マッシュの寝室に奇襲をかけるオーマ
ポテチ大好き超巨乳盗賊ニートが牢屋のカギを開けてくれたから勇者である俺は魔王の魔手であるマッシュの寝室に向かう事にした。
ここの見取り図はジャスティス騎士団団長に渡されたマップを見れば一目瞭然だ。それにジャスティスキャッスル内部は兵の警戒度もかなり低い。城の外が通信妨害やレーダー反応を乱すミストジャマーの霧に覆われているからむやみやたらに敵国が進行する事が出来ず、この国は大軍に攻められるという事はかつて無かった。だからこそ、夜間警備兵の緊張感が無く、眠りこけている兵の連中にバレずにマッシュのいる部屋にたどり着いた。王の間に近い最上階フロアの一階層下にあるフロアに警備兵はいない。おそらく、マッシュがいるから警備兵は邪魔になるって判断だろうな。
「まっ、その方がケガ人も出なくて都合がいいぜ」
と、小声で呟きつつマッシュのいる室内の扉に手をかけた。しかし、押しても引いても扉が動く気配は無い。
(……カギか。迂闊に魔力を使えば中にいるマッシュにバレる可能性がある。さて、どうするかね……)
ここでまたニートが現れたら楽だぜと思う俺は、触れていたマッシュの部屋であるマッシュルームの扉が微かに動いたのを感じる。
(空いてる……だと?)
どういう事だ?
ここが開いてるとすれば罠……もしくは団長か……。前者ならマッシュが入浴してるという事自体がフェイク。後者なら団長が俺にマッシュを始末させる行動の一つだ。って、さっきまで閉まってたのに何で開いてるんだ?
「……!」
瞬間、目の前の扉が内側に向かって大きく開かれた。侍女の女が内部扉のカギを開けてから開いたようだぜ……。扉の奥から現れるマッシュは緑のマッシュルームヘアを揺らしつつ、どこかへ向かった。
(超不意打ちだな……危ねぇ。危ねぇ)
マッシュと顔合わせする寸前の俺は天井に張り付いてやり過ごした!
そして通り過ぎるのを確認すると、侍女が持っていたカゴのタオルやら下着を思い出す。
どうやらマッシュが向かったのは露天風呂だ。男だらけのジャスティス騎士団は男湯だから、この女湯なら大勢の人間がいないからマッシュを倒すには向いてる場所かな。おそらく深夜である今の時間帯的にも一人で入浴するだろうからな。
周囲を警戒しつつ、深夜のジャスティスキャッスル内を影のように動く俺は露天風呂へ向かう。
「さて到着だ。辺りに侍女はいないようだな。となると、一人で入浴か? 確認してみるか……」
気配を消しながら脱衣所を抜け、俺は一気に露天風呂内部に入る。その内部はシンプルな日本の露天風呂といった感じで、湯気がミストジャマーのように視界を塞いでやがるが全く見えないという事は無い。
完璧に気配を消している俺に気付かないマッシュは、入浴する前に身体の汚れを落とす為にタオルで身体を洗っていた。
(魔王の魔手の癖に中々いい身体をしてやがるぜ。髪型は緑のマッシュルームヘアで変な感じだが、あの美少女具合だと結構モテるな)
そんな事を思う俺は、
(にしてもマッシュが露天風呂……か。キノコだからカビが生えないように身体をキレイにしてるのか?魔王の魔手も人間モードになれば普通の人間のように動くんだな。でもそれもここまでだぜ……)
マッシュ! マッシュ! と相変わらずの口癖でマッシュは身体を洗っている。これは完全に俺に気づいてはいないな……。これは勝機と見たぜ。
(どうやら、マッシュは本当に入浴中のようだ。隙を見て倒してやる。魔王の魔手として俺の左腕に戻れば、次は半魔女メスパーを倒して俺のチンコを回収する)
ジリジリ……と湯気に身を隠す俺は露天風呂に浸かるマッシュに近づく。薄い湯気は完全に俺を隠してはくれない。つまり、背後からゆっくり迫って一気に仕掛けるしかないんだ。ゆっくりと……確実に魔力も使わずに羽交い締め出来る距離の背後から襲いかかる! という瞬間、マッシュは桶に汲んでいたお湯を頭からかぶり、突如立ち上がる。
「!?」
背後から迫っていた俺はカチンコチンコのように固まるわけにはいかず、マッシュの視界に入らないように身をかがめてやり過ごす。
マッシュのいる露天風呂の中に俺も足を入れた。そのままゆっくりとお湯から立ち上がる湯気の流れを殺さないように動き、マッシュの背後に迫る。そして今度こそマッシュを仕留めてやる! と覚悟を決める俺は緑色のマッシュルームヘアの少女を後ろから羽交い締めにした!
