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石コロを押し出す勇者魔王オーマ。テンゴク落下阻止作戦!

天空に浮かぶテンゴクシティーの浮力が消失し、その東京ドーム一つ分ぐらいの浮遊城の巨大な質量は地上のジゴクシティーに向けて落下し出している――。

全くさっきから落下する衝動の安定し出す変化が無い。

テンゴク王が言ってたこのピラミッド型の浮力装置に魔力を注入すればこの天空城の浮力は回復するんじゃ無かったのか……?

すると、俺を地面から見上げるジジイが血まみれで何かを言っていた。


「グフッ……だから言ったじゃろう。主は子供じゃとな」


「テンゴク王!? 生体反応は無いはずだぞ?」


「テンゴク王という存在は心を折るか、魂を殺さないと死なないのじゃよ。この身体はただの器でしかないからのぅ」


「なら魂を消してやる。勇者のライトシールドのエネルギーを使えば魂の浄化は可能だ。消してやる」


このクソテンゴク王が!

しょーもない嘘をつきやがって!

とっとと魂ごと始末してやるさ……。

本当の死が怖いのかオドオドとしだしたテンゴク王は地面を這い蹲る虫のように言う。


「さっきのは嘘じゃ。そこに魔力を注入すればより浮力は安定しないぞえ? 勇者魔王オーマがこのテンゴクシティーを地上に落とす最後の後押しをしたのじゃ。他者に惑わされる哀れな小僧よのぅ」


「黙れ。散れ」


右手の勇者烙印の五芒星を発現させ、聖なる光にてテンゴク王の魂を消滅させた。


「……チッ、テンゴク王のせいで無駄な時間を使っちまったな。さて、こっからが本題だ。テンゴクシティーの落下を止めなきゃならん」


第三オーマスーツのブラックアンボビウムならこの衝撃にも耐えられるだろ。やるしかない!

だが、まずは第二オーマスーツ・ジギタリスで邪魔なスライム乳の盗賊ニートを脱出させとくか。


「失った魔力回復の為にもニートを探知する。こののり塩ポテチの反応を辿れば……!」


寿命を削る覚悟で魔力レーダーを発動させて盗賊ニートの反応を探す。


(このテンゴクシティーから出てないならすぐに見つかるはずだ。ポテチ食ってれば尚見つけやすい……)


……見つけた!

こんな容易に見つけられるのは、奴が今のり塩ポテチを食っているからだな。こんな大きな天空城が落下してるのに呑気な奴だぜ。それでこそニートだ。

そしてポテチをのほほんと食っているニートを発見する。水色の水着で超巨乳だからすぐに見つかったぜ。


「おいアホ。お前は死にてーのかアホ。状況わかってんのかアホ」


「ゆ、勇者魔王は死んでなかった!」


「ニート、貴様は後で役に立ってもらうぞ。でなくてはポテチが二度と食えない病に感染させてやる」


「ワ、ワッチをポ、ポテチを二度と食えない身体に!? それは勘弁だわ! やめチクビ! なら一つ良いことを教えてあげる。テンゴク王は複数存在するの。ビビッた? ビビッときた?」


