魔女に変貌するメスパーの奇襲
勇者魔王の絶大な魔力を秘めている勇魔金玉を使用し、半魔女から完全にクラスチェンジして魔女と化した漆黒のメスパーは圧倒的な力でジャスティスキャッスルを攻めて来る。
ジャスティス騎士団や、その精鋭部隊の魔法剣士軍・ペルソナクルセイド程度じゃ対処出来ないだろ。何せ相手は他人の死と魔を司る魔女。まともな人間が対処できる相手じゃねーさ。
だーが、これも計算通りだ。そろそろメガネ女のメスパーが魔女へのクラスチェンジが終わった頃だと思ってたぜ。魔女と化した奴が来ればこの城の人間もこの俺に頼るしかないだろ……。おそらくメスパー対策をしてる魔王の魔手・マッシュの作戦計画に俺が組み込まれればの話だがな。
「ようやく来たなメスパー……これで面白くなって来たぜ」
すると、魔法封印結界と手錠をされる俺の薄暗い牢獄の前に、ジャスティス騎士団の団長がこっそり現れた。
「勇者魔王オーマ……外から攻撃を一時間以上続けている漆黒のメスパーという女はお前の仲間か?」
「馬鹿野郎。メスパーは俺にとって最悪の敵だぞ。今すぐ殺したい敵だ。俺の下半身を盗んだ女だぞ?」
「……か、下半身を? お前も大変だな勇者魔王オーマ」
「まーな。で、この非常時にこの罪人の俺に何の用だ?」
「国王よりの命令だ。勇者魔王オーマ。あの漆黒のメスパーを始末せよ」
「お安い御用だ。団長さんよ。なら早くここから出して、手錠も解いてくれ。魔力無しじゃメスパーとは戦えないぜ」
「そうだな。今外してやるさ。必ずあのメスパーを倒せよ……」
「勝手なマネは許さないよ団長どん」
『マッシュ!?』
そこに突如、魔王の魔手である緑色のマッシュルームヘアのマッシュが現れた!
ジャスティスシティーをメスパーが襲撃してる状況で、俺を利用しないつもりか?
「マッシュ! マッシュ! ここはマッシュ!」
頭を触ってマッシュルームカットをアピールしてやがる。うーむ、無意味だ。
「マッシュ! マッシュ! ここはマッシュ! オーマから〜マッシュ!」
「意味わからん。散れ」
この牢屋の場の空気は止まってるが、現状は進んでいる。
魔法少女の上位クラスの魔女へとクラスチェンジした漆黒のメスパーが俺を殺そうと、このジャスティスキャッスルに襲撃をかけてきているのが現状。本来なら魔女少女からこんな形で魔女にクラスチェンジするなんであり得ない事だ。魔女は魔法少女になる因子を持った者の中から<時の運命>が選ぶ者だから自分でなろうとしてなれる者じゃない。
勇者魔王の金玉に宿る絶大な魔力を使って魔女になった存在なんて、今までの歴史でこのメスパーしかいないだろ。やはりコイツは途方も無く狂った存在だ。だから勇者魔王という俺が倒すべき相手なんだ。
「惚れそうだぜメスパーよ。やはり魔のつく女は恐ろしく、美しいな」
「惚れそうならメスパーと魔力通信してね。交渉で終わらせればいいけど戦闘になったら貴方の出番よオーマどん」
「交渉? 交渉なんて通じる相手じゃねーなメスパーは。戦闘になるのはこの襲撃で目に見えてるだろ。魔力通信されてんなら、その通信を俺によこせ。この城の魔力結界だっていずれ破られるぞ?」
「ならよろしくどーぞ!」
そんなこんなで、魔女メスパーとの交渉に入る事になった。
マッシュの映像魔法でメスパーの放つ魔力を受信した。
牢屋の壁に新魔女メスパーの姿が映る。
「派手な衣装だなメスパーの野郎」
前の半魔女であった時から衣装は少し変わってる。あの時は純黒のセーラー服のノースリーブタイプだったが、今度は更に過激だ!
上半身は白く美しい素肌が強調される黒水着のブラジャーに下半身は学制服のスカートをはいただけでノーパン。魔女は身体が火照る体質らしく、俺の相棒の魔女もフードマントの下は全裸だったからな。魔女という生き物はあまり布を必要としない生き物のようだ。
(そうか……素晴らしい格好だぜメスパー……ぐほぉ!? は、鼻血が……。攻撃されてないのになんというダメージだ。ステータスがレッドゾーンに突入だぜ……。こ、この勇者魔王オーマを何もせずここまでするとはメスパーめ。新魔女恐るべし!)
俺は再度新魔女メスパーの恐ろしさを知る。
そして映像魔法で監獄の壁に投影させるその新魔女は黒髪のショートボブの毛先の先端をイジリーしながら言う。
「ニャーン。新魔女である私、メスパーの目的は一つ。このジャスティスシティーで暗躍してる魔王の魔手のマッシュを引き渡す事。素直に渡してくれれば私はこの国に対して何もしませんわ」
その新魔女メスパーの言葉に、ジャスティスシティーの人間達よりも俺が一番驚いた。
「マッシュを引き出せだと!? 俺じゃなく魔手のマッシュを?どういう事だメスパー……」
メスパーの目的は絶対に俺だと思ってた。
まさか奴の目的が魔王の魔手であるマッシュだと? 今度は一体何を考えてやがるんだメスパー……?
