赤髪魔剣士エミリの真の作戦・天地消滅作戦
その真紅の黒の核弾頭二つは衝突し、シュパアァァァーーーー! という世界の夜明けのような凄まじい光が周囲の全てを照らし尽くした! 台風程度じゃすまないようなありえないほどの衝撃が空間を破滅に導くように空域を襲う。
大気は乱れ、雲は霧散し、この浮遊城テンゴクシティーを浮かせているミストクラウドさえも大部分を消失させてしまう。そして大きな衝撃は空域から抜けていき、テンゴクシティーの入口となる浮遊城の下部分と、真下にあるジゴクシティーの高い建物などの一部が衝撃で消滅する。下界の人間達は年に一度のテンゴクフェスティバルで盛り上がっていたが、もう頭上で起こっている異変に気づいてしまったようだ。
地上も風圧による衝撃でケガ人も多数出てるようだからな。魔女はおそらく地上にいる半魔女メスパーと戦ってくれてるはず。……まぁ、とにもかくにも天と地の双方共にアトミックフレイヤによる完全潰滅だけは真逃れたぜ。
「……とりあえずは助かったか。だがこっからが本番だ。赤髪の復讐者はまだ止まってないからな」
核の熱対策をしてない赤髪魔剣士エミリがここまで核に接近していた以上、どこかに安全地帯があるのは明白。人間など簡単に燃やし尽くす核の熱エネルギーを回避できる穴があったはずだからな。
それは俺の考えと同じ核の爆発の中心部で回避したはずだ。
まさか使うまいという楽観で俺は爆発の中心部だけは無になるような安全地帯を発生させられるようなエリアを形成させて核を生成した。それをかつてのテスト爆発で知るエミリは利用し、この凄まじい爆発の中を無傷で生き残りテンゴクシティーにまた足を着けていた。熱を帯びた風が、エミリの真紅のポニーテールの毛先を揺らす。
「やっぱエミリは生きてたな。核の爆発した発生源の周囲の半径数メートルの空間だけは安全地帯。そこまで知ってやがったか。一度目の実験爆破の時に発見してたようだな。メスパーもこのまま魔女にクラスチェンジさせるわけにはいかんな……」
「もう魔力も体力も尽きてる貴方に何が出来るの? 地上にいる魔女はここにはすぐに来れないわ。負けを認めて私を妊娠させるのを諦めなさい」
「へっ……勇者魔王舐めんなよ。俺は……」
と、会話の途中で俺は先手必勝! と言わんばかりに素早くハンドガンを構える。
戦いは勝ったものが勝者だからこの作戦は卑怯でもクソでもない。
勝たない戦いなんてただの自己満足に死ぬ理由に過ぎんからな。
それに反応出来ないエミリはまだ愛刀・ブラッディソードに手をかけてもいない。
これは俺のクイックドロウが勝つ。
そのエミリは俺に反応が出来ないんじゃなくてしなかったようだ。
何故ならこの女の復讐作戦は始まりのプレリュードに過ぎなかったからだ――。
「?何だ……身体が傾く? 浮遊城テンゴクシティーが落下し出してる……? ウソだろ……? こんな急速に落下するような被害はテンゴクシティーは受けてねーぞ?」
エミリの心臓にハンドガンを向ける銃向がやけにズレると思いきや、浮遊城テンゴクシティーが急速に落下し出してた! マジかよ!
「まさかここを浮かせてるテンゴクシティー下部のミストクラウドがかなり消失したからか? エミリ……これが天と地。二段構えの意味か……?」
コイツはヤバイ状況だ!
おそらく大混乱になってる下界は魔女に任せるしかないか……。
つくづくテンゴクフェスティバルの日を狙って来たのがエミリの狙い通りでムカツクぜ!
勝った……という優越感に浸る宝石のような真紅のの瞳を輝かせるエミリは俺に語りかけてきた。
「人は何故何もしないテンゴク人の生贄にならないとならないの? ただ与えられるだけの存在は愛されてるからこそ成り立つ。テンゴク人にはそれが無いの」
「確かにそうだな。だが消すのはテンゴク人だけでいいだろう? 何故地上の人間達も巻き添えにする?」
「人の上に立つ幸せなど無いからこそ、私はこの都市を消すの。悪には滅んでもらうわよ」
「悪が滅ぶのはいいが、それなら復讐対象は限定されるはずだぜ?」
「この地上の人間も同罪。人間を生贄として当たり前のようにテンゴク人へ渡していた事をおかしいとも思わず逆らいもしない人間など、生きる価値なし。私の事を信じられない国民などはこれからのこの国には不要なの」
「それでもお前を信じる女はいるんだぞ? 少なくともメスパーはお前を信じているからこそ協力した。この歪んだ国の人間の心を正すためにな」
「詭弁はいいわ。もう私に仲間はいらない。必要なのは風化しない復讐心のみ」
「……全てを消すのは楽だ。しかし、生きて罪を償わせる方が奴等にも地獄を味あわせる事が出来て楽しいんじゃないのか?」
「……」
「お前はそこでここの人間がまたテンゴク人に虐げられる愚民にならないか監視すればいい。また同じ事をしたら容赦無く斬れ。そうすればこの国の腐った根性も変わるだろう。お前が変えろ」
「フフフッ……誰もここの都市とは言ってないわよ。諸悪の根源は種の芽まで潰す。二度と目が咲かないようにね」
この感覚……まさか!
