監獄での悲喜こもごも
魔王の魔手マッシュの罠によりジャスティスシティーの魔法剣士軍・ペルソナクルセイドに捕まった勇者である俺は魔力監獄に収監された。そして、その団長の女に尋問される所だぜ。黒髪ショートの少年のような奴だ。胸も薄いしな。まな板という奴だ。
「お前達は下がっていろ。ここからは団長である私が尋問する。外には仲間の魔女がいる可能性がある。警戒を怠るな!」
『ハッ!』
門番達を下がらせ、魔力結界が敷かれた独房の中で封魔錠で手足を縛られている俺の目の前に立ちジャスティス騎士団団長はそのショートカットの髪の毛先をイジルようにしつつ話しかけて来る。
「これで二人きりだな勇者オーマ。まず初めに一つ聞くがお前……わざと捕まったな?」
「まさか。魔王の力が無くなって安定してねー俺が手加減なんて出来るかよ。とっとと牢屋に連れてけ。捕虜としての扱いはしてもらうぜ。三食昼寝付きで、デザートはアイスクリームな?」
「戯言はやめろ。勇者オーマなどただの罪人として裁いてやるさ。このラルク大陸全土の混乱は貴様がもたらしたもの。だからこそ今、おかしなキノコ頭の女が国の裏で暗躍しようとしてたりするのもお前のせいだ。お前の魔手であるマッシュを制御できない報いだわ。私も腕立て100回しなければならん」
「わかってんじゃねーか。で、これからジャスティス騎士団はこの国の兵隊としてどうするんだ? マッシュを倒して国の変革か?」
「そうだな。もちろんいずれマッシュは駆逐する。この正義のジャスティス王国にあんな魔王の力を持った存在など必要無い。この霧に隠れた正義の国は他の大陸以上に清く正しくあらねばならん。見えない国だからこそな」
「意気込みはいいが、いずれじゃダメだな。あのマッシュはこの一週間以内に倒さないとこの国は取り返しのつかない事になるぜ。あのマッシュが表舞台で行動してるって事はこのジャスティス王国なんざもう自分のモノと思ってるって事だろうからな。三カ月足らずで国の人間じゃない存在が国の中枢をコントロールしてるっていう自覚が足りねーんじゃねーか?ジャスティス騎士団団長さんよ?」
「――黙れ!」
ガスッ……! と団長の怒りの拳が俺の顔面に叩き込まれた。かなり痛いぜこの野郎……。
「……べっ。こんな程度でキレてたらマッシュには勝てないぜ。奴は魔王の悪意そのものの存在。ま、落ち着いていけよ団長さん。腕立て100回でもしてな」
「黙れと言ってる!」
ガス! ガス! ガスッ! と殴る蹴るの暴行を受けた。けども俺の痛みよりこのジャスティス騎士団団長の精神的痛みの方が大きい。いくら他人を殴った所で、自分の弱さは変えられないからな。そして自分の行いを恥じるように右腕で左腕を握り潰すような仕草で苦しむ団長にボロボロになりつつあった俺は言う。
「……どうだ? 気は晴れたか? 自分の弱さを受け入れられたならこっからがスタートだ。まだこのジャスティス王国はマッシュのモノじゃない。全てはまだこれから取り戻せる。犠牲を恐れずに前を進む信念と行動がある限り」
「そうだな。感謝する勇者オーマ。だが、殴った事は謝らん」
「そうだ。それでいい。俺もワザとお前を怒らせてたからな。ま、物分りが良くて助かったよ。まだ殴られてたら顔がボコボコでイケメンじゃなくなっちまうから」
「口は達者だな勇者オーマ。軟弱な顔をしてるが、芯はしっかりしてるようだ。心の奥に狂気とも似てる決して揺るがぬ自分がある。後天的に得た勇者という能力に溺れていない中々の男だな」
「まさか俺に惚れたか?」
「まぁ、少しな」
フッ……と二人はようやく互いに微笑んだ。そして多少女の顔になりやがる団長は俺の口元から流れる血を自分の清廉潔白を証明するかのような真っ白なハンカチで拭いつつ、
「……それにしてもあのマッシュはこのジャスティス王国を乗っ取ってから何をするつもりだ? 他者の身体のパーツとしてじゃなく、単純に自分が魔王になりたいだけなのか?」
