テンゴクシティーに奇襲をかけるオーマ
テンゴクシティーに来てから三日目の朝になった。
今日は昨日ジゴク王に言われたテンゴクフェスティバルのメインイベント武道大会予選がある。その武道大会予選を戦い優勝して魔法銃・スペルガンの弾丸を貰い、そして本選は辞退し勇者魔王のチート具合をこのジゴクシティーの民衆に見せてやろう……なんて思ってたがその予選はどうやら夕方からのようだ。
なら夕方までは暇だからな。
ジゴク王が黙っていた空の上のテンゴクシティーの謎を解いてやるか。
赤髪魔剣士エミリの奴の情報が無ければ祭りの当日まで知る事も無かったぜ。
「……にしてもあの空の雲はミストの濃度がスゲーな。ミストクラウドか。あれじゃあそこに天空城があるなんて思わねーな」
ジゴクシティーの真上に存在する白い霧の濃縮体・ミストクラウド。
ミストジャマーと呼ばれるレーダー類を無効にするこの異世界の霧が、雲のように固まるとレーダーどころか近くでも目視すら出来ない絶対不可侵の領域・ミストクラウドとなるようだ。それを、天国人は浮遊都市として利用し、地上の人間から養分を吸収し続けて来たんだろう。それを俺は第一オーマスーツ・ギガバーニアンでテンゴクシティーに攻めるんだ。頭上の大きな雲をもう一度見上げ俺は言う。
「さっき話した通り、今回はお前はお留守番だ魔女。ゆっくり旅の疲れを癒してくれ。何もせずにな」
「わかってるよ。コウハイ君の言う通りこの地上では特に何もせずにいるよ。下手に魔法結界とか使っておかしな事してるとジゴク兵隊とかに警戒されそうだしね」
「そうだな。とりあえず今回は部屋から出ずに、待機しててくれ。これはあくまでもジゴク王とテンゴク人への牽制。それを奇襲という形で行うだけだ。この国の闇を知らないと、エミリの核弾頭を使った復讐作戦の全容が見えないだろうからな」
「確かにね……それにさっきから何かあのミストクラウドの奥にあるとされるテンゴクシティーには嫌な感じがするわね。何か不快感を感じるわ……今、一瞬黄金の光が発生したようにも見えたよ?」
「黄金って、まるでテンパのゴールドキャッスルみてーだな。まぁ、テンゴク人はこのジゴクシティーを無意味に利用する闇の国とも言えるからな。他国の人間は知らず、下界のジゴクシティーの人間しか知らない希少民族。あの濃密なミストジャマーの塊のミストクラウドは本当に普通の雲と見分けがつかないからな。テンゴクフェスティバルの際にかなり降下して来ててもあまり他国の人間はおかしいとも覚えられないんだろうよ」
魔女が言うなら確実に今のテンゴクシティーには何かがあるんだろう。だが、どんな困難があろうとも俺は進まないとならない。この異世界の特異点である勇者魔王に不可能は無いのさ。
「……ま、そんなこんなでそろそろテンゴクシティーへ行ってくるぜ。食い過ぎて太るなよ?」
「ア、アイアイサー!」
「帰還したら体重チェックだ。今の体重から三キロオーバーだったら一週間オヤツ抜き。いいな?」
「ちょい待ち!何で今の私の体重知ってるの?体重計に乗った時は見られてないのに……」
「宿の体重計を魔力でいじっておいたからな。乗った人間の体重を記録するように細工しといたのさ」
「こ、小癪な真似を!ピャー!」
「黙れ魔女」
俺は素早くハンドガンを胸のホルスターから抜いてのその銃口を魔女の額に向けた。はっ!とする顔の魔女は、苦々しい顔をしてる。そして魔女は俺に交渉を持ちかけて来た。
「じゃあ……じゃあさ。一日中部屋に缶詰なのは辛いし、お腹すくから出前はとっていいよね?外に出られないんだから出前ぐらいは許容範囲でしょ?」
「あぁ、それは構わん。ただし、俺がこのジゴクシティーから天空城テンゴクシティーへ向かったとは知らせるなよ?これからの行動が意味が無くなるからな。俺の信頼も失うし。……いいな?」
「ほーい。アイアイサー!」
そして俺は魔女と別れてジゴクシティーの王宮の屋根の上に立つ。
「さぁて、強行突破でテンゴクシティーへ侵入してやるぜ。核を撃ち込まれる理由がある原因を作ったテンゴク人ってのを確認する必要があるからな」
そして俺は自分の勇者魔王としての魔力兵器・マジックウェポンを確認する。
「各マジックウェポンステムチェック。通信マジックウェポン。システムオンライン。火器管制マジックウェポン。システムオンライン。マップシステムオンライン。脈拍、血圧、心拍数共に異常。マジックウェポンシステムオールレッド……第一オーマスーツ・ギガバーニアン起動!」
第一オーマスーツ・ギガバーニアンを展開する。ブフォ! と両肩のブースターポッドから白い魔力粒子が吹き出す。そして全身の各部にある姿勢制御スラスターを吹かす。
「行くぜ! テンゴクシティー!」
ブフオォォォォ!と超スピードで大空を突き抜け、大きな隕石のような雲を突き抜けると、はるか先に巨大な質量を持った大雲を見た。おそらくあれがミストジャマーの塊であるミストクラウド。アレを突破すればテンゴク人がいるテンゴクシティーだ。底面から突き破ってやるさ! 俺はギガバーニアンの両肩のブースターポッドをフルブーストで吹かせる!
