30話 決断 1
翌日。
巨木森林を改め、巨大樹林エリアを三人で進む私たちは、レッサー・アースドラゴンと会敵していた。
まずはアザレアさんがフローズンブルワークでレッサー・アースドラゴンをひっくり返し、私が心臓の辺りに矢を突き刺し、ノクサラさんが矢に追撃をする。
この一連の流れで確実かつ安定して倒せるようになり、私たちの足の進みは順調だ。
「三人で分割されても一五〇スコア、倒すのにも苦労しないし、美味い相手だな」
「レッサーとはいえドラゴン系を美味い扱いするのは、ちょっと気が引けますが、ノクサラの意見には同意です」
ドラゴンというのは脅威の象徴なのだろうか。
「お二人の知っているアースドラゴンといいますか、実際のアースドラゴンってどんなモンスターなんですか?」
「大きさが二倍から三倍くらいで、生半可な攻撃は効かない」
「ブレスが直線状ではなく、扇状に広がるようになっていたり、攻撃面でも脅威ですね」
「そういうことだったんですね」
それなら私が倒したと伝えた時に疑問を覚えるのも当然だろう。
私でも疑問に思うかもしれない。
「そういうことだ」
「しかしレッサー・アースドラゴンは、そこまでの強敵ではありませんね。あまり他の冒険者が多くありませんが、いずれはわたしたち以外の冒険者が見られるようになるかもしれません」
「競争となったら、レッサー・アースドラゴンの数的に微妙になっちゃいますかね?」
「かもしれませんねぇ。一日に…一〇体は倒したいところです」
「装備や魔導具の買い替えなんかを考えると、もうちっと倒さないといけないがな」
「それもそうですね。…ヒートヘイズでのスコアは大きな稼ぎでしたが、一時的なものにすぎませんから」
「ですねっ。そうだ、リュームガイドはどうします?」
リュームガイドというのは、アコアさんが使っていた、対になっている魔導具を指し示すことができる魔導具だ。
「コハクに一人で動いてもらう機会が多くなるなら、用意しときたいが…まあ他の冒険者が見られるようになるまでは、アタシたちで足並みを揃えて稼ぎに勤しもう。そのついでに、隣接エリアを確認できたらラッキーくらいで」
「わかりましたっ。それじゃあ…たくさん稼げるように、レッサー・アースドラゴンを探してきますねっ!行ってきまーす!」
「えっ」
「はっ、おい!?」
私は全速力で駆け出して、多くのレッサー・アースドラゴンを倒せるよう、誘導をしたり、場所を記憶したりと奔走する。
―――
それから五日ほどして、疎らだった冒険者の数は次第に多く見られるようになってきて、私たちは稼ぎの効率が悪くなってきたと感じ始めていた。
「んじゃ、この数日で周辺の情報も集まったし、アタシらは移動するか」
「おぉ、いいですねっ」
私はアーケイン・パネルを取り出して、隣接エリアの情報を確認する。
第四円に向がう進行方向から見て右手側は、私の胸ほどの高さの草が生い茂った草原のエリアだ。
「―――と言った感じで、敵を見つけやすかったんですけど、よく見るとところどころ地形が抜けてて、天空大陸から落下する罠みたいになってるんです」
「結構…厄介な地形ですね。背の高い草と唐突な穴は、コハクさんとの相性が良くなさそうに思えます」
「アタシらとも、相性は良くないか」
「そうですね」
「じゃあ、優先度は低めということで」
「ああ」
左手側は浮島の点在するエリアだ。
大小さまざまな浮島が無造作に浮かんでいる場所で、移動するにも一苦労だと考えられる。
「パス」
「無理ですね」
「わかりました」
ちなみに、羽が無数に生えたムカデのようなモンスターが飛んでいた。
巨大樹林エリアは、二つの第四円エリアと繋がっているので、右手側から。
「ここは苔生した森林といった印象でした。この巨大樹林エリアも、地面や木の根っこには苔が生えてますけど、桁違いの量といいますか、足元すべてが緑の苔で覆われているんです」
「ちと足場が悪いのな」
「ですね。加えて大きめの岩…と思われる苔の塊と、倒木なんだろうなっていう形の苔の塊も多く見られて、足場周りは悪いんじゃないかと思います」
「穴が空いていたりはしないのですか?」
「パッと見ですけど、穴は見られませんでした」
苔は水を多く吸っているだろうから、滑る可能性も大いにある。行くのなら気をつけたい場所だ。
「最後の場合は?」
「シラカバのような、白い幹の木々が立ち並ぶ、これといった特徴のないエリアでしたね。木々の高さは、ここほどではありませんが、苔のエリアよりも背が高い印象です」
「移動しやすさ、モンスターの狩りやすさは、シラカバの森になるのか」
「ですね」
「ただ…白い木か」
ノクサラさんは何か思い当たる節があるのか、少しばかり考え込んでいる。
「記憶が正しけりゃ、猛毒の粉をまき散らす面倒くさいモンスターがシラカバの森にいた気がするんだよな。でけえキノコみたいなやつで」
「アマニトールですか。…毒胞子となると、火属性の魔法必須になりますが、今はないんですよね」
「そうそれ。気づけなかったら、それだけで終わりの厄介なヤツだ。いないならそれに越したことはないが、いたなら避けるべきだ」
「そうなると苔のエリアか、穴あき草原エリアですけど、苔のエリアに向かってみましょうか」
「だな」
朝一番、私たちは苔のエリアを目指して出発した。
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