勇者の超直感の感覚が、俺の思考に一つの答えを生み出した――。
「やはり本当の目的はテンゴク都市を消す事だけじゃなく、地上も含めた二つの都市を消す事だ。そうだなエミリ!」
「アハハッ! 残念ながらアトミックフレイヤは貴方のおかげで完璧な働きをしてくれたのよ。つまり、天と地の両者に一次被害として半壊する被害を与え、二次被害として魔力制御を失ったこのテンゴクシティーはジゴクシティーに衝突し、頭上の悪夢から解放されると同時に下界の人々はテンゴク人と共に恐怖に慄きながら死んで行く……最高の仕置きだわ。赤髪魔剣士エミリの復讐はこれで全て終わるのよ……私を妊娠させたい童貞の貴方はその語り部になってもらうわ勇者魔王オーマ」
「テメェ……かわいい顔して最悪な事をしやがる。一体どれだけの被害が出るかわかってんのか? 一万や二万じゃ済まないぞ……十万近い犠牲者が出る事がわかってるのか……? それも今はテンゴクフェスティバルで他国の人間もいる? それをわかってるのか?」
地上のジゴクシティーと天空都市であるテンゴクシティーを同時に消す、天地消滅作戦か!俺は全身を包むブラックマントの下に隠しているハンドガンのトリガーに手をかけている。
「……ならお前を散らしてからこのテンゴクシティーの落下を止める!」
「ならやってみなさいな」
「散れ――」
ハンドガンの照準をエミリの心臓に向けて構える――が、突如バランスを崩して俺は転んでしまう。何もされてないのに転んだ? どういう事だ――?
「……何だ!? まるで地震のような揺れが起きてる……浮力が異常な数値になってる? 安定してないのか?」
どうやらテンゴクシティーがメスパーの仕掛けた魔力で急速に落ちてるようだ。この勢いだとまともに立ってるのもやっとだぜ。
(これがエミリが考えてメスパーが実行した罠か……。奴しかこんな仕掛けは出来ないからな。やってくれるぜメガネ半魔女が!)
足元の揺れに気をつけながら俺は言う。
「メスパーがこのテンゴクシティーにベビーとしていた意味はこの落下を狙っていたからか。核はその事から目をそらさせる為の布石。やってくれるぜクソが……」
と、その間に赤髪魔剣士エミリは姿を消した。
……そもそも奴等は根本的に核なんて重要な物じゃなかったんだ。
全ては核という三ヶ月以上前に俺がヘブンリーシティーで使ってしまった大量虐殺兵器に目を向けさせておいて、実際は地道にテンゴクシティーの浮力を無くすだけで天と地の双方を消滅させる事が出来る。そんなシンプルな作戦だったんだ。このエミリの復讐計画は……。
「ここが落下してるならテンゴク人を逃さなきゃならん。奴等も今やただの人。無駄に死なせるわけにはいかんな」
そして俺は大きな火事になりだしているテンゴクシティー内を駆ける!
もうテンゴクシティーのテンゴク人はパラシュートで逃げ出してるな。
このパラシュートは俺が死の商人テンパに授けた技術の一つ。
(おそらくテンパは裏でテンゴク人に接触してた可能背がある。ったく商売上手がよ……)
と考えていると、一つの民家にてガサゴト! という露骨に何かを物色してる音がする……。
泥棒?
いや、この状況でありえんか……。
まだ逃げてないバカがいやがるのか!?
ったく、こんな所にいたら死ぬぞ!
それは、紺のスクール水着を着た水色ツインテールの超巨乳美少女だった。口の周りについたのり塩が、ポテチを食ったという証拠を残している。このポテチ好きのスク水スライム乳は一人しか俺は知らない――。
「おいニート! とっとと逃げろ! このテンゴクシティーは落下してるんだぞ!」
ニートの奴はテンゴクシティーの財宝を風呂敷に入れて集めてやがる。火事場泥棒とはコイツの事だな。
「財宝を集めてる場合じゃないぞニート。このままだと落下に巻き込まれて死ぬ」
「ひゃー!? 勇者魔王とニートは死にました! になるね! でもこの財宝を売れば働かなくていい本物のニートにクラスチェンジ出来るからな……この財宝だけもらってトンズラするわ」
「それはダメだ。それはこの国の宝であり、これから先も必要な物だ。それにお前が回収した財宝は魔眼で全てはお見通しだ。回収した財宝は後で返してもらうぞ。返されねば貴様のスライム乳を散らす」
「待って! 待って! あそこにまだテンゴク人いるよ?」
「ん? 確かにいるな……」
パラシュートでここから逃げる為に駆けていた生き残りのテンゴク人が何も無いところでいきなり倒れる。
何をしてるんだこのテンゴク人は……?
