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赤髪魔剣士エミリの真実

赤髪魔剣士エミリの天地消滅作戦は限りなく失敗に終わらせる事が出来たーー。

そして、俺は再び地上のジゴクシティーに辿り着いた。

天空城テンゴクシティーはジゴクシティーの横に落下したとは言え、その落下の余波は大いに地上都市を破壊するだけの影響があり、大半の建物は全壊か半壊するような被害が出ている。もっとも、人間の死者は出ておらず怪我人が多数いるが怪我ならいずれは治るから大丈夫だろう。心の傷は知らんが。

そうとは言え、この大事件の大混乱の中でテンゴク人とジゴク人が衝突し、百人以上の死者が出ているのも確かだ。まさかテンゴクシティーの落下じゃなくて、人間同士の争いで死者が出ているなんておかしなものだがな。それは地上にいた魔女がある程度片付けてくれたおかげで混乱自体は収束してる。茫然とする民衆達は、まだこの状況を受け入れられないようだな。


「……にしてもヒデー事になったな。魔女の姉の赤魔王とのヘブンリーシティでの戦い。そしてゴールドキャッスルでのテンパとの戦い。そしてこのジゴクシティーでの戦い……勇者魔王の戦いは草木生えぬ荒野を生み出すような戦いになってやがるぜ。また悪名が広がりそうだ」


凄まじい顔を見せるこのジゴクシティーの光景を見て俺は思う。

今や天国と地獄の混ざって崩壊した煉獄シティーだがな。

まぁこれで、赤髪魔剣士であるコイツの復讐の目的は俺に移った。後は、俺が勝てば核弾頭アトミックフレイヤにまつわる事件全て終わりだ。と、少し離れた所から駆け寄る魔女に俺は言う。それに半魔女となるメガネ猫女・メスパーもついて来る。


「地上の活躍感謝するぞ魔女にメスパー。後は俺がエミリと決着をつければフィナーレだ。俺の活躍を見ててくれ」


「ほいほーい。コウハイ君のサポートはセンパイの役目だからね。地味に頑張ったセンパイを褒めてくれたのはエライよ!」


「おう。センパイは最高のセンパイだ。お前ほどのセンパイはいないさ。ありがとよ」


「ウホホーイ! やっぱセンパイは最高の美少女だよね! うん、知ってる! ぴゃー!」


と、魔女は長い黒髪を逆立たせるように興奮しながら暴れてるな。

そしてその真横で無表情で猫招きポーズをする半魔女メスパーのズレた黒縁メガネを上げてやる。


「メスパー。お前の協力にも感謝する。俺の金玉はあげれないが、これで今まで俺にした罪は許してやるさ」


「どうもです。ぺこり。でも勇魔金玉は必要です。実物を見せてください」


「ちょ! 待て! こんな人前でパンツを脱がそうとするな! まだ戦闘中だぞ!」


「ではいつならいいのでしょう? 実物観賞の日付を予約します。ついでに写生もしたいです。ぺこり」


「じゃあ今日の夜に薄い水色の下着をつけて来い。髪型はボブのままでいい。服もそのノースリーブのセーラー服でいいぞ。オプションで猫耳カチューシャを付けるのも有りだな……て初夜か! つーか金玉は他人に観賞させるもんでもねーんだよ! アホが!」


「じゃあ私と初夜を済ませればいいのですね? 私の処女が欲しければあげましょう。ただし行為が終わり次第、金玉はもらいますけど」


『そーゆー問題じゃない!』


と、俺と魔女はシンクロして言う!

? という顔のメスパーに魔女は俺を援護するように話し出す。

そうだ、お前は俺の性奴隷。

俺の為に動けばいいのだ……。


「戦闘中でもコウハイ君のはたいした事ないんだから見せてあげれば? それ以上縮まないでしょ? ナニがナニしてもナニにもナラないよーん♪」


「!? 誰のナニがたいした事なくて縮まないんだ? 貴様等百回散れ! ハンドガンの餌食にしてやる!」


『キャー!』


俺はもう感謝はしなくても大丈夫だろうと地上軍として活躍した魔女とメスパーを無視してエミリと対峙する。つーか魔女の奴、俺を援護する台詞を言えよな。魔女はおだてて使うのが吉のはずなんだが……今はいいか。

