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*運命の受け入れ方について

 そうして陣は、ベリルを探して外に出る。

 住宅街のなかにあって、広い庭園からは心地よい虫の鳴き声が夜空を彩った。点々と設置されている足下灯の明かりを気にしつつ影を追う。

 本当は絵理も彼と話しがしたいという感情を見上げる目から感じ取っていた。しかし、青司も必ずついて来るだろう。そうなれば落ち着いた会話をするどころじゃない。

 ここは代表してオレが色々と探りを入れてみようじゃないか──という、やや張り詰めた意気込みだった。

「あ──」

 陣は庭先の木々の間に揺れる影に目を見張る。

 まるで神話から飛び出してきたような雰囲気を放っているベリルに言葉が詰まった。

 ただ歩いているだけなんだ、優雅な物腰でゆっくりと歩いているだけなのに、なんですかその存在感は。

「何か用か」

 視線を向けずに応えられ、少しドキリとした。

「いえ、ちょっとお話でもと思って」

 声をかけられた途端、彼の雰囲気が一転したような気がした。夢の中から現実に引き戻されたような、淡かった光がはっきりしたような──そんな感覚だ。

 陣は若干の及び腰でベリルに近寄った。

「よく手入れされている」

「え、ああ。そうですね」

 庭の事かと返事を返した。

「あまり破壊したくはないが」

 はい? いま破壊とかおっしゃいました?

「こちらが見つけ出す前に仕掛けてくるだろう」

 そういえばベリルさんの方でも解決に向けての取り組みがなされているんだった。

「相手もそれには気付いていると思われる」

 彼の言葉から察するに、互いに見知った相手のようだ。

「あの──」

 口を開きかけたそのとき、何かに気付いたベリルがすいと右腕を上げた。陣の目に、銀色の光がまるでベリルの腕に吸い込まれるように見えた。

 小気味の良い音がしてハッと我に返ったとき、ベリルの腕にはナイフが突き刺さっていて声も出ないほど驚く。

「わあっ!? 早く手当!」

「必要ない」

 ベリルはナイフを抜くと同時に小さく呻き、傷口を手で押さえた。

「だめですよ! 早く中に!」

 痛いんだったら早く治療しないと──とにかくまず止血、止血だ。

 陣は慌てて何か縛るものは無いかと自分のポケットをあさる。

「慌てなくて良い」

 少年に発してハンカチを取り出し手にあるナイフの刃の部分をそれで巻き付けた。

「ちょっと! ハンカチあるんならそれで傷口を──」

 あれ?

 先ほどまで痛そうな様子だったのに、今は平然としているベリルに一瞬、呆然とした。

「奴からの布告だろう」

「そんな事より怪我!」

 刺された場面を見ている陣は、さすがに我慢しきれずベリルの腕を強引に掴んで傷口を見やった。

 しかし、

「はれ? 傷は?」

 唖然とする陣に苦笑いを浮かべた。



 数十分後、

「はぁ? 不老不死?」

 陣から素っ頓狂な声が上がる。

「ベリルさんが?」

 庭の蛇口で血を洗い流しているベリルに目を丸くした。

「あまり口外したくないのだがね」

 そりゃそうでしょう、それが本当だったらとんでもない事に──

「もしかして、胸を撃たれたのって防弾チョッキとかじゃなくて?」

 まだ呆然としている陣に口角を吊り上げる。

「本当に撃たれてたんですか!?」

「衝撃を吸収する素材を着ている」

「でも撃たれたんでしょ!?」

「伏せておいてもらえるか」

 その言葉に落ち着きを取り戻す。

「どうして」

「表の人間に多く知られるのは避けたい」

 陣はそれではたと気がつく。

「もしかして、あのホテルも武器屋の人もベリルさんの事を知ってるんですか?」

 心に湧き上がっていた違和感や何もかもが、陣のなかで全てつながっていく──

「あ~、確かに言わない方がいいかも」

 青司に知られると、今までの身を挺したベリルさんの行動が全て水の泡になる気がする。

「でも、どうやって不死になったんです?」

「話せば長くなる」

 不可抗力だったという事は教えてくれたが、それ以上は説明する気配は見せなかった。単に話すのが面倒なだけなのが、とてもよく窺える。

「あの、不死になって思った事とか悩んだ事とか、ありました?」

「ん?」

 問いかけられた内容に少し思案しつつ、

「いや、特には」

 こういう人なのね……。

 この人は、そんなとんでもない運命をあっさりと受け入れたんだ。普通じゃそれを出来る人はいないと思うんだけど、そんな受け入れ方もあるんだな。

「世界征服とか考えた事あります?」

「不死になっただけでか」

 いや、充分な理由じゃないですか?

 この人はこんなにもサバサバした人だったのかと、改めて見直した。

「今は何歳なんです?」

「65かな」

 25歳の時に不死になったため、その歳のままなのだと説明されて納得をした。

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