29話 天空大陸 5
「私はこのエリアの出入り口小屋を探してるんですけど、アコアさんも同じですか?」
「そうッスね。ウチのパーティメンバーのために…って、コハクっちのお仲間も、後ろで置いてきぼりッス?」
「はい。私が先行して、出入り口小屋までの道順を探ってるところなんです。アコアさんもですか?」
「そうなんスよ。ウチ、最近パーティを組み始めたんスけど、足はウチのが速いから狩場を見つける担当って感じッス」
足並みが合わないということは、私たちと同じ二足種族との混合なのだろう。
「アコアさんはフリー冒険者だって聞いていたんで、ちょっと意外です」
「ウチも意外ッスよ。ただ、あっちから熱烈に誘われて、そこまでいうならって感じで組んだんス」
「おぉー」
「このナギナタってのも、いい感じのを目利きしてもらって、今はお気に入りなんスよ」
「やっぱ薙刀だったんですね」
「メーゼン国の業物とかなんとかで、名前はウンリューっていうんス。いい買い物をしたッスよ」
ウンリュー。
雲と竜の飾りがあって、明蝉国のものだとするなら、銘は『雲竜』だろうか。
刃物武器の目利きは私にはできないが、アースドラゴンを一撃で倒したことを考えると、業物なのだろう。
「手に馴染む得物があるのはいいことですからね。この弓は、私にとって最高の相棒ですよ」
「おぉー」
しばしの雑談で一息つき、私たちは出入り口小屋を探すために動き出すことにした。
「ウチが右側ッス。コハクっちは左を頼むッス」
「はいっ、わかりました」
私たちは左右別々に視線を向けながら、巨木森林を突き進んでいく。
―――
走り始めて二時間ほど。
アースドラゴンは、私たちの足には追いつけないようなので、戦闘を回避しながら進んでいき、出入り口小屋を見つけることができた。
直進だけでは見つからず、あちらこちらに彷徨う結果になったが、アーケイン・パネルに細かな記録をしていたこともあり、迷うことはないだろう。
「それじゃ、コハクっちが踏破ボーナスもらっていいッスよ。お祈りをさせてもらったんで」
「お言葉に甘えさせてもらいますね」
変に断っても、アコアさんに悪いだろう。
「出入り口小屋を出たら、アコアさんはパーティメンバーさんを迎えに行く感じですか?」
「そうッスね。まあ昼時は過ぎてるんで昼食は挟むんスけど、その後は合流するために一直線ッス」
アコアさんは服に着けていた装飾品を一つ手に取り、それを軽く揺らすと淡い光が一方を指す。
どうやら相手の位置が分かる魔導具のようだ。
便利そうだし、アローズでも使えないかノクサラさんとアザレアさんに相談してみようかな。
「なら、今日はありがとうございました。助けてもらったってこともありますけど、一緒に探索したおかげで小屋を見つけられました」
「うへへへ、こちらこそッス。アースドラゴンの倒し方も学べたし、祈りでスッキリできたッス。またどっかで協力できたら、ウチは嬉しいッスよ」
私たちは握手を交わしてから、ゲートに戻っていく。
―――
私たちが乳白色の泉を出ると、少し離れた場所にノクサラさんとアザレアさんが待っており、私を見つけて手を振っている。
「遅かったじゃん、どこをほっつき歩いてるんだ?」
「アコアさんと、巨木の森の出入り口小屋を探してました」
「アコア・マカニと?」
「どもッス」
「どうも。うちのコハクが世話になったな」
「むしろコハクっちにお世話になりまくりッスよ」
「そっか」
ノクサラさんは興味がなさそうな表情を露わにしていた。
「まあいいや、一緒に食事でもするか?」
「…えーっと、ウチのパーティメンバーはいなさそうだし、お邪魔じゃないなら一緒に食べたいッス」
「それじゃあ行きましょうか」
「はいっ」
一歩先に歩き出したアザレアさんに、私たちはついて行き、四人で食事をする。
―――
「そういえばアースドラゴンを倒したんですよ、アースドラゴンっ!『銀眼』…えっと、昔見た映像で戦ってるのを観まして、同じモンスターを倒せたんです、すごくないですか?」
「アースドラゴンを、コハクとアコア・マカニとでか?」
「ふふん。アコアさんとも倒しましたが、その前にも一体、私一人で倒したんですよ」
「倒したッス」
「コハクさん一人でとなると…キツツキを使ったのですか?」
「目に向かって矢を十八発射ち込んで勝ちました。啄鎧矢は使ってませんよ」
「アースドラゴン、アースドラゴンねぇ…。コハクが知ってるってなると、数十年前のだろうし」
「あー…もしかして」
ノクサラさんとアザレアさんは顔を見合わせて、少しばかりバツの悪そうな表情を浮かべる。
「冒険者証明書のさ、討伐記録見せてくんね?もしかしたら、アタシとアザレアが思い浮かべてるヤツとは別のモンスターかもしれねえんだ」
「そうなんですか?」
私が冒険者証明書を取り出して、討伐記録を確認してみると、そこにはレッサー・アースドラゴンと記されていた。
「レッサー・アースドラゴン…」
「やっぱりか。昔の映像に出てきたモンスターが、今と分類が違うことがたまにあるんだ。まあ、それでもレッサー・アースドラゴンなら十分だろ」
「ドラゴン系は誇っていい相手ですよ。…第三円にドラゴンが出るんですね」
「ちと珍しいか。安定して倒せるならスコア的に美味いから、アタシとしちゃ大歓迎だがな、くくくっ」
「あっでも、映像で観たアースドラゴンとは一緒でいいんですかね?」
「大まかになら同じでいいと思うぞ」
「えへへ、それならよかったです」
憧れた『銀眼』のシュタールと、その映像に映っていたモンスターを倒せたのは、私にとって大きな一歩だ。
ノクサラさんの前では言えないけど、いつかは『銀眼』のシュタール本人とも会ってみたいな。
「そんじゃ食事も終わったし、アタシらは合流するためにルーシッド・エデンに戻るわ」
「そうですね。巨木の森の出入り口小屋を目指すなら、早く出た方がいいですし、そろそろ行きますかっ」
「ですねぇ」
「ウチも行くッス」
ノクサラさんとアザレアさんがルーシッド・エデンに向かい、アコアさんに挨拶をしてから私も泉に入ると、長身の狐人とすれ違い、アコアさんの声が聞こえる。
「セーラっち、今来たんスか?」
「もう戻っとったん?」
「協力してくれる人がいたんスよ」
「へぇ〜、ボクの方は岩ばっかででらえらかったわ」
あの人がパーティメンバーなのだろう。
…そういえば狐人といえば、福兎鈴商会に顔を出しておきたい。ヒートヘイズで大きなお金が入ったし、色々と商品を見てみたい。
そんなことを考えながら乳白色の泉に入っていった私は、お二人との合流を急いだ。
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