赤髪剣士エミリとの最終決戦
赤髪魔剣士エミリはテンゴク人とジゴク人のハーフだったーー。その俺の真実の答えに民衆は驚き、ザワめきが起こる。そして、その言葉を一番重く受け止めているこのジゴクシティーの王がようやく重い口を開いた。
「もうよい。このジゴク王が全てを語ってやるさ……このワシの罪をな……」
エミリはジゴク王の実の娘だった。
かつてジゴク国王は疫病にかかり見捨てられたテンゴク人を助けた。テンゴク人は疫病などをフェスティバルの際に引き渡し、ガス室に送る事をしていた。エミリはその時に出来た子供。
しかし、正当な手段でテンゴク人の子を産んでない為にバレたらマズイ事になる。だからジゴク国王はエミリの母をガス室に送り、子供共に死なせる。だが、ジゴク王は子だけは母の思いから殺せずにいた。その子はテンゴク人のように耳の尖りが無い為に街の子が欲しい不妊の家族に渡され、年月が過ぎた。そしてその子の耳は成長と共にとがり出し、そこでテンゴク人の血が交わっていると気づいた育ての親はジゴク王に対して反乱を企てるようになった。そしてジゴク王は反乱を鎮圧し、育ての親を殺害すると自分の手でエミリの背中にZの魔力烙印を植え付け、自分に復讐する復讐者になるように祈って川に流した。
その後、エミリは数多の血で髪が赤くなった呪われた女になった。魔力烙印から開放されるジゴク王の意識が断罪者・赤髪魔剣士エミリとして成長させ、復讐人としてこの地に帰還した――。
「ありがとよジゴク王。これで民衆もエミリもスッキリしただろ。だが、ここまで来た以上エミリの復讐の刃は俺が受けてやる。全員黙って見てろ。この勇者魔王オーマがこの天地消滅事件の決着をつけてやる」
「以外ね勇者魔王オーマ。まさか戦わなくていい戦いをするなんて。案外、勇者やってるじゃない」
「まーな。それに俺はお前を妊娠させる義理と義務がある。勝って征服してから妊娠させた方が男らしーじゃねーか」
「この期に及んでまだ妊娠にこだわるか! この変態め!」
「男が変態じゃなきゃ、この世に人類は繁栄しないんだよ。おれに俺は変態じゃねーぞ? ド変態だ」
と、自分の親指を自分に向けて言い放つ。
明らかに周囲の空気が一変するがそんな事は知らん。
流石のエミリも固まってやがるな。
そんな緊張してたら濡れないぜ?
「し、失笑ものだな勇者魔王オーマ。所詮は童貞か。笑われる童貞だ!」
「笑われて生きるぐらいがカワイ気があっていーんだぜ? エミリちゃんよ?」
「バカを言うな……おかげで私の過去をジゴク王が話した事で動揺があったが冷静になれた。バカに感謝する」
「濡れて来たか。なら前戯は終わりだ。夜の戦に参ろうか」
テンゴクシティーが落下したジゴクシティーの荒れ果てた残骸の上で、勇者魔王オーマと赤髪魔剣士エミリの最終決戦が始まる――。
※
乾いた風が流れ――テンゴクシティーの落下したジゴクシティーは静まり返っている。
勇者魔王オーマVS赤髪魔剣士エミリ。
テンゴクとジゴクの全ての人は崩壊した瓦礫などの上に座り込みこの光景を見つめる。
さぁて、クライマックスだぜ!