「……肉眼で確認するとおそらく広さ的には東京ドーム一つ分ぐらいの大きさだな。確かに一万人ぐらいのテンゴク人が暮らすには丁度いい広さではあるな……?何だアレは? 敵か?」
瞬間、テンゴクシティーの底面のミストクラウドから数十体の白い人形が現れた!
それは猛然と俺に向かって集結した。
何だ不気味なコイツ等は……?
「ワレワレは自動迎撃兵器オートマン。テンゴクシティーに侵入する悪を排除するモノ」
「自動迎撃兵器オートマン……だと?」
自動迎撃兵器オートマン。
魔力で生み出された白の人形。
あまりに接近し、害のあるモノを排除するテンゴクシティーの害虫駆除兵器らしい。
「害虫はどっちか教えてやる!」
おそらく百はいるであろう不気味なオートマンの群れに俺は突っ込んだ!
ブフォ! ブフォ! ブフォ! と小刻みにギガバーニアンのブースターポッドを動かし、迫るオートマンを多少の魔力防御なら貫通するショットライフルで始末する。ボボボボンッ! と機械人形オートマン達は爆炎を上げながら空中に花火を描くように散る。別段美しくはないがな。
「特別に装甲が硬いというわけじゃないな。それとも俺のショットライフルの威力が強すぎるのかな? 結構拍子抜けだなオートマンさんよ」
「ククク……我等は無数にいる存在。一人が勝てば勝利ナノダ。勇者魔王と違ってな」
「なるほど。まさにデク人形そのものだぜ」
てなわけで、一気にこのデク人形共に引導を渡してやらねばならんな!
バリバリバリ! と数対のオートマンは自分達の前に防御シールドを展開した。
フン、くだらん。
「魔法防御をしても、このショットライフルの弾丸は特殊な魔法防御じゃない限り破壊出来る。ムダな抵抗はするなよ」
「ソレをムダかはいつかワカルサ」
「そうかよ」
そのオートマンを瞬時に散らした。
そしてブースターポッドを一瞬の間を空けながら連続噴射して旋回する。
と、目の前にオートマンがいた!
「野郎! 俺の動きのクセを読んだのか!? 機械人形の分際でこしゃくな!」
「単調なウゴキダナ。勇者魔王もタイシタ事はナイナ」
「言ってろ魔力人形が!」
たかだか無数に生み出されている魔力人形風情が言ってくれるぜ!
俺は無数のオートマンに囲まれつつも回避運動と攻撃のヒット&アウェイを繰り返す。
「どうだ! もうすぐ貴様等を全滅させてやるぜデク人形!」
「パターンは読んでイルヨ。今の回避パターンなら、ここに現れるのは必然ナノダ。死ね勇者魔王オーマ」
「!? ――チィ!」
驚きの顔を隠せない俺の顔はオートマンを見つめたままだ。そして雲が流れる青き空に、爆発の黒煙が上がる!
『……』
その黒煙の中でたたずむ存在が、勇者魔王の最後について語る。
「アッケナイな勇者魔王オーマ。やはり神である天国人には勇者魔王は勝てないノダ。ワタシこそがテンゴク人最強のオートマン」
と、まだ消えない黒煙の中で話すオートマンに他のオートマンが群れるように集まり出す。同じ顔のオートマン達は自分達を褒めるように会話し出す。
「ヤッタなオートマン八号。ワレワレの勝利ダ」
「ショセン、勇者魔王など敵ではナイ。地上を這いずる者ナド、天を駆る天国人の敵ではナイ」
「ソウダ。ジゴク人はテンゴク人の養分であればイイ。それが地上人の勤めデアル。我々の勝利は当然のコトヨ」
と、ジゴク人とテンゴク人との位置関係を話しながら勇者魔王も侮辱してやがるな。てなわけで、黒煙が散り出し勇者魔王を倒したオートマンを祝福するオートマン達に、勇者魔王を撃破したフリをしていたオートマンは言う。
「……何が我々の勝利だ。勝利すんのは勇者魔王に決まってんだよザコ共が! 散れ!」と
『き、キサマは勇者魔王オーマーーー』
「そうさ。さっきの爆発は、俺を倒したと勘違いしていた仲間の爆発だアホが!」
と、大空に散る黒煙の中から現れた俺は、目の前のオートマンを始末した。それにより、混乱するオートマンの群は勇者魔王に恐れているのか、背後を向いて蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。
「おいおい、魔力人形でも恐怖を感じるのか? 是非そのツラを拝ませてくれよ」
素早く俺はショットライフルを射撃し、一体、一体のオートマンを撃破する。俺の空中自由飛行に対応出来ないオートマンは簡単に撃破され、その無表情なツラを爆散させ続けた。そしてこの状況を立て直そうとするオートマン達は群れになり、一斉に無表情なツラで俺の方向を向く。