「そんなん知ってるぞ。それよりオッパイを揉ませろ」


「え! 変態!」


「俺の魔力が回復しないとお前も逃げられないぞ! 我慢しろ! ポテチ食わせないぞ!」


「ワッチ! 了解です!」


ニートはスク水に包まれる超巨胸を差し出した。

それでいい……。


「って、水着は脱がなくていい!」


「え? 生で出さないの?」


「変な言い方するな。早く揉ませろ」


「ちょっとだけだよ?」


「俺の気がすむまでだ」


究極的に張りのある弾力そのものの肌。一ミリ動くだけで地球の重力に反発して動く揺れ。まるでエデンへ来たかのような雄大で包み込むような二つの乳房。

正にキングスライムと呼ぶに相応しい神の乳と言えるだろう。

それを俺は魔力回復の為に揉んでいる……。


「いいぞニート……俺の魔力がみるみる回復するぜ。流石はスライム乳。凄まじい魔力が詰まってやがるな」


「アヘアヘ……アヘアヘ……」


これで魔力がある程度まで回復したぜ……。

これならまだまだ戦える。

こっからこのテンゴクシティー落下を阻止してやるぜ。

そしてアヘアヘモードから回復するニートは言う。


「変態勇者魔王は死にました!」


「お前を先に殺すぞ?」


「ワッチが死にました!」


「よし、先にお前を殺してやるぞニート」


第二オーマスーツ・ジギタリス発動させる。

シュパァ! と真紅の閃光が散り、血のような魔力粒子が俺に展開する。

核弾頭使用用・第二オーマスーツ・ジギタリス。

その外見は邪悪ささえ感じさせる真紅の戦国武者の甲冑のような重装甲のオーマスーツだ。

平常時はオープンされた顔も、核弾頭発射時にはクローズフェイスで赤いバイザーがかかる。


「じゃあなニート。地上に行ったら魔女と協力して地上の混乱を収めろ。頼んだぞ」


「ワッチ! ポテチの為にがんばる!」


「おう、頼んだぜ!」


そのジギタリスのファナティックバズーカでニートを地上へ返した。スライム乳を地面でバウンドさせれば死なないだろ。問題はこっからだ!

もうエミリはこのテンゴクシティーを脱出したなら俺の邪魔をする奴はいない。

すぐに魔王の魔眼で地上を見つめた。

どうやらちゃんとニートはスライム乳を地面に叩きつけ、その反動を利用して死なずにすんだようだ。


「地上は頼んだぞ魔女。俺はこの石コロを押し出してやる!」


地上から上空を眺めていた魔女は俺が魔力通信をしないにも関わらず頷いていた。

すでにこの空域には濃度の高いミストジャマーが無いから魔力通信自体は可能だ。

だが、こんな状況でイチイチ連絡してられん。

一秒でも早くこのテンゴクシティーをジゴクシティーに落下しないように押し出さないとならないからな。


「流石は俺の魔女。気持ちがリンクしてやがるぜ。さて、俺の仕事はこっからだ! 第一オーマスーツ・ギガバーニアン……ゴー!」


シュパ! と白い魔力粒子が展開しこのギガバーニアンモードは肩に大型の魔力推進装置を展開させ、その出力で超スピード飛行しつつテンゴクシティーを押し出してやる!






「うおおおおおお――っ! 動けーーーーーっ!」


第一オーマスーツ・ギガバーニアンのフルバーストモードで俺は必死に押し続けた!高速機動の要である両肩の大型ブースターポットから白い魔力粒子が濁流の如く噴射される……。


「こんな石コロなど、勇者魔王オーマが押し返してみせる!」


「それはエゴだわ! アリがゴーレムに勝てるわけがないでしょーに!」


エミリは美しい赤髪を風に吹き上げながら叫んでいるが俺には聞こえていない。

このままだとマジでジゴクシティーはテンゴクシティーに押し潰されて崩壊する……いや、天と地の両方の国が消し炭になる……俺がそれを回避させるしかない。だがもうこの状況じゃそれは不可能に近い。……ならせめて落下被害による完全消滅だけは避ける。俺のパワーを舐めるなよ……!


「そうだ……勇者魔王はダテじゃねー! 聞いてっかエミリーーーッ!」


「ウルサイわね。聞こえてるわよ。言葉では何とでも言える。どんなパワーがあっても人間一人の出来る事の限界を超えている以上、もう諦めることね。テンゴクシティーの質量こそダテじゃないわよ」


「すぐに押し返してやるからそこで文句でも言って見てやがれ! このギガバーニアンはいぶし銀なんだよ!」


第一オーマスーツ・ギガバーニアンを展開し、高速機動を行う両肩のブースターポッドのパワーを使ってこのテンゴクシティーを少しでも下のジゴクシティーから離れるように押し出し、被害の規模を少しでも抑えてやるぜ!

っても実際かなりキチーぜ……。

流石に人口一万人が平穏に暮らしていた浮遊都市一つをたった一人の人間が押して、落下軌道をズラすには途方も無いチートパワーがいるな。ハッキリ言って押せてるのかさえわからん状況だ……。


「……つーわけで助けろ! 魔女!」


地上の魔女に魔力通信を飛ばして俺の意思を伝える。現状は核弾頭の使用の余波で魔力通信などレーダー類を遮断するミストジャマーがこの空域に存在しないから確実に通じるはずだ。魔女が無視をしなかったらな……。