「ここに貴方のキノコは無いわよ。勇者オーマ」
「お……お前! 気付いてたのか!?」
羽交い締めしたのはいいが、胸元にマッシュルームソードを突きつけられていた為に俺は背後に下がる。特に驚く様子もなく、マッシュは俺を見てやがる。コイツ……いつから気付いてたんだ?
「その下半身の勇者オーマをじっくり観察すると……いや、キノコじゃなくてぶなしめじの一欠片かしら? 湯気でよく見えないけど……もしかして無いの?」
「って、下の勇者オーマは見なくていいんだよ! これはメスパーに奪われて無くなったからサイズもクソもねーんだ! つか、いつから気付いてた? お前の部屋に進入しようとした時からか?」
「それは今さっきよ。お湯から伝わる魔力の波紋。少しの魔力漏れでも身体を伝えばわかってしまうわ。だって元は貴方の左腕だったから少しの魔力でも勇者オーマを感じてしまうの。迂闊だね勇者オーマどん」
「フン、黙れ魔手」
やはりコイツとは一心同体だった時期があるからそう簡単には隙を見出す事は出来なさそうだな。だが一対一ならコッチに部がある。とっとと始末すればいいだけの事さ。
「ここで私を始末しようとしても無駄。だってもう兵を呼んでるから。魔法でね」
「!? チッ、小賢しい事をしてくれるな。もう来たか」
そうこうしてる間に、ジャスティス騎士団の面々が来たようだぜ……。その先頭に立つ女は颯爽と全身迷彩タイツ姿で現れ言う。
「私も湯船に浸からせてもらおうかマッシュ」
ジャスティス騎士団の団長が来る。
だが背後には部下の兵隊は一人もいない。
「あれ? お前一人?」
「ここは神聖な女湯だぞ? 男の兵を入れられるかアホ勇者」
「誰がアホ勇者だ。ま、お前一人なら面倒な戦闘が無くなって楽だぜ団長」
「形成逆転ね。さて、ここが勇者オーマの墓場になるのかな? 勇者オーマ溺死! というニュースが大陸全土に流れるのに期待ね」
「溺死か。お前が溺死すれば、俺の左腕に戻るなら溺死させてやるぜ?」
「団長。この勇者オーマの相手をしてあげてちょ」
「了解。このジャスティス騎士団団長の名にかけて勇者オーマを倒します」
「心にもない事言ってんなよ団長。コッチもあまり長い戦闘はしてられねーよ。一気に行かしてもらうぜ!」
二人は飛び上がる――瞬間!
『……』
ズウゥゥゥン! と露天風呂全体……というか、ジャスティスキャッスル全体に衝撃が走る! ズウウゥゥゥン……。
「おいマッシュに団長? 何だこの衝撃は? 何か実験でもしてんのか?」
「マッシュ! マッシュ! これはおそらく襲撃だね。このミストジャマーに囲まれるジャスティスキャッスルにここまでの攻撃が出来る存在は限られてるわ。おそらくは勇者オーマの関係者……」
「俺の関係者……だと?」
確かに俺の勇者の超直感にビンビンときやがる異様な反応だ。
この魔女のような禍々しい魔力反応は……!
「これは俺の魔女じゃない魔女反応。という事はこの魔女反応は……メスパー……だと?」
『メスパー……』
とうとう半魔女となっていたメスパーが俺の勇魔金玉を使い、魔女へとクラスチェンジしたようだ。そうと勘付いているマッシュルームカットの女は言う。
「そう、メスパー。そして勇者オーマはメスパーの前に飛び出すから牢屋で休んでてね」
「身体の反応が重い? まさかこのサタンの義手に胞子のキノコを仕込んで、俺の身体に神経毒を仕込んだのか……元俺の左腕としてどうすれば俺の動きを封じられるかわかってやがるぜ……」
身体の自由を奪われた俺はマッシュの命令で動く団長により牢屋に戻された。団長も今はマッシュの命令には逆らえない。俺がこんな状況じゃ仕方ないさ。
そして深夜の城の外では魔女へクラスチェンジするメスパーはジャスティスキャッスルの攻撃を続けてる。
コイツはヤバイ状況だが、俺の勇魔金玉を取り返すチャンスだ!クラスチェンジした後にメスパーが捨ててなければいいけどな……。




