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エメラルド・ナイト~守護者たちの饗宴~  作者: 河野 る宇
◆第4章~その人物についてのいち考察
8/20

*そのうちのひとり

 陣たちと別れた絵理は、ベリルのいるベッドルームに向かった。

 ルームとはいっても、そこにドアは無く、入り組むように配置されて通常は見えないようになっている。

「たのもう」

 古めかしく口を開き、遠慮無く足を踏み入れた。

「なんだ」

 突然の訪問に驚きつつ応える。

 着替えの最中らしく、上半身は裸だった。

「どうした」

 ぴたりと動きを止めた絵理に眉をひそめる。

「ぬ、すまぬ。ローマ彫刻のような美しさに見とれてしまった」

 洗練されて引き締まった筋肉は程よく盛り上がり、無駄がまるでない。人の体とは、これほどまでに美しいラインを描けるものなのかと感嘆する。

 美術館に置いていても、違和感なく眺められそうだ。

「そうか」

 いちいち言い回しが古めかしくて、ベリルは口角を吊り上げる。

 自身もジジ臭いとはよく言われるが、ここまでではない。

「何の用だね」

 聞き返し、着替えを続けた。

 よく見ると、ベッドの上には拳銃ハンドガンが革の収納ケース──ホルスターに3丁ほどが投げ置かれていた。

 種類までは解らないが、そのうちの1つはリボルバー銃だというくらいは理解出来る。

 オートマティックとどう違うのかまではさすがに解らない。

 まず腰の後ろに2丁のハンドガンを装着し、黒の半袖シャツを着込む。密着するタイプのとても薄そうな素材だが、丈夫そうに感じられた。

 さらには、左脇に1丁を装着し半袖の前開きシャツを羽織る。足首までは確認出来ないが、青司の言った通りの武装だ。

 手際よく済ませると、ベッドに腰掛けて絵理の言葉を待った。

「青司がそなたに疑念を抱くのは、至当しとうだと思うのだ」

 ベリルは絵理の言葉に若干、眉をひそめ笑みを浮かべた。

「元々、世話焼きなのだよ」

 16歳の少女の口から至当などという言葉が出てくるのには、苦笑いを浮かべる他はない。

「私は傭兵というものを知らぬ」

 つぶやくように発すると、側にある椅子に腰掛けるように促され、絵理は素直に従った。

「同じに考えるのは危険だろうね」

 足を組み、静かに応えたベリルを怪訝な表情で見やった。

「私は特殊だといえる」

 傭兵は本来、雇われて動く兵士だ。

 そこにはただビジネスが存在し、自ら動くという事はほとんどない。

 ベリルはフリーの傭兵だが、多くの情報網を有している。

 そのため常に、何かしらの情報が流れてくるのだ。

「休暇中は控えてもらえるが、切迫した情報は気になってね」

「もしや、休暇中に聞き及んだのか」

「そうでなければ別の者をよこしていた。デマならそれで良い」

「そなたと我らに面識は無いだろうに」

「知り合いでなければ気を揉んではならんのかね」

 そう言われてしまえば何も言えない。

「それだけの余裕が私にあったと思えば良い」

 柔らかに応えられるが何を考えているのか、その瞳の奥までは覗かせてはもらえなかった──



 まだ納得出来ないといった少女の背中を見送りつつ、ベリルは小さく溜息を漏らす。

 それぞれに個性的な者たちだが、彼はそもそも少年や少女の扱いには慣れていない。

 ひとまず、度胸だけは据わっているという事は確認出来た。

 さて、どこまで伏せていられるかだ……小さく唸り、武器の手入れを始めた。

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