「単純に言えばそうだろ。今までの歴代の魔王を見てきてる以上、敵としては最悪だ。そして元が人間じゃないから敵国に仕掛ける時も、自国の損害なんて考えねーだろうな。人間などゴキブリのように勝手に増える駒としか思ってねーだろーよ」
「そうなると、ジャスティス騎士団はマッシュにいいように使われて消えるという事か。正義が悪を行い死んでいくなど私は許さぬ。マッシュ……もう斬るしかないか」
「斬るっても、奴を暗殺するのは不可能だろ。正直、あのマッシュに勝てるレベルじゃないから今のジャスティス王国は奴に従わざるを得ないんだろ? 弱肉強食だ。俺が来て良かったんじゃないか団長さんよ?」
「世界の特異点だあった魔術師殺し・スペルキラーの勇者魔王でないお前が勇者のみの力でどこまでやれるかは知らんが、このジャスティス王国の役には立ってもらう。お前をエサにして、マッシュを始末する算段を立ててやるさ」
「いいねぇ……その覚悟を忘れるなよ。そして、あまり毛先をいじってるのは女としての欲求不満か?」
「――き、貴様っ! 腕立て100回だ!」
顔を真っ赤にする団長は暴走するようにバコバコバコ! と俺を攻撃して来た! また殴る蹴るの暴行を受ける俺は余計な事を言ったな……と少し後悔した。
さっきから何度もくらってるが、相変わらずの怪力だぜ。これじゃ嫁の貰い手はねーな。まず、男が主導権を握れない。と、こんな事を言ったら火に油を注ぐ事になっちまうぜ。口は災いの元ってヤツだな。だが俺はあえて言う。そう簡単に童貞が大人になれると思うなよ?
「べっ……そんなにジャスティス騎士団達がヘナチンで欲求不満なら俺が相手してやるぜ? デザートに冷凍みかんで手を打とう。安いもんだろ? 天に昇るようにヒィヒィと言わせてやるぜ」
「バカが! 腕立て100回して死ね! マッシュに殺されて死んでしまえ!」
最後に俺の腹を殴ってから団長は怒りを露わにしつつ消えた。
「だいぶご機嫌ナナメにしちまったが……晩飯持ってきてくれるかな? かな?」
と不安になった。
そして、勇者の超直感に反応してる存在に話しかける。
「奴をここから遠ざけるのにムダなダメージを負ったが、そろそろ出てこいよ。勇者の超直感はずっとお前の反応を感じていたぜ……」
ツツツーと勢いよくオッパイの形をしたスライムが現れた。そして人間モードに変化した。
この水色のツインテールのスク水超巨乳美少女ニートはスライム化能力を持つ美少女盗賊だ。ちなみにもっと凄いスライム乳らしいが、胸は動きづらくなるから魔法で小さくしてる。一度生で見たことがあるから本当の事だ。
究極的に張りのある弾力そのものの肌。一ミリ動くだけで地球の重力に反発して動く揺れ。まるでエデンへ来たかのような雄大で包み込むような二つの乳房。
正にキングスライムと呼ぶに相応しい神の乳と言えるだろう。
「やはり……盗賊ニートか。スライム乳だからスライム状態でもオッパイ型か。粋じゃねーかニート」
「勇者オーマは死にました! とりあえずここから出る鍵ね。後、魔女もこのジャスティスキャッスル付近まで来てるから安心して」
「いい加減その手始めの死にました挨拶やめてくんねーか? ま、にしても助かったぜニート。魔女を連れて来てくれたのは感謝する」
「この国はテンパが裏で暗躍してるね。表はマッシュだけど、マッシュをここに呼び寄せたのもテンパの仕業だからね」
「ま、そうだろうな。魔王の魔手は誰か個人の仲間はいないからな。それを引き込もうとする奴なんざロクな奴じゃないだろ。ならテンパだろうな。実際、アンダレスビーチにもいたしな。魔女が追いかけたが、突如起こった津波に呑まれて消えたが」
「あ、あれワッチが起こした津波だよ! 海岸のギャルに津波をリクエストされたから起したのさ」
「ダアホ! お前が余計な事しなきゃ、あそこでテンパを捕獲できた可能性もあったのによ! 何してくれてんだ! つか、またこのジャスティスシティー付近にいる事が驚きだぜ!」