パラシュートが背中にあるなら早く逃げろ。
足を怪我してるようにも思えない。
「……それよりニート。あれ? ニートは?」
その間、ニートはどこかへ逃げたようだ。
まぁニートは後でいい。
流石の俺も体力も魔力も尽きた状態でいるのが辛くなって来て、倒れていたテンゴク人に辿り着くまでにコケてしまう。カッコ悪いがこれが今の俺のパワーだ。ニートからポテチ盗んでおくべきだったか? すると、女のテンゴク人が倒れる俺の手を握った。
「大丈夫ですか勇者魔王さん?」
「あぁ、悪いなお嬢さん。君もパラシュートがあるなら早く逃げる事だ。俺があそこに倒れる奴は助けておく」
すると、その地面に倒れていた男のテンゴク人は何かに覚醒したような顔で言い出す。
「テンゴク人が人間風情に手を貸すとはのぅ。このテンゴクシティーの高貴な存在が地上の人間に手を貸すなど言語道断。消えるがいいぞぇ」
「この感覚……テンゴク王か。テンゴク王が仲間の邪魔をするのか……?」
勇者の超直感が教えてくれる。
どうやらコイツは地上に降りていたテンゴク王だ。
地上のテンゴク王は死んだんだろう。
おそらくメスパーあたりが殺したのか?
そしてこの男が今はテンゴク王。
生まれた順番で王を継いでいくシステム。
さっき倒れた理由は継承した時の影響か。
コイツが死ねば今度はどいつがテンゴク王なのかは知らんが、今はそんな事はどうでもいい。
「勇者魔王がしたい事は大体わかるぞぇ。このテンゴクシティーの浮力を安定させるにはソコのピラミッド型の浮力装置の一つに魔力を注ぎ込むだけじゃ……。その装置はこのテンゴクシティーの色々な場所にあり、どこから魔力を注入しても浮力装置に直結してるのだ。だが勇者魔王その前に話がある」
「何だ?」
「ワレ等はソチの核を欲している。一撃で五万もの人間を始末出来るなら天からの絶対統制はより完璧なものになるであろうぞ。また生成してワレによこせ。そしてワレに仕えよ」
「その当然のように言うその言い方、悪くない。だがお前は死ぬべきだ。これからの天と地の都市の為にな」
「主は勇者魔王。魔王の要素があるから平然と他者を殺すか?」
「魔王の要素じゃなく勇者として殺す。勇者として正しいと思う事をするだけだ。故にテンゴク王。散れ」
「主はやはり子供よのぅ」
「強がりはよせ。もう死んでるぜ?」
タァン……とバンドガンで心臓を撃ち抜き始末する。そしてピラミッド型の浮力装置の一つに俺はテンゴク人の女から魔力回復のエーテルをもらい多少回復させ、その全てをソコに注ぎ込む。これでこのテンゴクシティーの落下は阻止出来たはず。後は地上に降りた赤髪魔剣士エミリを倒すだけだ! 俺はテンゴク人の女に感謝し、急いでパラシュートで逃げろと急かした。
「さて、後は俺も脱出しないとならん。どこかにパワシュートがあればいいんだが……探すか。商売上手なテンパならこの都市に余計に納品させてるはずだ」
俺は火の手が凄まじいテンゴクシティー内を駆けた。浮力さえ保ってくれれば体力と魔力を回復させて明日にでもテンゴクシティーを何とかしにくればいい。ここが火の手で全焼しても地上に降りてるテンゴク人が自力で復興させればいいだけだからな。このテンゴクシティーが残ってれば後はここに住む者の問題だ。そして、俺は未だにエルフ耳を隠している赤髪魔剣士エミリとの最終決戦を迎えなくちゃならない。
地上に降下したらおそらく魔女が見つけてるであろうエミリとの交戦に入る。今日、ここであの赤髪魔剣士はこの勇者魔王オーマが倒すんだ……!
「……!何だこの感覚は!?」
俺の勇者の超直感に衝撃が走るーー。
どうやら真っ直ぐ駆ける俺の視界が斜めになつまてやがるぜ。
まだ……地面が傾き続けてるだと?
すでにテンゴクシティーの浮力は回復させたはずだぞ?
まさか……まさかーー!
「! 待てよ……浮力が回復したはずのテンゴクシティーの落下が止まらない!? どういう事だ!」
まだ、テンゴクシティーの地上への落下は治まっていなかったんだ。このままだとテンゴクシティーは地上のジゴクシティーに衝突し、天と地の二つの都市は数多の命を呑み込んで消滅する……!




