32話 顔合わせ 2
ルーシッド・エデンに潜り、あまり遅くならない時間に切り上げジェルブ・ドールに帰ってくると、食堂は普段よりも賑やかだった。
ヴァン・フェール第一から第三の十五名に加えて、編集などを行う裏方スタッフまで揃っている。
まずは荷物を私の部屋に置きに行こうとしたのだが、ヒッポフォロスではない二人組が目に入った。
「二人組のパーティって、アコアさんと星蘭さんだったんですね」
「こんばんは、コハクっち」
「どもども、恋白様!」
「はい、こんばんは」
「アコア・マカニは知ってるけど、もう一人もコハクの知り合いか?」
「同じ明蝉国出身の晴星蘭さん、こっちの言い方だとセイラ・ハルさんですね」
「へぇー。メイゼン国出身なんて珍しいな」
「狐の獣人でしょうか?」
「そうだよ、ボクは狐人。こんな風に変化の能力を持っとる獣人だ」
星蘭さんが軽く指を動かすと、髪の色が明るい茶色から、白になったり赤になったりと変化する。
「おー、変わった種族能力だな」
「面白いだらー?明蝉国じゃ驚かれんから、でら新鮮だわ」
「コハクさんは見慣れているのですか?」
「狐人とは神事のときくらいしか関わりはなかったんで、見慣れてるってほどではないんですがね」
「恋白様は不語仙郷の出身だで、こんなことじゃ驚かんよ」
「榾火村は狸人の郷の中に位置しているんで、似た種族能力を持ってる狸人に慣れちゃってるんですよね」
「へぇ〜」
「そうなんですねぇ」
「ただの一発芸だで、戦闘じゃ何の役にも立たんだけどね」
「星蘭さんの能力は立派ですよ」
髪の色を変えながらも右の瞳の変化は維持しているし、一切の揺らぎも見られない。
上手く能力を制御している証だろう。
私が右目を見たことに気がついたのか、星蘭さんは声には出さずに驚きの表情を露わにしつつ、右目を緩く手で覆った。
触れられたくない部分なのかもしれない。あまり視線を向けないようにしよう。
「それじゃあ私たちは荷物を置いてきますね」
「いってらっしゃいッス」
周囲に悟られないよう、小さく頭を下げて謝罪し、私たちは部屋に戻る。
―――
フロランさんは立ち上がり、食堂を見回してから口を開く。
「さて、これで全員集まったかな?」
「ヴァン・フェール第二は全員いる」
「第三もだ」
「アローズ全員います」
「星蘭&アコアもいるよ」
「よろしい。ではクラン対抗エキシビションマッチにおけるスフル・デュ・クラージュ側の顔合わせと、計画と予定のあらましを話し合おう」
一同が緩い雰囲気で返事をすると、フロランさんは満足そうに話し始める。
「まずはエキシビションマッチの開催日時だが、今シーズンの終盤となる九月の十五日となった。ヴァン・フェールでの話で悪いが、遠い地にいるボス級の討伐は今期は難しいだろうから、エキシビションマッチに専念したいと思う。では各パーティとメンバーの紹介を行おう」
ヴァン・フェール第一から第三までの説明が行われる。
彼ら彼女らは、前衛二人、中衛一人、後衛二人という人数を固定したメンバーで構成されている。
各々、得物が違ったりはするものの、基本的には全パーティで同じ動きをするようで、基本戦術というものがあるらしい。
「では、助っ人パーティの方々だ。アローズは私たちもよく知っているが、一応のこと自己紹介を頼む」
「はいっ!私はアローズのリーダー、恋白です。役職は散開射手で、機動力を活かした囮や、近中距離での射撃を得意としています」
「ノクサラ……ノクサラ・シュタールだ。役割は至近距離での殴る蹴る、役職は忘れた」
「ガーディアン・ブロウラーですよっ」
「…恥ずいんだけど、それ」
「アザレアです。役職はプロキシ・キャスターで、アーケイン・プロキシを用いた、遠隔魔法でのサポートや攻撃を得意とします」
アローズの自己紹介を行うと、アコアさんが手を挙げる。
「コハクっちに、しつもーん」
「なんですか?」
「名前忘れたけどカエルとか、ユニークボスを倒す時、フィニッシャーはコハクっちッスよね。キツツキとかいうアーツの能力は、共有してもらえるんスか?」
「啄鎧矢には二つの効果があって、強い貫通性と、心臓に命中することで爆発的に威力が上がるんです。心臓特効っていうやつです」
「わぁ、規格外アーツッスね。使用に制限はあるんス?」
「足が全て接地していることです。スタミナの消耗が激しいので、二連続で使用すると完全に動けなくなります」
「どうもッス」
続いて、私のアノマリー『弱点特効』について説明をすると、驚きの声がちらほら聞こえる。
特異性質を有する人は少ないらしい。
「それじゃあ、星蘭&アコアの番だね。ボクは晴星蘭、役割としては敵を弱体化させて、杖で殴り倒す魔法使いだよ。アコアの付属品くらいに思ってほしい」
「ウチは三本の武器と、前足の爪で攻撃するアタッカーをやってるッス。至近距離から槍くらいまではウチの間合いなんで、よろしくお願いするッス」
星蘭さんの弱体化魔法についての質問が入った。
私たちが戦ったスケルトン・ヘクサーの呪術のような魔法で、自身を中心に展開したり、特定の地点に置くことで、敵対者を弱体化するとのこと。
「よし、これで各々の紹介は終わったな」
「リーダー、質問だ」
「なんだい?」
「エキシビションマッチの準備に専念するのはいいが、その分スコアを稼げないのだが、その辺りはどう考えている?」
質問をした方は、私たちの方へと軽く視線を向けて、私たちの稼ぎについての質問をしてくれているようだ。
「それに関しては練習に参加した者へ、一日ごとの手当てを用意する。ルーシッド・エデン公式の企画ということもあり、運営側が手当ての一部を受け持つという契約だ」
「いくらだ?」
「ルーシッド・エデン側からは一日一〇〇〇〇カルタ。そこに五〇〇〇カルタをクラージュの方から支給しよう」
「承知した」
結構な金額だ。生活する分には困らないかもしれない。
お金の話は終わったようなので、私も質問をしたい。
誤字脱字がありましたらご報告いただけると助かります。