これまでの地上の魔女の行動はこうらしい。

テンゴクシティーで動いていた自身の分身であるメスパーベビーの残骸を地上で操るメスパーを発見。

そこを魔女が捕まえたようだ。

怜悧な瞳の魔女は他者の死を弄ぶような声で言う。


「いつまでも私達を邪魔するなら本当に殺すわよメスパー。今度は貴女の核ごと消す」


「核を消滅させる作戦だけにですか?」


「そう、本当の消滅よ。半魔女が魔女に勝てるとでも?」


「私は生き返りますよ。何度殺しても、何度殺しても生き返り、そしていつか魔女になりますニャーン」


相変わらずニャー……とやりたいのか、やりたくないのか全くわからない猫の招きポーズで言う。普通なら、ここでこんなポーズをされたら問答無用で殺されるだろう。しかし、この女はやる。そして魔女は答えを出した。


「よし、殺さない事にしたわ。貴女はコウハイ君の役に立って貰うわよ。彼の口癖のようにゴミ袋のように役に立って貰うわ」


「その前に魔女が消えるでしょう……」


「もう負けよメスパー。半魔女なんて力を使ってるから本物の魔女に捕まえられるのよ」


「そんな事はありませんわ。私は勝ちます。半魔女の状態でも」


「残念だけど、魔女のセンパイであるこの私には勝てないわよ。クラスチェンジが出来たとしてもね」


と、二人の女は互いを見下すように睨み合っていた。と、まぁそんな出来事が地上であったようだ。女の戦いは側から見ると怖いぜ。





どやらメスパーが超能力魔法で魔女とこのテンゴクシティー押し出し作戦に協力してくれるようだ。

魔女が出したこの戦いの中で起こる出来事がメスパーにとって必要なモノが手に入らなくなるからだ

テンゴクシティーの落下で俺が死ぬ可能性がある――。

それはメスパーが魔女へのクラスチェンジに必要な勇魔金玉が手に入らなくなる可能性がある。

このままだと魔女になれるチャンスを失うかもしれないからメスパーは協力したようだ。


「魔女はメスパーを仲間にしたのか? 一時的にとはいえメスパーが仲間になればこの最悪の状況が少しはマシになるか。にしても、メスパーが協力する条件が気になるものだな。絶対に俺の金玉はあげないからな。絶対にだ!」


その宣誓をした俺を無視する(距離が離れてるから当然だが)魔女と半魔女は魔法で俺の援護を始めた。魔女の新聞紙のステッキとメスパーのニャーンステッキから重い魔力が放たれる!


『グラビティーフィールド!』


ズウウウウウッン……と重量を逆にして落下するテンゴクシティーを押し戻す。少しづつ落下方向を変えてせめてジゴクシティーに直撃させないようにするようだ。俺も負けてられん!


「考えたな魔女め……地上からの援護は任せたぞ! うおおおおーーーーーっ!」


地上の状況をメスパーからもらったであろう魔力双眼鏡で確認した赤髪魔剣士は、更に強い気持ちで言う。


「テンゴクシティーだけは……落とすわ。ジゴクにね」


嫌な声が聞こえたぜ……。

まぁ何にせよ下の状況は良さそうた。あの二人がタッグを組んでくれればこの石ころなんて屁でもねーぜ! うおおおおおっ!と左右のブースターポッドを壊れるぐらいの全開で吹かせる。このままギガバーニアンのフルブーストで押し返してやる……!


「くそったれが! こんなデカい石ころを一人の人間が動かすなんて……アニメじゃないんだぞ!」


確実にテンゴクシティーは真下への落下軌道から真横への軌道へと移行してはいる。すでにどこに逃げても無駄だと悟るジゴクシティーの人間達は魔法防御結界を張ってその中に防空壕のように隠れ出していた。ズズズ……と空気の摩擦に襲われ続ける俺と魔女と判断魔女の気迫が数多の人間を救う為にテンゴクシティーの落下を望む赤髪魔剣士エミリと戦い続ける。

無言のままエミリは俺達が押し出しているテンゴクシティーの端にて無駄な抵抗を……と言わんばかりの冷ややかな視線で腕を組んでいた。

こっちも下界からの魔法援護があるとはいえ、元々の質量がとんでもねーからな……。当たり前のように下界の援護を期待し過ぎるのもよくねー。俺は俺で自分の限界を超えて全開で押し続けるしかない! だから!


「ここから……動けぇー!」


絶対だ! 絶対にここから動かしてやる! 魔力が尽きたらこの俺の命を燃やしてやるだけさ! これ以上無関係な人間を殺してたまるか! 俺は世界最強の勇者魔王だぞ……!