そこにテンゴクとジゴクの両国の王であるジゴク王と新テンゴク王が現れる。

今日は二、三人ぐらいすでに死んでるからテンゴク王の順番制王位継承も自然に行われるとはいえ大変だな。んな事よりここでこの二つの都市の王がいるならこの茫然としてる民衆に全てを話させるのもいいだろう。どうやらこれから戦う赤髪魔剣士も姿を現したようだからな。


「ジゴク王。ここでテンゴク人の闇を話せ。ここの全ての人間に向けてな」


「バ……バカを言うな勇者魔王。こんな場所でそんな事が言えるか。こんな国が崩壊した状況では何も出来んぞ。それよりエミリが現れた以上ここは危険だ。逃げなければ……」


「もう誰もここから逃げられねーよ。この二つの都市の闇を吐き出し、その闇が生んだ赤髪魔剣士との決着をつけねー限りな」


「だがしかし勇者魔王! このテンゴクシティーの落下で混乱している民衆に対して今、真実を打ち明けるわけには――」


「だからこそだ。全ての闇はここで全て晴れさせる。もうこの都市の上には雲ひとつ無い青空だ。いつまでも同じ過去は生きてははいられないぜ」


「だが……ワシは……」


俺はジゴク王との会話をするが、俺の意思は聞き入れられない。

テンゴク人に逆らうわけにはいかない。

それがこのジジイの心をコンクリートのように硬くさせ、縛り付けている。

隣にいるテンゴク王なんざ、ただの番号制度の王でしかないってーのによ。

この動かない状況を動かすにはエミリとの衆人環視の決戦しかない。

ジゴク王とテンゴクの王が見つめる中での決戦で、全ての民衆に真実を伝えるしかないか。

面倒な役割だが、俺がやってやるしかないぜ!


「……」


そして、今まで黙っていた赤髪魔剣士エミリは天と地の王を一瞥した後、スッと俺を見据え言う。俺は黙ってエミリの意思を聞いた。


「私の復讐は大きな力に屈するだけで反抗の意思のないジゴク人を消す。そして権威さえ本当は存在しない無意味な存在のクセに主義主張ををするテンゴク人を消す。大義無き者など存在する価値は無い。生きてるだけでガンでしかないのよ!」


「……」


「人である事を捨てているなら、空気を吸ってるだけの物言わぬ草木。草木が人間の形をしてたら邪魔でしょうがない。だから復讐されても文句は言えない。すでに人でないんだからね」


「……」


その言葉に王達だけでなく民衆も心を抉られるような不快感を感じ、黙り込む。

エミリの初めの作戦はジゴクシティーを影から支配する雲の上のテンゴク人達を始末する為の核だった。国を襲えば、テンゴク人も地上に降りる。そこを斬る作戦だった。

それをメスパーとの協力作戦の中から両国を消す天地消滅作戦へ変わっていったようだぜ。

そのエミリはテンゴク人の血を引く事で、地上の血を汚れとする意識のテンゴク人に親を殺された。

ジゴクシティーで混血児という事を隠しながら生きていたエミリの育ての親はジゴク国王に殺された。

これは二つの復讐――。

テンゴクとジゴクの全てを消滅させる二つの復讐作戦だった。

エミリの背中にはジゴク王が烙印のように付けたZの傷がある。

川に捨てられた事で遠くに流れて、運よく一命をとりとめていた。そこから復讐の為に強くなる。テンゴク人に利用されるジゴクシティーを壊し、天と地の諸悪の根源を消す為に――。


「……その悪に植えつけられた呪いの烙印がこの傷よ!」


そしてエミリは背を向けて赤い着物を脱いだ。

バッ! と群集に白磁のような柔肌が晒され、その背中の中央には――。


「この背中のZの傷を見ろジゴク王!」


「……わかっておるわい。その傷はワシが一番わかっておる……」


そのジゴク王は周囲の人間のように驚きもせず、ただ頷いている。まるでその傷は自分が付けた傷だと言わんばかりに……赤髪魔剣士は自分が生み出したと言わんばかりに……。周囲のザワめきはジゴク王に向かい出し、そしてこの光景を不快に思う新たなテンゴク王は言う。


「背中の生々しい傷に若い女の肌に興奮するよりも冷めてしまうのぅ。下品な女じゃて」


「――また殺されたいのかテンゴウ王!」


と、悪鬼のように豹変したジゴク王は叫ぶ!


