金髪巻き髪幼女の恐怖と姿を現す赤髪魔剣士
ジゴクシティーの真上に存在を隠すように存在する天空城・テンゴクシティー。
そこにはジゴクシティーから金や物資などの養分を何もせずに吸い上げるテンゴク人と呼ばれるエルフ耳の人種が存在していた。その人種は数は一万ちょいと下界の人間から比べれば少ないながらも、眼下のジゴクシティーから神と崇められて生きている連中だ。俺はその人種の調査とこれから始まるテンゴクフェスティバルでの行動に牽制をかける為に第一オーマスーツ・ギガバーニアンで飛行しながらテンゴクシティーを目指し、そこに現れた警備兵のオートマンという魔力で動く機械人形を倒した。すると突如、目の前に現れた金髪幼女パンテとの戦いに俺は戸惑っていた。
(コイツはどう見てもゴールドキングダムの死の商人テンパだ。すでに始末したはずなんだが、生きてやがってのか……? パンテじゃなくてチビテンパと呼ぶぞこの野郎)
どうにもパンテという名前が気に入らず俺はイライラする。
その金髪巻き髪幼女パンテは幼女に相応しく無い妖艶な男を誘う笑みで言う。
「ここでテンゴクシティーのテンゴク人に警戒されては困るのよぉ……。テンゴク人が地上に降りて来なくなるからねぇ」
「その陰鬱とした甘い喋りはやめろ。なんかイラつくぜ」
「あらん? そんなつれない事は言わないでくれる? せっかく戦えるんだからねぇ」
「俺の前に立ち塞がるなら女、子供でも容赦無く殺す。この世界の女、子供は凄まじい魔力を隠している奴は数多いるからな。容赦はしないぞ」
「容赦してよ、勇者魔王オーマちゃん♪」
「その甘ったるい喋り方をやめろと言ったはずだぜ?」
そう……何か俺をイラつかせる感じが鬱陶しい。そして、コイツからは危険な香りしかしねぇ。こんな所に現れる金髪幼女なんて、ロクなもんじゃねーだろ……なので!
「散れ」
バシュ! と俺は問答無用でショットライフルを射撃した。この金髪幼女はさっきのオートマンと違って人間タイプの警護兵だが、一撃で終わらしてやるさ。そのショットライフルの弾丸は、突如現れた金髪幼女の黄色いワンピースの左胸を突き破り、心臓を撃ち抜く。吹き出る血と、唖然とする金髪幼女の歪んだ顔を見て俺は淡々と言う。
「心臓に直撃。散ったか」
スッ……と金毛マントで浮遊していた金髪幼女は落下した。すぐさま気持ちを切り替え、頭上に浮かぶミストクラウドの奥にあるテンゴクシティーを想像して見据える。
「何かよくわからんザコだったな。まぁとにかく、俺はテンゴクシティーに侵入して天国人に出会いテンゴクシティーの謎を解き明かす」
「それはちょと待ちなさいよん……」
「……!? お、お前!?」
何と!
金髪幼女は俺に心臓を撃ち抜かれて死んだと思いきや、生きて俺の足をつかんでやがった! 口から流す真っ赤な血が、俺の全身をゾクゾクと刺激する……。
「心臓が無いのか。なら全身を散らしてやる」
「心臓はもう無いよ。誰かさんのせいでねぇ……パパパ」
「その甘ったるい喋り方が気に入らん。散れ」
無表情のまま俺はショットライフルを金髪幼女めがけて連射する。だが背中の金毛マントをなびかせて回避行動に出た。その中で、俺は不可解なモノを感じてしまう。
(俺のショットライフルの弾丸が紙一重で当たってやがる……が直撃じゃない。俺の射撃をこうも回避するなんて、やるじゃねーか。燃えてきたぜ!)