(何だ? 力が……溢れる?魔力が尽きそうな俺の魔力がだんだんと回復してやがる……だと?一体何が? まさか魔女か――)


ふと、自分の魔力がだんだんと回復する事に違和感を覚える俺は下界を見つめた。すると、下界の人間達は空に向かって全員が手を上げてやがる……。その全ての力が魔女により収束され、この俺の魔力に還元されてやがる……。そしてその名もなき民の声が聞こえた。


「勇者魔王ーーーっ! 俺達のジゴクシティーを助けてくれーっ!」


「そのテンゴクシティーを何とかここにぶつけないようにしてー! まだ子供が生まれたばかりだから死にたくないのー!」


「勇者だか魔王だかわからんが、お前にこの危機的状況を任せるぜ! みんなのパワーを受け取れコノヤロー!」


この光景を見つめるエミリ以外の思いが一つになり、この俺に新しいパワーが注ぎ込まれる。これはミストジャマーが無いから地上の人間達が自分達の魔力をこの俺に与えているという事……ったく、みんなの元気を分け与えてもらってるような状況じゃねーかこの勇者魔王オーマがよ。けど、あんがとよ……これで……一気に押し出してやるさ!


「……みんなの思いによってパワーが上がるのこの俺様のギガバーニアンは!ダテじゃねーーーっ!」


グググ……オオオオオオーーーッ! と浮遊城テンゴクシティーは一気に加速するように押し出され始める! それはまるで自分の意思を持った城が動いているような光景だが、それは違う。これはこの場にいる人間達の熱い思いが奇跡を実現させて動かしてるんだ……奇跡なんて人が大勢いれば起こせるものなんだよ!

すると、エミリは血相を変えてこの状況の変化に戸惑い出す。


「ジゴクシティーも民がテンゴクシティーの消滅を望んでないの? 今まで食い物にされて来たのにテンゴク人を憎んでいない……。そうか、この状況がそうさせてるのね。そうよ! そうに違いないわ! 人は人を憎む事でしか生きられない生き物なんだからそうに決まってるわ! アハハハッ!」


「黙って見てろエミリ! クソッタレがーーーッ!」


ブフオォォォォ! と白い閃光であったギガバーニアンから吹き出す魔力粒子はやがて虹色になり、この場にいる人間の思いが奇跡を生み出しているという事を赤髪魔剣士の復讐人に否応無く知らせる。俺のいる場所は空気摩擦による凄まじい風圧でテンゴクシティーの下部ゲート付近にいるエミリも俺には近づけない。

ひたすら必死にこのデカイ石コロを押し続ける戦いも――終わりを迎える事になった。


「そんな……あり得ない……こんな事が起こるなんて……。私の作戦はここまで完璧だったのよ? 勇者魔王オーマの核弾頭アトミックフレイヤの封印を解いて回収し、起動させる為に勇者魔王と接触して妊娠させられそうになりながらも私は何とか起動させる為の魔力を得た。そして今日、核弾頭を使用して勇者魔王を引きつけておいて裏で進行させていたテンゴクシティーの浮力を無くして地上のジゴクシティーを消滅させる天地消滅作戦を成功させた……はずだったのに……こんな……こんな虹色の奇跡を起こすなんて! あり得ない……あり得ないのよ!」


「あり得ない事なんて人生数多あるぜ。俺がその実例だ。異世界に魔女により無理矢理転生させられて、今や魔女と共に戦ってる……。ハッキリ言って俺の人生は波乱万丈過ぎねわけわからん状態だ。けど、結構楽しんではいるさ……それは普通の人間にも訪れる事だ。これからこの異世界は大きく変わって行く……あり得ない事なんて無いんだ!」


「減らず口を! まだ全てが終わったわけじゃない! 私の復讐はまだ潰えていないわ!全壊は無理でも半壊はまだ望める状況よ……このピンチから逃れられるかしら! 勇者魔王オーマっ!」


「へっ……こんなピンチはピンチじゃねーんだよ! 俺は勇者魔王オーマ! この世界の……奇跡だーーーっ!」


そして、浮遊城テンゴクシティーは地上にあるジゴクシティーの真横に落下し、互いの国の完全崩壊は避ける事が出来た――。これにてエミリの天地消滅作戦は失敗という結界になった。後は、復讐人の赤髪魔剣士エミリとの決着をつけるだけだぜ!



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