もしテストをクリアしたら連れてけばいいだけだし」
「確かにそうだな。話して通じないならテストするしかあるまい。よし、団長。俺がこれからお前をテストしてやる。ドクマッシュダンジョンへ行けるか行けないかは俺の与える試練を乗り越えてからだ」
「あぁ……望む所だ!」
と、意気込むジャスティス騎士団団長と対照的に、すでに緊張感が途切れて……っていつと途切れてるような存在の猫女は猫招きポーズで眠り出していた。
「おいメスパー! すぐに終わるから起きてろよ!ドクマッシュダンジョンを攻略するまでは寝れないからな!」
「寝て……ない……ニャーン……Zzz……」
『寝るな!』
寝てないと言いつつも猫招きポーズのまま完全に寝ているメスパーにこの場の全員は呆れる。だがメスパーはこのぐらいが丁度いい。
そんなこんなでドクマッシュダンジョンに乗り込む前に、ジャスティス騎士団団長をテストする事にした。スッ……と俺は胸のホルスターからハンドガンを引き抜いて構えた。
「ハンドガンの弾丸を今から撃つ。これを回避し続けられたら一緒に来ていい。足手まといは必要無いからな。――行くぞ」
「ハンドガンの弾丸を!? そんな――ぐっ!?」
右太腿に着弾した弾丸は突き抜け、ジワッ……と赤い鮮血が噴き出して来る。恐怖の表情を浮かべる団長に対して、表情を一切変えない俺は言う。
「一発目は右太腿に着弾したな。次は額か心臓を狙う。回避出来なければ死ぬぞ。いいな?」
「……っ! 卑怯だぞ勇者オーマ! こんな話をしてる最中に射撃するなど……!」
「卑怯?敵はそんな事をするのが当たり前だぜ? 敵の弱点を突くのは戦術の基本中の基本。それに俺は今から撃つと伝えたはずだ。危機感があれば回避出来たはず。違うか?」
「……」
「もう一度言うが足手まといは必要無い。少数精鋭じゃないと未知のダンジョンであるドクマッシュダンジョンじゃ通用しないだろ。ハンドガンの弾丸を回避出来るような反応が無いと俺としては足手まといだ。……それでもまだやるか?命懸けだぞ?」
「やるに決まっている! 私はジャスティス騎士団団長! この国の正義を乱した魔王の魔手を許してはおけん! 勇者オーマの弾丸など全て回避してやるさ! 果てしなく撃ち込んで来い! 勝負だ!」
「いいねぇ……その気迫を忘れるなよ。これから撃つ三十発を死に物狂いで回避しろ。全て回避したらお前をドクマッシュダンジョンに乗り込むメンバーに加えてやるさ」
そして、俺がジャスティス騎士団団長のドクマッシュダンジョンへ連れて行くかどうかのテストバトルが始まった。