こうなったら絶対に金髪幼女を撃ち落としてやるぜ。絶対的な恫喝力を持つミストクラウドに包まれるテンゴクシティーの真下で、俺は謎の金髪幼女との戦いが始まった。
ババババッ! と俺のショットライフルの高速射撃が金髪幼女を襲う。その金髪幼女は金毛マントをなびかせながら空中をゆらゆらと不安定に飛行し、俺の弾丸を回避する。ギガバーニアンの全身の姿勢制御スラスターを小刻みに吹かしつつ、不規則な動きをしやがる不可解な敵を次第に追い詰めていく。
「もうそろそろ俺の射撃がお前を撃ち抜く。ゆらゆらしてるが、だいたいのパターンは読めた」
「パターンなんてパパパ!」
「意味わからん。散れ」
敵の金髪幼女は幾度か俺のショットライフルの弾丸の直撃を受けつつも、まだ平然と飛行しつつカウンターで金の矢を放ってくる。
「ゴールドアロー!」
「ぬるいわ!」
パッ! と俺はそのゴールドアローを左手で掴み取り、へし折りつつ右手のショットライフルを逆カウンターで射撃する。
「ヘッドショットになったが、頭を撃ち抜いた。これで意識は消えてるはず。後は全身に撃ち込んで終わりだ」
スッ……とショットライフルを全身に撃ち込もうと構えた。
「ゴールドファング」
瞬間、凄まじい勢いの獰猛な金毛爪が俺を襲う! ショットライフルを犠牲にして、俺は金髪幼女の決死の一撃を回避した。にしても……まだこれだけの力を……。
「おいおい……少し髪を盛ってやがったのか。俺が当てたのは頭の頭頂部じゃなくて髪の毛だったのかよ……やってくれるぜ」
「こっちもパワーが落ちてるんでね。小賢しい事もするわん」
「小賢しいには小賢しいが、それだけでは説明出来ないほどなかなかいい動きをしてるな。もう魔眼を使って仕留めてやる……光栄に思え!」
俺は左目の魔王の魔眼を発動させようと左目に意識を集中する。すると、金髪幼女は何故か微笑んでいた。丸い瞳の奥を縦に伸びる獣のような獰猛な悪意を見せながら――。
「魔眼を使われたら動きを先読みされてこっちが落ちる。そうはいかないわん♪」
という言葉と共に金髪幼女のーー怪しい金髪が光った!
「ミストゴールドサウザンド」
魔力レーダーにも反応しない金の無数の針が俺を襲う!視界だけで反応した俺は、魔眼に集中してたのもあり反応が遅れる。
「チィ! ――ぐおおっ!?」
俺はその金色毛針の直撃を受けて地表に落下する――。勇者の超直感の反応で魔眼の発動から、右手の勇者烙印から光の絶対防御・ライトシールドを生み出していた。
(……何とか耐えたな。魔力反応がないだけに、それほどの威力じゃなかったのが幸いしたか。にしても……)
体制を立て直しつつ、敵の今の攻撃を考えた。
「何だ今のは? ミストジャマーのレーダー無効化を利用した攻撃? いや、ミストジャマーの塊のミストクラウドを利用した攻撃か……やりやがるなあの金髪幼女……」
パパパ……と微笑みながらその金髪幼女は甘ったるい喋り方で言う。
「私はパンテ。金髪幼女パンテよん。かつてはテンパとも呼ばれていたけどね……オーマちゃん♪」
コイツ!
やっぱりテンパか!
金髪巻き髪美女であり死の商人テンパ……魔法少女漆黒のメスパーが生きてたから少しは考えたが、やはり生きてたかテンパの野郎。いや、今はパンテか。
「テンパ……よく魔力秘宝・宝玉を失って生きてたな。千年研究した不死の研究で何か得たものでもあったのか?」
「それなりにね。と言いたいけど、無いわよ。オーマちゃんとの戦いで得た宝玉の使い方以外はねぇ……」
「そうか。でももう宝玉は壊れた。アレが無い以上お前はただの死の商人だ。いや、もう商人でもないな。自分の欲の結末に苦しむだけの子供か。パッパッパッ! とも言えないようだしな」
