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*さらば大陸

 解らない。この人が解らない……陣は、多少の混乱を来しつつミラー越しにベリルを見つめた。

 車を走らせ、通せんぼしている車を険しい表情で見つめたかと思うとおもむろにアクセルを踏み切って無理矢理に通ったまではいい。

 しかしあれ、

「高めの車を選んでいた気が……」

 口の中でつぶやく。

 車に詳しい訳じゃないが、明らかに高級車に向けてハンドルを切った気がする。

 いやがらせだよな、絶対そうだよな?

 だって、ぶつけたあとに口の端を吊り上げた気がするんだよ!

 普通は時間を費やすことで徐々に相手と打ち解けていくはずなのに、なんか逆じゃね!?

 ──という、陣のパニックなど素知らぬ顔でベリルは車を走らせる。


 しばらくして、ベリルはバックポケットから携帯端末を取り出すと目を向けずに起動させタップした。

 それをステレオの上部にあるくぼみに差し込むと突然、機械音が車内に鳴り響いた。

 3人がそれぞれに驚いていると──

<よう!>

 音が止み、見知らぬ男の声が聞こえた。

「ベリルだ。飛べるか」

<車は?>

「置いていく」

<場所は>

「日本、東京」

 それから数秒ほど沈黙が続き、

<OK! どれくらいで着く>

「20分ほど」

<了解した。そのまま滑走路に向かってくれ>

 発して通話を切られた端末を抜き出し、バックポケットに仕舞う。

「あの、今のは?」

「ファーストクラスでなくてすまんが、知人の飛行場に向かう」

 淡々と告げられ、陣たちは頷くしかなかった。


 15分もするとビルは姿を消し、住宅もまばらに点在し人もあまり見かけなくなってきた。

「さすが大陸」

 こんなに土地を遊ばせているなんて──と、陣は平地を眺める。

 そんな彼の耳に、聞き慣れない音が徐々に音量を増していく。

 目の前に広がる風景は、よく海外ドラマで見かける寂れた飛行場に他ならない。

 視界に映る飛行機に車ごと近づき、そこにいた数人のうちの1人がこちらに手を揚げた。

 栗色の短髪に青い目、年の頃は30代といったところか。

「よう! 準備は出来てるぜ」

 ガタイの良い男は、止まった車に近づき運転席の開いた窓に声をかける。

「そうか」

 ベリルは発して、降りるように陣たちに促した。

「こりゃまた可愛いお客さんだ」

 男は口笛を鳴らす。

 いくつに見られているのかは解らないが、同然のごとく青司は睨みを利かせた。

「こええ姉ちゃんだな」

 どう考えても怖がっていない口ぶりだ。

「少年だよ」

 ベリルは無表情に応えてキーを手渡し飛行機に足を向ける。

「え!?」

 それに男は目を丸くして青司を見やった。

 飛行機を見ると、さほど大きいようには思えないが、多少の不安感は拭えないものの少数を運ぶのならこれで充分なのだろう。

 陣たちは、数人が準備をしている様子を見つめた。

 その中にベリルも含まれる。

 そうこうしているうちに機内に促され、本当に大きくないんだなと感心しつつシートに腰を落とした。

 知らない男も3人ほど乗ってきて、パイロットと助手の2人なんだろうと納得付けた。

 リカルドという名らしい、初めに声をかけてきた男はベリルに何かを伝えて陣たちにウインクして降りていく。

 青司はそれに鼻を鳴らして呆れた。

 厚い扉が閉じられ、飛行機は徐々に速度を増していく──

 絵理は残念そうに、小さな窓から過ぎていく風景を見つめる。

 それを青司はチラリと一瞥し、「また来ればいいさ」と気遣った。

「うむ、そうだな」

 応えて再び窓に目をやり、浮上感に体は自然とやや強ばる。

 日本に戻っても油断は出来ない事を知る一同は、故郷への安堵感と共に緊張感を漂わせていた。

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