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ドクマッシュダンジョン降下作戦開始

バン! バン! バン! と次々に射撃を繰り返す俺はジャスティス騎士団団長の全身を蜂の巣のように撃ち抜いて行く。十発目までは腕や腿など俺の意図した所に着弾し、凄まじい血が吹き出しつつも回避行動をしていた団長だったが、あえて弾丸をくらう覚悟を持ち目が慣れてきたせいか飛び交う死の弾丸をかする程度で回避するようになっていた。おお……とこの十秒足らずで進化するジャスティス騎士団団長に、周囲の騎士団の面々などは驚きと興奮の声を漏らす。


「……」


突っ立ったまま無表情で射撃を繰り返す俺はこのショートカットの男勝りな癖にやけに女というモノを感じさせる不思議な女に対してトリガーを引く速度を上げて対抗する。バン! バン! バン! と無慈悲な射撃は繰り返され、ハタから見ればまるで俺が一人の少女を血ダルマにして楽しんでいるような光景だった。


「……」


「ぐっ……まだまだぁ! ――おおおっ!」


すでに団長は見るも無残な血まみれだ。

ここまで確実な着弾とかすった傷ばかりで完全回避は一度も無い。すでに初めに提示した条件はクリアする事は出来ていない。だが俺は射撃を止める事はしなかった。そして次の一発は最後の三十発目。おそらくあの出血量から見て回避するのは不可能だろう。もう、やめておくか……。


(とも思うがこれはやめられないな。団長の目は死んで無い。これはコッチからやめろとはもう言えない状況だ。この団長の覚悟は本物だ……だが、俺も手加減はしない)


「……はぁ、はぁ……どうした勇者オーマ? 最後の一発を撃って来い。もうハンドガンの速度は見切った。今まで経験して来た剣撃の応用で回避は可能という事に気付いたよ。それに剣と違い直線にしか飛んで来ないからもう恐れる事も無いさ。……最後の一発なんだろ?なら最後はココに撃って来い勇者オーマ!」


その気迫を失わない少女は自分の胸をガードするアーマーを引きちぎり、左胸を露わにした。まるで防御も整わない左胸の奥にあるのは人間の核となる心臓がある。その清らかな薄い乳房を見つめ、俺のハンドガンの銃口はその先端をロックオンした。


『……』


自分達の団長の死の瞬間を見るかもしれないジャスティス騎士団達はこの状況でも止めに入る事は無い。女ながら剣の道を志し、男社会で言葉や暴力による苦渋を飲みつつも国を代表するジャスティス騎士団団長にまで上り詰めた一人の少女の覚悟を決めた勝負に水を差すような無粋な事はしないようだ。


(人が命を賭けた勝負に手を出さないとは、よく訓練された兵だ。ジャスティス騎士団……気に入ったぜ。だが、この勝負は俺が勝つ。あの清らかな乳房を散らすのは、この俺だ)


左胸を晒したまま立ち尽くす疲労困憊、満身創痍のジャスティス騎士団団長はすでにショートカットの髪も汗と血で濡れねずみのようになっており、見るも無残な姿だ。だが、決して右手のこの国の正義を司るジャスティスソードだけは離すことは無い。


「その姿で俺を挑発するとはいい度胸だぜ。お望み通り、最後の一発は心臓に叩き込んでやる。ガンマンを舐めた事を後悔する間も無く即死させてやる。最後の勝負だジャスティス騎士団団長!」


「この命はこの国を乱したマッシュを倒す為に使う! ここで正義のジャスティス騎士団団長である私が負けるはずが無い!」


という掛け声を聞いた瞬間、銃口を定める団長の薄い左胸にハンドガンの弾丸を射出した――と同時にその回転しながら高速で飛ぶ弾丸を自分からくらいに行くように突っ込んで来た!

あり得ない特攻をかけて来る団長は自分自身を俺の弾丸と同じように回転させ、直線に飛ぶ死の飛行物体を回避しやがった! そして右手に浅く握るジャスティスソードを俺の顔面めがけて振り抜いた――。

パッ……と血が飛び、俺の顔を鮮血が濡らす。俺達は互いを見つめ合い、周りの観客は血の涙を流すような俺の顔を見つめていた。


「……よく回避したな団長。そしてそのジャスティスソードで多少、前髪を切ったのか。もう一歩踏み込めば俺の首も飛ばせていたな」


「けども私の反撃は想定外だったろう? 二十九発くらった分、最後は私の意地を見せてやったさ……これがジャスティス騎士団団長である私の意地。この魂をお前に見せた以上、全てを託したぞ勇者オーマ……」


と言い、団長はグラリ……と態勢を崩して倒れた。が、すぐに俺が支える。


「おいおい、これからドクマッシュダンジョンへ乗り込むんだから倒れてる暇は無いぞ?魔法で傷を回復したらすぐに出発する。いいな?」



「!? 私は二十九発もくらったんだぞ!? お前との約束はすでに違えている……正直、私はお前の言う通りマッシュと戦う上で役に立つとは思えない。このテストバトルで自分の器を思い知ったさ……」


「ま、二十九発ヒットしたが最後の一発は完全に回した。俺の想像を超える動きでな。さっきの気迫を認めてジャスティス騎士団団長。お前をドクマッシュダンジョンに乗り込むメンバーとする。異論は認めない。必ずマッシュを倒すぞ」