「言ってくれるわねオーマちゃん。こっちもギリギリで生きてたのよ。だからこそ完全に復活してないの。おそらく大人の身体にはなれないわね。幼女の身体が限界だし、いつ寿命が来るかもわからない。だからこそ、勇者魔王の金玉を奪い私の栄養にするのよん♪」
「メスパーといいお前といい、俺の金玉を狙う奴が増えてウゼーぜ。散らすぜ幼女テンパ」
「パパパ。今の私はお金が欲しい金血鬼よ……」
吸血鬼ならぬ金血鬼になったようだ。
要は金の亡者だな。
「なら散れ」
瞬間――上空にいる金髪巻き髪幼女テンパを倒そうとギガバーニアンのブースターポッドを吹かせる俺に、ジゴク王からの声が響いた――。
「勇者魔王オーマ! それはテンゴク人との協定違反になる! やめたまえ!」
地上にいる国王からの魔力音声がジゴクシティーの空域に響く。
どうやら、ジゴクシティーにはテンゴク人と絶対に問題が起こらないようにする仕掛けがあるようだな。ここまでクリアに聞こえる魔力音声は中々のもんだぜ。この技術を違う事に使えばこの国はもっと発展するだろうよ……。
「なぁテンパ?」
「!? 卑怯な……」
「戦いは勝ったものが全てだ。だろう? 金血鬼?」
ズババッ! とショットライフルを連射し、胸元が血まみれになるテンパは地上へと落下した――。
ジゴク王の魔力音声が聞こえた隙を利用して俺は金髪巻き髪幼女テンパを倒した。
「まぁ死んではいないだろう。ガキのクセにギリギリで致命傷を避けて落下して行きやがったからな。聞こえてるか? ジゴク王?」
「あぁ聞こえているさ。早くその空域から離れてくれ勇者魔王オーマ! そこにいれば次々とテンゴクシティーからの警備兵が現れる! それに、テンゴクシティーへはそんな突撃方法では侵入出来ない。ミストクラウドの絶対不可侵領域をお前ならわかるだろう勇者魔王」
「……フン」
確かに……魔王の魔眼を使ってもスキが無い。ミストクラウドの濃密なバリアと魔力結界のダブルシールド。これは俺でも相当な時間をかけないと突破は不可能だな。仮に一撃で突破出来ても、その時は魔力を使い果たしてるだろ。要するに、ジゴクシティー国王の言う通り、明日のテンゴクフェスティバルまでテンゴク人と会うのは待てって事だな。
「まぁ、いいさ。ギガバーニアンも各部にスラスターを追加して姿勢制御まで完璧にしてある。これなら、自由自在に空を飛び回れるぞ。いい完熟飛行になったさ」
言いつつ、俺はジゴク王が見つめる地上へと帰還する。
そしてその王宮の大地を踏みしめて第一オーマスーツ・ギガバーニアンを解除し、
「ジゴク国王。お前は天からこのジゴクシティーを支配していたテンゴクシティーの事を隠していたな。お前がそのつもりなら、俺も俺の自由気ままにこの国で動くつもりだ。じゃあな」
「ま、待たれよ! 赤髪剣士の件はどうする!? あの女は始末してくれないと、テンゴク人に合わせる顔が無い……テンゴクフェスティバルで事件を起こさせるわけにはいかん」
「なら、お前の次の行動は何だよ?」
コイツには自分の言葉で言わせてやらないとならない。でなければ俺はこのジゴクシティーそのものを消してもいいような戦闘をするかもしれんからな。全ての情報を開示してこそ、一応のギブアンドテイクは成る。という俺の思いがやっとこさ通じたのか意気消沈のジゴク王は言う。
「情報は開示する。だから助けてくれ……勇者魔王」
「いいぜ。力になるさ。お前の今後の態度に変化が無いならな」
「……」
「? 何だその顔は? 納得がいかない顔だな……」
ふと、目の前のジゴク王の顔が歪んでいるのが気になった。
コイツは俺に答えられない状況にあったんだ。
なぜならジゴク王の瞳には、赤いポニーテールの魔剣士が写っていたからだ――。
「久しぶりねジゴク王。復讐人として貴方の全てを壊しに来た赤髪魔剣士エミリよ」
「赤髪魔剣士エミリ!」
突如、俺の背後の王宮の屋根に現れる豊かな胸の前て腕を組んでいるエミリに叫んだ!