「とうとう俺達の関係もラストだな赤髪魔剣士エミリ。今日はお前と付かず離れずの関係だな。ったく魔のつく女はメンドーでしょうがねーぜ」
「……」
「……ここまでの道のりは長く感じたぜ。たかだか二週間ぐらいの日々だったがオメーさんのおかげで楽しい日々だったぜ。封印して隠してあった核弾頭アトミックフレイヤが強奪され使用された。そして核弾頭回収作戦をやらざるを得なくなり、この国の闇を知ることになりつつ、この終局まで来た。このジゴク大陸の首都もとんだイメチェンしちまったしよ……最高の日々だったぜ。そう、最高だったんだよ……」
「……」
「……とうとうこの天地消滅作戦であるお前の復讐もここで終わる。俺の核を無断で復讐に利用し、そして使用した事の罪に罰を与える。それがこの俺、勇者魔王オーマだ」
「長々とコッチが相づちも打たないのにつまらない回想を聞かせてくれるわね。復讐なんて私が本当に殺す気があればすぐに終わるのよ。それにこの一騎打ちでは私の勝ちよ。一度回復しても残りの魔力は少ないでしょ。もう虎の子のオーマスーツは使えないんじゃない?」
「なぁに。お前相手にはオーマスーツを使う気が無かったから丁度いいさ。俺の真骨頂はオーマスーツじゃなく生身の戦闘さ」
「言うわね勇者魔王。私のクロスレンジに入ったら死ぬわよ……」
「ゼータスラッシュか。嫌な居合抜きだぜ全く」
「そのダサい勇者冠ごと、頭を飛ばしてあげるわ」
「これは魔女の呪いがある勇者冠。このダサさも案外粋だろ?ま、呪われてて外れないだけだがな」
そんな雑談も終わり、Zの閃光のような速さで敵を斬るゼータスラッシュの構えに出るエミリと、満身創痍ながら気持ちは充実する俺との最終決戦が始まる。
ズバババッ! と俺は両手のサブマシンガンを接近しながら放ち続ける! それをブラッディーソードを旋回させながら全て防ぐエミリは凄まじい気迫で迫る俺に言う。
「距離を取らない!? 狂ったか勇者魔王!」
「どうせいつかはクロスレンジに入る時が来る。なら流れの中で入った方がマシなのさ。止まった状態からだからお前のゼータスラッシュは絶対不可避なんだよ」
「戯言を!」
シュン! という高速の一閃でエミリは身体を地面につけるような動きからすくい上げるような斬撃で両手のサブマシンガンを破壊した。たがすでに俺はダイナマイトを生成して無数に投げつけていた。カッ! と目を見開くエミリは刀の風圧で全てを自分にダメージが無い場所まで飛ばし起爆させる。空間に爆音が響き、涼しい顔のエミリは言う。
「さて、ここでまた距離を取るんだろう? 今度は上空にでも逃れたか?」
「俺は目の前だ!」
自分で放ったダイナマイトのダメージを受けつつ、エミリのクロスレンジにバレないように侵入した! 両手に構えたダガーでエミリの首筋を切り裂こうと迫る――。
「――もらった! 終わりだエミリ!」
「だから私にクロスレンジで勝とうなどとぉ!」
確実に反応出来ないはずの赤髪魔剣士は俺にクロスレンジに不意に入られた事で激怒し、その刃はダガー二本と激突した。
「……っ! これに反応するとはやるな!」
「このまま殺してやるぞ勇者魔王! そのダガーじゃ何もできまい……」
「そうだ。もうダガーの出番は終わりだから爆発させるぜ」
「? 爆発? まさかそのダガーの柄にある丸い物体はーー」
「そう、これもダイナマイトさ」
瞬間、俺とエミリの目の前でダイナマイト二つ分の爆発が起こる! その余波でダメージを負う俺達はこのまま互いを見失わないように殺意を持って動く。視界が死ぬ黒煙の中で魔力レーダーで場所だけは確認し、背中の魔力排気熱を利用した剣・ヒートソードで斬りつけるが跳ね返された。態勢を崩しつつもすぐに胸元から取り出したハンドガンで射撃し、俺の肩にブラッディーソードを食い込ませていたエミリの右腹部を撃ち抜く。
「……くっ! この至近距離で飛び道具とは!?」
「俺は元々ガンマンだぜ? そして、ここままエンディングだ!」
シュパアァ! と漆黒のハンドガンが真紅の魔法銃・大魔法を撃ち出す弾丸を放つスペルガンに魔力変形させた。この一撃でこの事件の全てを終りにしてやるぜ――。
俺が今回受けた痛みの全てがスペルガンの弾倉に収束して行く……。
「今回は弾丸は痛み。この事件で受けた痛みの全てをお前に返してやるぜ……ペインファンターージィーーーッ!?」
ズゴォ!といきなり腹に強烈な拳をくらった! コイツ! 腹に弾丸くらってこんな攻撃を!?
「ぐうぅ!? ――のぉ!」
と、俺も殴られてからカウンターでエミリの顔面を蹴り上げた! 両者は後方にブッ飛んで地面を転がる。息もつかせぬ攻防戦にテンゴク人とジゴク人は茫然とこの光景を見つめ、死が近づく戦闘の興奮で魔女はとても嬉しそうに微笑んでやがる。……半魔女になるメスパーも一緒に微笑んでやがるぜ。魔女と半魔女が並んでる光景は……ヤバイな!