そしてメスパーの目的であるマッシュルームカットの緑髪の少女は言う。
「マッシュが欲しいのか新魔女メスパーちゃん。けどあげないよーん! ベロベロベー!」
マッシュは映像魔法の先にいるメスパーではなく何故か監獄の俺にベロベロベーをする。……この状況でそれはやめてくれないか? ジャスティスキャッスル団長の女はジロリ……と殺意むき出しで俺を見る。ったく元々はマッシュのせいだろ。困った女団長だぜ。
「後、一分で答えが出ないなら、大魔法のオンパレードでこの魔法結界を破壊してジャスティスキャッスルそのものを破壊しますニャーン。返答は早くお願いします」
「一分だと? そんな短い時間で……!」
困惑する俺に団長は言う。
「もう二秒経過してるぞ勇者魔王オーマ。頭を働かせてこの状況をどうにかしろ! 貴様はこの世界の救世主じゃないのか!?」
「へっ、俺はこの世界よりも自分の欲の為に動く勇者魔王だ。俺は俺の為に生きる」
「なら今は敵であるメスパーを倒すのか? それともこの国の闇となるマッシュを倒すのか? それとも二人同時か? 早く答えを出せ!」
「少し黙れ。散らすぞ」
ここで無駄な死人を出すのはよくない。
俺の相棒の方の魔女がアンダレスビーチで木の葉の津波に流されてから帰還してないが、ここは俺が戦うのが懸命だ。だが、戦った後にマッシュにやられる可能性があるのがキツイから判断に迷うぜ。ここはこの城の新指揮官に聞いてみるか。
「おいマッシュ。新魔女メスパーとの交渉はどうするんだ? 応じる気は無いだろうが、答えは出さなくちゃならん」
「そうだねぇ……」
ニヒルな顔でマッシュはキノコ頭に両手を置いて考えてる。
何にせよ、メスパーが交渉をして来るという事はこのジャスティスキャッスルに一気に攻めて来れば俺の抵抗もある事を考えての事か? ムダな戦闘はせずに欲しいモノだけを手に入れるってのは簡単にはいかねーぜ。
(だがメスパーも俺が魔王の力とチンコを失って調子が悪いのは知ってるはず……今度は魔王の魔手の力も欲しくなったのか? でも魔手は誰かの宿主になってこそ真の力を発揮する代物……今のように単体でいる事はいつまでもは出来ない。まさか自分の腕に魔手をつけて魔女魔王にでもなるつもりか? だがそんな事は不可能の……はずだ……)
と、まとまらない考えを頭の中で繰り広げた。するとマッシュルームカットの毒キノコみたいな緑の髪をしたマッシュは、
「マッシュ! マッシュ! このマッシュはあんな新魔女と戦う気はないよーん。面倒な事はよろしくね勇者魔王……じゃなくて勇者。アイツ倒せば監獄から出してもいいよ。倒したらね!」
「何だと?」
どうやらマッシュは新魔女メスパーとは戦う気は無いらしい。まぁ、自分が目当てなら当たり前か。ここでムダな力を使ってたら単体でいられなくなる可能性もあり、自分が支配する宿主を探す事も探せなくなる。ジャスティス騎士団団長が後ろの方で俺を見ているが、この騒乱を持ち込んだ俺とマッシュがこのまま消えてくれればいいのに……ってツラしてやがるな。この女の気持ちはわからんでもないが人間がいるいる以上、いつまでも争いの無い世の中はあり得ないってのを知った方がいい。
(……だが今は正直魔王の魔手が無い状況でのメスパーとの戦闘は不利だ。魔手もチンコも失った今の俺の戦闘力がどこまであるのかは未知数……もしメスパーを倒してもその後はマッシュとの戦闘になるのは確実。そして先にマッシュを倒してもすぐにメスパーが襲って来る。八方塞がりだぜチクショウが……!)
マッシュは俺の微妙な感情の変化を見逃さないように注視してやがる。
おそらくコイツは自分がメスパーと戦うのは決して嫌ではない。だが新魔女としてのメスパーの力がどういうものなのかを知りたい。そして、今の魔王の力を失う勇者オーマの力を知りたい。この世界において最強クラスの人間の力を知ればこの魔王の魔手であるマッシュは最強の宿主を探してソイツに寄生して身体を乗っ取る事が出来るからな。このままだと俺とメスパーはこのマッシュの手の平で遊ばれる事になる。
「どーすんのオーマどん? やるの? やらないの?」
「お前はそんな答えは聞いてないだろマッシュ? 俺には新魔女メスパーと戦う以外の選択肢は無い。そうだろ?」
「わかってるならいいよ。じゃあ、勇者オーマを解放してあげてチョンマゲ!」
ジャスティスキャッスル団長が直々に俺の監獄の鍵を開けて引き出す。
「この状況を解決しなければ死刑だ。わかってるな勇者オーマ」
「わかってるさ。まぁ、俺が負ければヘタすりゃこのままジャスティスキャッスルだけじゃなくジャスティスシティーも壊滅だ。せいぜい俺を応援しとけ団長さんよ」
ポン、と俺は団長の頭を叩き言う。
そして俺は監獄から新魔女メスパーのいる外に引き出され、魔女となるメスパーとの交渉に臨む事になっちまった。やれやれだぜ……。
そしてマッシュは一つの手の平サイズのキノコを出した。毒キノコか?
「これは裏切り防止用のマジマッシュ。新魔女メスパーと手を組んで変な真似をしようとしたらこれが反応してすごーい事になるからね?」
「別にメスパーは因縁があるだけで味方でも仲間でもない。ただ殺したい腐れ縁ってだけだ」
俺はマッシュのマッシュキノコを頭につけられた状態でジャスティスキャッスルの外で暴れていた新魔女メスパーと対面する事になった。さて、これからが勇者魔王として復活する本番だ!




