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*説明会議

 日本に到着すると、空はすでに真っ暗だった。

 しかし、街灯とビルの明かりはそれを感じさせないほどに明るい。

 成田や羽田と違い、街中にある小さな空港だが、大まかな説明でリムジンが迎えに来ていた。

 黒い車体は磨き抜かれ、誰を受け入れても恥ずかしくない輝きを放っている。

 一同はそれに乗り込んで、絵理の家に向かった。

「お父上は?」

「うむ、私に全て一任されている」

 絵理の言葉に、父親の兼定かねさだは駆けつけてこないのだと陣はやや驚いたが、絵理の全てを信頼しているのだと考えれば、それもアリなのかもしれない。

 御剣財閥を率いていくのは絵理だ、こんなことで狼狽うろたえていては務まらない。

 とかなんとか言われるのがオチだろう。

 リムジンが止まったのは大きな屋敷の玄関先──

「おかえりなさいませ」

 玄関前で待っていた執事長の佐伯が丁寧に会釈をし、ベリルを一瞥する。

 武家屋敷の門をくぐると、広間に案内された。

 およそ古い屋敷に海外の人間は不釣り合いかと思われるのだが、どうしてだかベリルという人に至っては相応でさえ感じられた。

 広間に踏み入ると、絵理は紳士風の佐伯に向き直る。

「佐伯、皆を集めてくれないか」

「かしこまりました」

「ベリル殿、窮屈とは思うがくつろがれよ」

 正座をしつつ発する。

 それに応えるようにベリルも腰を落とし、膝を曲げる。

 あ、正座出来るんだ。という陣の思考は置いておき、青司の視線は常に鋭くベリルを見つめていた。

「皆の者、心して聞いてもらいたい」

 そうして広間に集まった者たちに絵理は旅行先でのことやベリルを雇った経緯などを淡々と説明し、これからについてを語った。

 執事が代表するように丁寧に腰を曲げ、

「かしこまりました。絵理様のご意向のままに、我々も対処いたします」

「うむ。頼んだぞ」

 絵理の言葉にみんなが頷いてしずしずと広間から去っていく。さすがみんな腰が据わってるなぁと陣は感心した。

「佐伯、ベリル殿を部屋に案内してくれぬか」

 残っていた執事に絵理が発すると、佐伯は丁寧な会釈と共に了解した。

「俺たちはどうする?」

 残された陣は青司を一瞥して絵理に問いかける。

「うむ。旅行で疲れただろう、また明日にでも集まるとしよう」

「俺はこの件が片付くまで絵理の家に厄介になる」

「おいおい」

 ベリルさんの事が気にかかっているのは解るけど──

「陣もいるのだ、心配はいらぬ」

「だめだ」

 青司は言い出したらきかない。絵理は小さく溜息を吐いて立ち上がった。

「構わぬ」

 険のない返事だが、さすがの青司に多少は呆れているようだ。



 その夜、ベリルも含めた4人での食事に妙な緊張感があった。

 当然、青司の視線のせいだ。とうのベリルは別段、気にする様子もなくしれっと箸を手に料理を口に運んでいる。

「上手いですね」

 取り繕うように陣が声をかけたが、ベリルの箸使いは確かに見事なものだった。日本人でもここまで上品に使える人がいるのかと戸惑うほどには上手い。

 ベリルはそれに礼を言うように小さく笑みを見せる。よく見ると、ほっそりした手をしていて、やはりとても傭兵だとは思えない。

 そこで陣は、常にベリルに対して抱いている疑念を頭に浮上させた。

 顔がどうとかいう以前に、全体的に綺麗すぎるのだ──服装は質素ながらも上品な物腰に隠されがちだが、戦いを繰り広げてきた人物としては、傷の一つもなく綺麗すぎる。

 それで考えられる事と言えば、逃げまくっていた臆病者か傷などつかない程の凄腕なのかになる。

 しかし今までの言動からすると、どちらでもない気が陣にはしていた。

 むしろ、絵理のように無鉄砲な部分があるんじゃないだろうか……。



 食事が済み、ベリルを除く3人はなんともないしにリビングに集まる。誰1人見てもいないテレビが騒いでいるが視線は皆、宙を見つめていた。

 ベリルは家の周囲を見ておきたいと1人で歩き回っている。ついでに見取り図も見せて欲しいと言われ、執事の佐伯さんが物置で探している最中だ。

 どうしてか日本に帰ってきた方が落ち着かない。

 アメリカでは周り中が敵かもしれないと思われたが、日本に戻れば守らなければと思う人たちが大勢いる事に気がついた。

 誰かが巻き込まれるかもしれないという危険性にようやく気がついたというか、実感が湧いてきたのだ。

 立ち上がった陣にどこに行くのかと2人は怪訝な表情で見上げた。

「ちょっと散歩」

 苦笑いを返しつつ玄関に向かった。

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