『!?』


瞬間、この場の全員が驚く!

そう、地上に一年ぶりに降りたテンゴク王はジゴク王により殺されていたんだ。

テンゴクフェスティバルの最中で地上のテンゴク王は誰かに殺され、テンゴクシティーにいた人物に王位継承された。俺は地上に残るメスパーか金血鬼となるテンパが殺したと思ってたが、まさかこのジゴク王だったとはな……。


(テンゴク王を殺したジゴク王……肝心な事を黙ってやがったな。まさかエミリは……この二人の関係は……)


そのままジゴク王は暴徒と化す天と地の両方の民に襲われる。ジゴク人は赤髪魔剣士を生み出した罪に怒り、テンゴク人は自分達の王を殺した怒りで動く――そして、俺は助けない。


「民衆が暴徒になってる!? ワ、ワシをた、助けてくれないのか勇者魔王よ!?」


「俺は貴様等の国が、人がどうなろうが知った事じゃない。俺は俺の生み出した悪意を消したいだけだ」


「お前は勇者なんだろう? 魔王であるが勇者でもある! ならば……」


「あのな。俺に協力してれば結果的にはこの国も助かるかもしれない。第一にこの国は無意味にテンゴク人を恐れ、生贄を捧げ続けて来た。その歴代続く悪習の終りのツケを払うのが自分の代の国王ってのが納得いかないだろうが現実を受け入れろ。もう、逃げるならば死ぬしかないぞ? 死にたくないなら俺に協力して戦えよ。変化する国の未来との戦いだ」


「わかった! ワシは約束する。これからジゴク人はテンゴク人を恐れず、対等に接する! もしそれを破ればワシを核弾頭で消してくれて構わない!」


「いい覚悟だ。聞いたかテンゴクとジゴクの民衆! このジゴク王の覚悟は本物だ! 今はその怒りを自分の何も出来ない非力さに向けて耐えろ! そしてこれからお前等の未来は、互いに協力して勝ち取るんだ」


『……』


俺の高圧的な言葉で暴徒は鎮圧される。魔女と半魔女メスパーも動きそうになっていたが、特に動く必要はなかったな。そしてスライム乳のニートはポテチ食いながら寝てやがるぜ……流石はニート。ニートにクラスチェンジしなくてもお前は名の通り十分ニートだ。


「そして、テンゴク王。もうお前の権威なんてもんはねーぞ。黙って事の結末を最後まで見ていやがれ」


「は、はい! わかりました勇者魔王!」


「そして、ジゴク王。お前が赤髪魔剣士エミリの存在に気づきながらも特にここまで対処をして来なかった。俺に依頼するぐらいでな。一体どんな理由があるんだ?」


「それは……赤髪魔剣士エミリと言えば恐ろしき暗殺者。だからこそワシはあまり騒がずにいたんだ。無駄な死人が出ても困るからな……」


「自分の王宮に侵入されてロクに対策をしないのは有り得ない。お前はエミリに烙印を押したのは何故だ? 国王であるお前が直々にそんな事をするのは何か事情があるからだろう? 新しいテンゴク王、十年ぐらい前にジゴクシティーとテンゴクシティーの中で生まれた子がいるはずだ。知ってるか?」


「いや……ワレは知らぬ。その頃は裏切り者のテンゴク人が出て処刑した時。地上の人間と交わったからじゃよ」


「そこでテンゴクとジゴクのハーフが生まれたって事だ。エルフ耳の混血児がな」


エルフ耳の混血児……という台詞にエミリは微笑み、ジゴク王は耳を塞ぐ。

この二人のリアクションだけが他の全ての人間達と違う。

もっと追い込まないとダメだなこのジジイは……。


「もうここまでお膳立てはしたんだ。自分で答えを言うか? それとも俺が言うか? 答えろジゴク王」


「ワシは……言えん。言えるわけがない……」


ったく、どうしよーもねーなジゴク王は。

ならもう時間の無駄だ。

全ての闇の真相を俺が言ってやるぜ――


「この赤髪魔剣士エミリは、このジゴク王の娘だ。テンゴクシティーの女と交わって出来たハーフの娘だったんだよ」



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