その俺の微笑みに、瀕死のジャスティス騎士団団長はその心の覚悟で答えた。


「……フン、当然だ。勇者オーマ!」


何故か周囲の観客達から拍手が送られた。ジャスティス騎士団の面々も自分達の団長を褒め称え、何か一つの大団円を迎えたかのような空気になってやがるな。ま、ドクマッシュダンジョンを攻略して、俺が勇者魔王オーマとして魔手を取り戻し完全復活すればこの大団円は本物になる。

そして、血まみれの団長を支える俺は困惑していた。ふと、それに気付く魔女や半魔女はクスクス、ニャーニャーと笑っていやがる……ある意味ラッキーだが辛い状況だぜ。

と、その顔を興奮で赤らめる俺に団長も気付いたようだ。


「どうした勇者オーマ? やけに体温が上がってるぞ? まさか、魔王の力を失って体調でも悪くなる時があるのか? ならば早く休んだ方がいいな」


「そんな事は大丈夫なんだが……ま……その、アレだ」


「? アレとは?」


チラッと俺は真下にある団長の露わになる左胸を見た。汚れなき正義の乳房が俺の目にまぶしい……から言う。


「だからオ、オッパイが見えてる……」


「オッパイ!? ま、まさか貴様ずっと見てたのか! 腕立て伏せ千回して死ね!ジャスティス騎士団達! 貴様等もだ!」


『は、はい! 団長の美しいオッパイ見れて幸せなので一万回します!』


「このアホ共がぁーーっ!」


そして男達はタコ殴りにされた……。

無論、俺もだ。


「……クソッ、自分で胸のアーマー外してオッパイ晒したのに逆ギレとは最悪な女だぜ……だが、あれだけ元気なら大丈夫そうだな。ジャスティス騎士団団長は使える女だ。奴もこのドクマッシュダンジョン突入作戦において、ゴミ袋のように使い倒してやるさ」


そして傷だらけの団長の傷を魔法で手当てしてから、ジャスティスキャッスルの最下層にある地下空洞が広がる大穴にたどり着いた。



※



「ここがジャスティスキャッスル地下空洞か……そしてこの地下空洞の先にドクマッシュダンジョンがある。こりゃ相当な高さだな。現代で言うなら飛行機から地上へ落下するぐらいの距離はありそうだぜ……」


地下に来たのにまるで天空に来たかのような浮遊感がある。凄まじい風がこの場の全員の髪を逆立たせている。ここから落下すれば空気の圧力が凄まじいだろう。全員が上手く降下して着陸するのは至難の技だな……だがやるしかねーな。


ジャスティスシティーの地下はドクマッシュダンジョンへ変貌していた。これは魔王の魔手の魔力で生み出されたダンジョンだ……と言いたいようだが違うな。いくら魔王の魔手でもこの三カ月程度の短期間でここまでのダンジョンを生み出すのは有り得ない。


「元々このジャスティスシティー地下にあった地下施設を改造したようだな。

そこにモンスターなどを連れて来て徘徊させて侵入者を阻んでいる。これは結構面倒な事になったな……一度入れば出られるのは魔手マッシュを倒すまで無理だろう……だが俺達は勝てる! ドクマッシュダンジョン降下作戦開始だ!」


『おう!』





ドクマッシュダンジョン降下作戦が開始された。

勇者魔王と魔女と半魔女とジャスティス騎士団団長がジャスティスキャッスルの地下ダンジョンとなるドクマッシュダンジョンへとパラシュートで降下する――。

ジャスティスキャッスルの地下にあるその大空洞の空域の風の抵抗を受けつつ、上空三千メートルぐらいから眼下に広がるキノコの建物が無数にあるドクマッシュダンジョンを見据える。

俺のオンリースキル・マジックウェポンで現代のパラシュートを生成し、全員に装備させて作戦行動を起こしていた。新聞紙の絨毯や第一オーマスーツ・ギガバーニアンではただ降下する作戦には向いてはいない。これは機動力よりも、ただ安全で確実にムダなエネルギーを使わずに全員が無事に敵地の地面の土を踏む事。そのパラシュートで降下する俺達は段々と迫り来るドクマッシュダンジョンのキノコ型の配色の悪い建物を見つつ話す。


「地上に降りた瞬間戦闘の可能性が高い。各々、油断するなよ」


「そんなの当然ですニャーン。今はこのパラシュートでのらりくらり降下しましょう……Zzz……」


「って、おい! 寝るなメスパー! 作戦行動中だ!団長、気をつけて見ててくれ」


「そう言いたいのは山々だが、私もこのパラシュートというのは慣れてなくて酔いが回わる……ウエェェェ……」


「って吐くなー! そんなの見せられたらコッチも吐いちまうぜ! なぁ魔女?」


「……ん? そだね。まぁ集中して行きましょう」


と、イマイチ魔女の反応が良くないな。

まぁ寝てる奴とゲロ吐いてる奴に比べればマシか。パラシュートに慣れている俺がここはちゃんとしないとならんな。このままのスピードで降下していけば後、五分ちょいでマッシュのドクマッシュダンジョンに到着するはずだ。到着してからが勝負……今はこの大空の風を浴びて精神統一するか……。


「各員作戦行動中だが今は寝ててもゲロを吐いてもボーッとしててもいい。だがもう五分ちょいで否が応でも戦闘状況になる。今はこのお互いの距離を保って降下する事だけ考えてればいい。近づき過ぎず離れすぎるなよ」


『了解』


俺達四人の降下は続く――。

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