「いやー、一度馬車での荷物運びのバイトしてたらすれ違ったじゃん? そしてら何か気になってバイト完了したらすぐにここまで来たんだけど、誰に聞いても勇者魔王の情報は無い。おかしいな……と思ってアンダレスビーチでバイトしつつブラウラしてたらやっと出会えたのさ。勇者魔王と魔女がこの世界から同時に消えるなんてあありえないからねぇ」
「そうか……ま、アンダレスビーチの件は仕方ないな。お前も俺達を探してくれてたようだし。実は賢者と出会って別空間に拉致られてたんだ。それで三ヶ月間消えてた」
「うへー……賢者に!? 賢者なんてホントにいるんだ。都市伝説かと思ったよ。今度じっくり聞かせてもらおうか。ポテチの……じゃなくて金の匂いがするから」
相変わらずのポテチ好きだな。
ジャガイモ農場作って、魔法で機械加工するような工場でも作ればいいのに。
「じゃ、ここから出ようか。これでテンゴクシティーでの借りは無しだよ?」
「ここからは出ない。あえて捕まってるからな。俺がこのジャスティスキャッスルで投獄されてるという情報は城下町に流れてるだろうから、数日以内にとある猫野郎が来るはずだ。俺はそれを待ってるのよ」
そしてニートが去り、翌日に団長とこのジャスティスシティーの王・オルティナ王と会う事になった。王と話した内容だと、これからテンパの経済力とマッシュの魔王の力を利用して他国へ攻め込もうという判断らしいな。それについて帰り際に団長は言う。
「……オルティナ王は他国の人間を嫌う性格だったのに、あの金髪幼女と赤いマッシュヘアの女に騙されて他国へ侵攻しようとしているのさ。勇者魔王という特異点の存在が現れてからこのラルク大陸全土が変革の時を迎えているとはいえ、まだ他国に侵攻するには時期早尚だ。この国は悪い方に向かっている……その根源を辿れば全ての元凶は貴様だ勇者魔王オーマ」
「そうだ。この俺の存在がこの異世界を新たなステージに引き上げようとしている。誰もこの勇者魔王の影響下からは逃れられないぞ……誰もな」
「黙れ。そこでじっとしてろ。この特殊監獄ならば魔力は使えない。魔力が使えないなら勇者魔王とて人間並みの筋力しかない以上、この檻は破れない。オルティナ王の命があるまでじっとしてろよ……」
「あぁ、そうさせてもらうぜ。勇者としての能力が無い今の状態に慣れるのにも時間がかかるしな。飯はちゃんと三食出せよ。そして、デザートも必要だ」
「ここは娯楽施設じゃないぞ勇者魔王」
団長の本意を聞くと、団長は俺を牢屋に入れて出て行った
(団長という魔法剣士はかなりマッシュが気に入らないようだな。この国は特に巨大なラルク大陸の中でも閉ざされた国。わけのわからない異分子を二人も抱えて重宝してるのはさぞ気に入らないだろうよ……?)
あえて投獄された俺はとうとうこの女に一対一で出会った。緑のワンアップキノコのようなマッシュルームヘア。これは俺の左腕だった存在……。
「マシュン! また会ったねオーマどん! こんな霧に包まれた国にまで追いかけて、尚且つ捕まって来るなんてマッシュトーカーだよ!」
「このミストジャマーが充満した陰気な大陸でマッシュの面を堂々と拝むにはこれしかないだろ」
「確かにマッシュ!」
「それと何でもかんでもマッシュとかけて言うなよ? そしてお前は俺の魔手だから俺の命令を聞け」
「それはどーゆー事かな?」
「俺の魔手として戻れって事だ」
「嫌だピョーン」
(団長とオルティナ王とマッシュは三竦みのような関係になってやがる。この三人の誰かが大きく動いた時、一気にこの国は破滅へ向かう。外に向かう前に内乱で国が崩壊するぞ……)
「もう少し衰弱したらその身体を奪ってあげるから待っててマッシュ!」
「誰がお前に俺の身体を渡すかよ。お前の力じゃ、俺には勝てんぜ?」
「だからテンパにも協力を仰いでるの。じゃね!」
と、緑色のキノコ頭をグイングインさせながらマッシュは牢屋の前から消える。
そして、ここは先手必勝と言わんばかりにマッシュの寝室マッシュルームに奇襲をかける事にした。
これが俺がこの監獄に囚われている理由だ。
とっとと始末してやるぜ魔王の魔手マッシュ!