「ドウイウ事だ勇者魔王オーマ? キサマはそのスピードに乗った状態のギガバーニアンモードでは、ほぼ一直線の軌道しか動く事が出来ずにイタハズ。過去の情報からするとそんな空中旋回をしたりする自由飛行をギガブースト状態で出来るのはアリエナイ……」
「だから驚いてるならその無表情なツラを驚いたツラにしやがれアホンダラ共め。この第一オーマスーツ・ギガバーニアンは今までと違うんだよ。お前達の持つ俺のデータは誰に教えてもらったかは知らんが古い。今の俺のギガバーニアンをよく見てみろカス共が」
『!? ――マサカ! そのオーマスーツ各部にある魔力制御装置は……!』
「バカめ! 今更気付いたのか? 御察しの通り、今までのギガバーニアンと今のギガバーニアンは違うんだよ! 散れ!」
バシュ! とショットライフルの連射でオートマンを撃破する。そうだ……今の俺のギガバーニアンはこの雄大な大空を自由自在に飛び回る事が出来る。その理由はこうだ。
第一オーマスーツの肘や腰。脛の外側の左右など身体の各部に姿勢制御用のスラスターを新たにギガバーニアンの追加装備として追加した。これにより、空中を高速で真っ直ぐ飛ぶ事しか出来なかったギガバーニアンモードの運用方法にかなりの広がりが出た。これで、高速飛行する敵が現れても対処は可能だ。
「たかだか自動人形にこの勇者魔王が倒せると思うなよ!」
「ナラバ、味方を囮にして背後からキサマをコロス!」
「何っ!」
高速飛行で精密射撃を行う俺の右手はショットライフルのトリガーと持ち手にあり、左手は風でブレないように銃身を支えている。だから不意に背後から襲いかかられると、対処のしようも無いのさ――。
「ガハッ……」
「おいおい、ガハッ……て魔力人形でも痛みがあんのか? 変な演技してんじゃねーぞカスが」
俺は銃身を支えていた左手にヒートソードを構えていた。オーマスーツから排出される機体の熱を利用して温められたヒートソードだ。焼くと斬るの痛みを与えられるが、魔力人形のオートマンには痛みは無い。そんなムダな演技をする爆散寸前のオートマンに俺は言う。
「別に俺は片手でもライフルは撃てるんだぜ? 俺が射撃の方が得意なのを知らなかったか? つまり、片手でライフルを撃ってる以上、もう一方は剣を使うさ。勇者魔王は接近戦は苦手だが、お前等程度には負けるわけがない」
その絶対的な覇道を行く勇者と世界を恐怖の底に沈める魔王の両極端な笑みを見たオートマン達は、絶叫を上げながら一斉に飛びかかって来た。同時に、俺はショットライフルを生成解除し、ヒートソードを腰を捻りながら構えた。
『シネー勇者魔王!』
「死ぬのは貴様等だデク人形。……我が内なる炎よ……この天を焼き尽くせ! ローリングバスタードラグーン!」
ブフオォォォォッ! と火炎魔法と剣技を掛け合わせた魔法剣が放たれる! 螺旋状に回転する赤い炎龍の壮大な一撃が、この中域にいたオートマン全てを焼き尽くした。フゥと息を吐く俺は、真上にあるテンゴク人が住むテンゴクシティーを見据えた。
「よし……全て片付いたな。増援が出る前にテンゴクシティーに突入してやる!」
ギガバーニアンのブースターポッドを最大出力で吹かす! 魔力粒子が散り、最大戦速でテンゴクシティーに突撃する。今はもう俺を阻むオートマンも全ていない。このチャンスを利用してこのテンゴクシティーの全てを解き明かす!
「よし、もうすぐ到着だ――」
もうテンゴクシティーの底面が目の前にせまっている。ここまで来ればたとえオートマンがまた現れても勢いだけで内部に侵入出来るぜ。
(さて、噂のテンゴク人って奴を拝ませてもらうかね)
ふと、背後に嫌な悪寒が走る――。
金色の毛針のような攻撃が俺を襲う!
とっさに生成したショットライフルを盾にして、金色の毛針を防いだ。小規模な爆発と共に、俺は少し先にいる敵であろう人間を見た。
いや、幼女だな……。
「こんな場所に金髪の幼女……誰だ貴様は?」
突如、金髪巻き毛の幼女が現れた。
まるで死の商人テンパを子供にしたようなテンゴクシティーの門番である幼女は言う。
「パパパ! ここから先へは行けない。ミストクラウドを知ってるなら諦めなさいな♪オーマちゃん♪」
「この口癖にその髪型と顔……お前、幼女テンパだな。そこまで落ちぶれて生きてるんあてコッチが不愉快だぜ……散らす」




