母の顔
炎王龍が空に向かって咆哮した。
その咆哮は、空を切り裂く程凄まじかった。
「アテナノコ。オアイデキテコウエイデス。」
膝を着きゆっくりと頭を地面に下ろした。
「ドラゴンは幻獣だから、まさか!炎王龍は神々の時代から生きてるってこと?」
アリスが驚いて、メモを取り出した。
「ボクの事を知ってるの?」
「イイエ。ワレハ、アテナニソダテラレシモノ。ワレトアテナノキオクヲオミセシマス。」
炎王龍からナオミに記憶が流れ込んできた。
二千年以上も前の記憶だ、見えている映像は全然鮮明ではない。ぼんやりと見える、幼き炎王龍と母アテナの姿。
美しく、優しい微笑みにナオミは不思議と涙が溢れてきた。
「お母さんだ。優しい顔をしてる。」
ナオミは母の顔を知らなかった。古文書や聖書にはその姿が描かれているが、それは想像上で描かれたものでしかなかった。
「炎王龍って、喋れるんだな!いいドラゴンだったのか!?」
キーツが場の空気を壊した。
「ちょっとキーツ!せっかくナオミが初めてお母さんの顔が見れたのに!・・・そ、それでどんな顔だったの?肖像画描き直すよ!これは、間違いなく歴史的瞬間!」
情報機関としてアリスは仕事の目になっていた。
「アリスお前もじゃないか!」
「ガガガガッ!オモシロイニンゲン!ワレヲマエニオクサナイカ!」
ナオミがそっと炎王龍の顔に手を当てた。
「ありがとう。」
「コウエイデス。オオキクナリスギタワレハ、ニンゲンニトッテハサイガイソノモノ。マチニオリルコトナドデキマセンデシタ。イツカアエルコノトキヲマッテイマシタ。」
炎王龍の目からは涙が溢れた。
「ワレモトモニイキタイノデスガ、ソレハカナイマセン。ワレノココロヲトモニ。」
炎王龍からナオミに炎に包まれた魂が入って行った。
ナオミの神聖力に、新たに炎王龍の力が加わった。
「ソレデハ、ワレラハセカイノキンコウヲタモチマス。」
炎王龍は空高く舞い上がり、すぐに見えなくなってしまった。
「炎王龍は我らって言ったよね!?じゃあやっぱり、各国の象徴である幻獣王達は存在するって事!?」
アリスは目を輝かせた。
「ちょっと聞いてくれ、ナオミが炎の力を手に入れたなら、俺の精神力ってショボく見えるんじゃないか、ねぇ。」
2人は全く聞いてなかった。
「よし!じゃあ早く行こう!追いつくぞ!」
ナオミは一層元気になった。
都市マドリまであと少し。
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