そして、エミリは厚めの唇を動かさず復讐人であるジゴク王をジッ……と陰鬱な瞳で見つめていた。
まるで俺が目に入らないようなエミリに、俺は流石に不快になった。
(何だコイツ等? まるでオッサンと若い女の不倫カップルみてーな雰囲気出しやがって。何かうっとおしいな)
何とも言えない妙な顔をするジゴク王は赤髪魔剣士エミリを見つめる。敵であるエミリが現れた以上、必死にこの場から逃げそうな気もするがそういう行動には出ていない。まるで知り合いのような感じもする二人は少しの間じっ……と互いを見つめ合ったまま時間を過ごしていたが、初老のジゴク王の口がようやく動いた。
「エミリ……まさか生きておったとはのぅ。お主の復讐はこのワシだけにせい。テンゴクシティーには手を出すな。背中のZの傷はワシがつけた以上、ジゴクシティー国王であるワシだけに復讐をせい」
「それは無理よ。貴方はテンゴク人を大事な存在だと認識して、毎年のテンゴクフェスティバルで相変わらず生贄を捧げているじゃない。奴等の汚れた天空城の糧として生贄の生体エネルギーを使っている……そんな事は知ってるのよ。この七年近くの日々で色々と調べたからね。赤髪魔剣士と呼ばれるまでになった日々はもうすぐ報われるわ。全てが核弾頭で消えればね」
「エミリ……お主はわかってるのか? お主は……」
「わかってるわ。この背中のZの傷は色々と私に教えてくれた。貴方の微かな魔力が刻まれたこの背中の傷は私の家族とその仲間達の魂を鎮魂させる為の大義。この腐った歴史が続いて来たこのジゴクシティーはもうすぐ終わるわ。それまで少しは家族というものと、この国の歴史について考える事ね。ただでは殺さないわよ……地獄を味あわせてから光の中へ誘ってあげるわ……Zの呪いと共に死ぬのよ」
「そうか。ならもう自由にせい。ワシには代々受け継いで来たジゴク王としての役目がある。これを放棄するわけにはいかん。お主がもう復讐を止められぬようにな。ワシはワシの道を行く。テンゴクフェスティバルを例年通り開催し、テンゴク人をこのジゴクシティーに客人として招き入れる。この都市に繁栄をもたらしてくれる天の人々をのぅ」
「あんな人とも思えない人間を崇めてるだけで反吐が出るわ。私はあの歪んだ人間のようにはならない。そして貴方に言われなくてもテンゴクフェスティバルの混乱に乗じて私は私の花火を打ち上げるわ。せいぜい残りの日々を楽しむ事ね。勇者魔王を使おうとも私の復讐は止まらないわよ」
一人の赤髪の少女と初老の男は互いの気持ちを吐き出し、互いを見つめ合った。
そしてエミリは俺を睨みつけるように言う。
「勇者魔王オーマ。勝手にテンゴクシティーを奇襲するなんて余計な事をしないでくれる? もしテンゴク人がテンゴクフェスティバルに来なくなったらどうするのよ?」
「知るか。そんなの俺の勝手だ。俺は別にテンゴクフェスティバルが開かれようが開かれまいがどうでもいいんだからな。俺は自分の核弾頭さえ回収できれば後はどうでもいい」
「勇者魔王……本当に勇者のようでいて魔王のようでもある。中途半端な存在ね。吐き気がするわ」
「それで結構だ。まぁもうテンゴクシティーを攻める事はないがな。どうやらテンゴクフェスティバルが開催されないと現れそうもない金髪幼女とかもいるし、生でテンゴク人というのも拝んでおきたいからな。ムカついたら散らすかも知れんが」
「本当童貞ね。考えが浅はかなのよ。テンゴクシティーとジゴクシティーの関係はかなり厄介な関係なのよ。部外者の貴方が入り込めるような問題じゃないわ。どの道、ここにいる限り貴方は自分の生み出した核弾頭アトミックフレイヤで死ぬんだからどうでもいいけどね」
「お前はその核弾頭アトミックフレイヤの放射熱に耐えられるのか?核弾頭は攻撃力が凄まじい以上、使用者の防御も必要になる。俺には核弾頭専用オーマスーツ・ジギタリスがある。お前には無い。さて、どうする?」
「……それはテンゴクフェスティバル当日のお楽しみよ。じゃあねジゴク王に勇者魔王オーマ。テンゴクフェスティバル当日を楽しみにしてなさい。本当の地獄を見せてあげるわ。生き地獄をね……」
煙玉を地面に投げつけ、赤髪魔剣士エミリは俺とジゴク王に挑戦状を叩きつける言葉を吐いて去った。テンゴクフェスティバル……楽しみになって来たぜ!