「……ったくここまで腹を殴られるのもあまり無いから内蔵が口から飛び出る所だったぜ。まるでハンドガンで腹を撃たれたダメージが無いエミリさんよ。答えてもらおうか?」
「……」
そしてべっ……と口から血を吐き出し立ち上がるエミリは俺の蹴りによる脳震盪の影響も無く言う。
「私は魔力を筋肉に使ってるから傷口の周囲の肉に意識を集中すれば止血はすぐに出来るのよ。今のでハンドガンの一撃は身体が記憶したから不意をつかれない限りは耐えてみせられる。さぁ、殺し合いを続けましょう……貴方が死ぬまでの殺し合いをね!」
迫るエミリの猛攻をショートソード二刀流で防ぐ!あまりにも凄まじい攻撃力にこっちの研ぎ澄ませてあるショートソードにもヒビが入って来やがったぜ。一瞬の隙を無理矢理作り出すしかないと思いつつ、カウンターのチャンスを狙う。
「もうこの私の絶対領域からは逃げられないわよ! このままなます斬りにしてからトドメにゼータスラッシュで殺す! 殺すわ!」
「死んでたまるかよ! コッチも勝つしかねーんだ! すでに背負ってるモノの多さが違うんだよ! お前のような利己的な目的にいつまでも付き合ってられるか! 散れ!」
「散るのは貴方よオーマ。さっきから防戦一方だけど、変に戦い方を変えるから負けるのよ。卑怯で臆病なガンマンが、戦士として誇りのある剣士の領域に来るから貴方は終わる。こんな国の民の気持ちを背負ってるのも敗因ね。アハハッ! 笑えるわ……」
「お前の思う俺の戦い方じゃ勝てないだろう。だからあえて戦法を変えてる。対応出来ない内に勝つさ!」
「そんな付け焼き刃でこの私に勝てるか!」
「勝ってやるさ」
シュパ! と不意打ちをくらわすように、鉄甲に仕込んでいるアサルトアンカーを射出しエミリのブラッディーソードを絡め取る。
「これで相思相愛だなエミリ。望み通り妊娠させてやるぜ。せいぜいカワイク喘いでくれよ?」
「バカじゃないの。こんなチャチなワイヤーじゃ、ブラッディーソードも私も拘束は出来ないわよ。死に……」
「左のアサルトアンカーはブラッディーソード。なら右はどこだと思う?」
「くっ!? ――足か!」
そう、左のアサルトアンカーを囮にして、俺はエミリの動きを止める為に右のアサルトアンカーで右足の自由を奪っていた。そして腕の力でこのままエミリを地面に叩きつけてやる!
「そーら! ひっくり返れよ!」
グルンッ! と回転する――のは俺!?
ガスッ……! と逆に地面に倒されてしまい、背中を踏まれたまま俺は屈辱を感じる態勢になる。ハハハッ! と強く足に力を入れるエミリは優越感に浸り断罪者の声で言う。
「勇者魔王ともあろうものが哀れなものねぇ? そもそも、魔力を筋力に変えてる私にパワーで勝とうなど甘い!」
「俺も右手は勇者、左手は魔王の力があるからパワーはある方だがそれを上回るなんてとんだ跳ねっ返りだぜ。それでこそ魔のつく女だ! 惚れそうだ!」
「つまりは妊娠させたいのか?」
「だーかーら! ま……そうかもな?」
「ふざけるなぁ!」
ヤッベ!
軽く挑発するつもりがマジでキレたな!
ったく筋肉バカは無駄に勢いがつくとくどくてしつこく攻撃してくるから嫌だぜ。
そして、無垢な殺意を持つブラッディーソードの切っ先が俺の背中に刺さる――。
「死ね! 勇者魔王オーマ! これからこの国の人間を一人残らず殺してやるわ! Zの烙印を与えてね!」
「まだアンカーで互いが繋がってるんだよ! 相思相愛ってのを忘れたのか? 爆散しやがれ!」
「ば、爆導――」
「――索だ!」
アサルトアンカーの鉄甲から電流を流し、ワイヤー内部に仕込む超小型の爆弾を起爆させ爆導索を使って、エミリを爆破した! 自分自身を巻き込む大爆発に、周囲の民衆は驚きの声を上げ、長い黒髪を爆風でなびかせる魔女はただ一人不敵に微笑んでいた。流石は俺の魔女だぜ。さて、とどめと行こうか!




